白から始まる 「ウエディングドレス、着たかったな〜」 「それは、無理ってもんだな〜」 「俺でもそれは縫えませんねぇ・・・・・・」 梶原邸の庭。本日は一名増員、将臣である。 階にと朔が座り、庭に有川兄弟。 朔の膝に白龍といった五名。 「その・・・うえ・・・って何ですの?」 朔が三人へ疑問を口にした。 「花嫁さんが着るんだよ〜。白くてふわふわで。憧れてたんだぁ〜」 がうっとりと空想の世界へ飛び立った。 「俺たちの世界では、白という色にまっさらな状態から始める意味も あって。なんとなく全て白いものを使って婚儀を挙げるんですよ」 「でもさ〜、あれだってもともと外国のもんでさぁ・・・・・・」 将臣が譲に足を踏まれた。 ここでの機嫌を損ねるわけにはいかない。 まだのマシンガントークを聞いていない将臣に、悪気はない。 しかし、迷惑を被るのは譲か朔。ここはしっかり牽制しておく。 「・・・んっだよ。痛〜っ」 将臣が足を押さえて黙る。 「でも・・・なんとか用意してあげたいわね。せっかくの婚儀なんだもの」 景時のプロポーズにより、さっさと話がまとまった。 どうせなら京へ着いたらすぐという事になり、来週には婚儀だ。 「それはそうなんですけど。そもそも布がないんですよ。糸はあっても、 織り方・・・技法が違いますしね・・・・・・こちらでは、何か特別な着物を 着たりしないのですか?」 朔の発言を聞いていると、特に用意はないのか?と、知りたくなった。 「都の貴族の方々は、お衣装を調えたりするのでしょうけど。武家では 一族への披露だけで、何もないわね。調度品の用意くらいかしら」 朔も一族の者の婚儀の記憶を頼りに考えた。 「それじゃあ先輩、ガッカリかもですね・・・・・・・・・・・・」 譲と朔が、何となくに視線を向ける。 何か思いついたらしいの口が開く。 「ね〜ね〜。景時さんって、背が高くて格好いいから、タキシード似合い そうだよね〜。髪型も問題ナシ!きゃ〜〜vどうしよぉ、格好いい!」 自分の想像に喜び、飛び跳ねる。 「まあ、似合いそうだよな。よかったな、江戸時代とかだったら丁髷だぜ? かなり気持ち悪いよな〜、タキシードに丁髷は」 将臣が茶化す。 「何て事いうのよっ!景時さんは、ものすっごく格好いいんだから!」 譲と朔がしまったと思った時にはもう遅かった。 は立ち上がり、腰に手をあて、しゃべりまくる態勢になっていた。 朔は、膝の上の白龍を抱えなおした。 「将臣くんは!景時さんの事どう思ってるの?だいたい呼び捨てなんて。 景時さんは優しいから何も言わないけど。態度大きすぎだと思う。それに、 景時さんの格好良さがわかんないなんて!」 「い、いや!言ってない!断じて格好悪いなんて言ってないから!」 将臣は、『丁髷』じゃなくてよかったなという意味で言ったのだ。 格好悪いとも、変だとも言ってはいない。 両手を前に突き出し、止めの姿勢をするものの、がじりじりと階を下り て近づき、勢いは増すばかり。 「この際だからはっきり言うけど。景時さんは、みんなの事を思って言い難い 事を先に言ってくれたり。どうしようかな〜と思ってると、先にどっちがいいと か聞いてくれたり。花火の時だって、遠回りになっちゃって、皆が疲れてるか なって。そういう優しい気遣いが出来る人なんだよ!逸れた私が悪いのに、 助けに来てくれて。おまけにね、先に謝ってくれちゃう人なの。一人にして ごめんねって。もうね、ぎゅ〜ってしたいくらいいい人なの。髪がぴょんって 跳ねてるのも可愛いし。大きな手で、頭をぽんってしてくれると安心するし。 手を繋ぐとドキドキで嬉しいの。毎日飛びつきたいくらい格好いいんだから!」 にビシッと指さされ、将臣はただ突っ立っていた。 しばしの間の後、ゆっくりと庭の入口の方を指差す将臣。 その行動につられ、全員が入口の方向に注目する。 「か、景時さん!」 口に両手をあてる。 「あ。そのぅ〜、声・・・かけはぐっちゃって・・・さ」 頭に手をやり、照れくさそうな顔になる。 「きゃーーーーーっ!」 が朔の背に隠れる。 「兄上、いつお帰りに?」 「ん〜っとね、今なんだけど。声は向こうにも聞こえていたかな〜なんて・・・」 頬を指で掻きながら、思案顔の景時。 「や、やだっ。居るなら居るって言ってくださいっ!」 朔の背でが叫んだ。 「ごめんね〜。でもさ、あんまり嬉しいから出難くなっちゃったんだよね〜」 階の手前まで来て、手を伸ばす。 「オレって、いつも自分に自信がないんだけどさ。ちゃんに言われると、 何でも出来そうな気がしちゃうっていうかさ〜。隠れてないで、おいで?」 朔の背から姿を現す。 立ち上がると、階の下段まで下りて来た。 「捕まえた。たぶん、君が思うようなどれす?は用意出来ないけどさ。重ねを 用意するから。桜重ねがいいかなと、勝手に思っていたんだけど。白がいい なら氷重ねにしようか?」 を抱きしめ、問いかける。 「・・・ごめんなさい。着る物は問題じゃないの・・・・・・」 「でもさ、言っていいんだよ?オレ、君の世界の事わからないから。同じは無理 でも、近い事なら出来るかもしれないよ?」 が景時を見上げる。 (うわっ!その目はまずい、まずいんだよ〜) さらに、急に今の状態も気になり始める。 (オレ、ものすごく大胆な事してない?) ここで根性を使わずして、いつ使う!といわんばかりに、景時必死に耐える。 「あれだ。まあ・・・後は二人でやってくれ」 将臣が庭から帰る後に譲も続いた。 「指輪でも用意すっか。ヒノエがじゃらじゃらつけてるから。聞けばわかるだろう? 作ってくれるところ」 「あ!それいいかも・・・・・・」 譲の額を指で弾く。 「ば〜か!お前はケーキだ。あの二人で切るのあるだろ、さくっと」 「兄さん、さくっとって・・・・・・もう少し言い様がないかな・・・・・・」 苦笑いしつつも、将臣が一生懸命でおかしい譲。 「あ〜、朔殿に悪いことしたな〜。白龍は・・・わかってないか!」 「朔殿なら・・・大丈夫でしょう」 有川兄弟、またもや大活躍の兆し。 「景時さん、あのね・・・・・・」 「ん?」 「ここに残るって決めたの私です。だから・・・そんなに私に合わせようとしなくても いいんですよ?」 景時が笑い出した。 「合わせてるんじゃないよ?ちゃんがしたいようにって話。どちらかといえば、 オレが知りたいって感じ?」 片目を瞑る景時。が真っ赤になった。 「あ、あの。そんな・・・・・・でも・・・景時さんが笑われたら困るもん・・・・・・」 「あ〜、そういう心配はいらないよ?ね、朔」 動くに動けないでいた朔が顔を上げる。 「兄上が何をしても・・・誰も驚かないと思いますわ。今までが今までですし」 それどころか、龍神の神子を嫁にすると梶原一族の者が知れば、褒められこそ すれ、笑われるはずがない。 「・・・・・・ひとつだけ。景時さんとおそろいの物が何か欲しいな〜なんて・・・・・・」 「う〜ん。おそろいね〜、おそろい・・・・・・あ!耳飾にしようか」 耳飾を外すと、の耳にあわせてみる。 「オレのじゃちょっと大きいね〜、落ちちゃうか。同じの作ろうね」 「着物も景時さんが選んでくれたのがいいです」 「じゃ、両方にしよ〜。オレ両方見たいし〜。でも、みんなに見せるのもったいない な〜。そうだ!一族でのお披露目は桜重ねで。九郎たちとの時は、氷重ねにして。 うんうん!とっとと邪魔なお年寄りたちには帰ってもらおうね〜」 一人で頷く景時。 「兄上・・・お年寄りって・・・・・・」 朔が窘める。 「だってさ〜、別に来てくれなくてもいいんだよね。話長そうだし」 を離すと、靴を脱ぐ景時。 「朔。靴お願いするね〜。ちゃんと式の話をしないといけないから。ついでに 商人が来たら俺の部屋へ通して。着物が届くんだ。朔も見においで」 の手をとり、簀子を歩き出す。 「景時さん?」 「ん〜?そういう顔はしないの。もともと着物をいくつか持ってきてって頼んであった から。丁度いいね〜」 鼻歌を歌いながら歩く景時に手を引かれて歩く。 朔と白龍が目を合わせる。 「兄上ったら、ご機嫌ね。白龍、私たちも“白い物”考えましょうか!」 「うん!神子、白い花好きだよ」 庭を見渡す。譲が植えた花がいい具合にある。 「そうね。お花と・・・・・・何か新しい物を買いに行きましょう」 戦いも終わり、神子はこの世界の住人になる─── |
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あとがき:どうしたってくらい景時くんがさり気ない?!有川兄弟、実に便利モノでございます♪ (2005.3.18サイト掲載)