家族





 現代っ子の
 慣れてしまえば案外積極的である。
 景時に憧れていた頃のきゃーきゃーvとは違い。
 恋人同士になれば、また違ったきゃーきゃーvとなる。
 
 どうやら今日は、朔の部屋で着物を選んでいる二人。
「でね、私からキスしちゃったの〜〜〜」
 の惚気話を聞かされる朔。
 二人の仲が良いことは嬉しい。しかし!
(兄上は、ボケっとなさって何も行動していなかったの?!)
 朔の怒りは、ふつふつと静かに燃え上がっていた。

 

 夕方、景時の帰宅と同時に朔は自室へ景時を呼びつけた。
「兄上!私たちが外出した時、と何も約束なさらなかったの?」
 床を叩く右手に朔の怒りが込められており。
 その音にびくりと震える景時。
「や、約束って・・・何もしてないけど・・・・・・」
「兄上!をこの家に迎える気があるんですの?」
 またもや音に震える景時。
「そんな〜、ちゃん自分の世界に帰りたいかもだしさ〜」
 項垂れる景時。
「・・・・・・帰らないでって言えばいい事じゃないですか」
 溜息を吐く朔。
「だって、ちゃんの家族と引き離す事になるんだよ・・・・・・」
 急に真剣な顔になる景時。
「まだ、両親と離れるには早い年頃じゃないか・・・・・・」
 久しぶりにみる景時の真剣な様子に、朔も返事が出来なかった。
「さて!この話はオシマイ。お腹空いたしね〜」
 景時は、さっさと部屋を出て行った。
「兄上・・・・・・」
 それでも、朔は諦められないでいた。





 景時は、の自由にさせてやりたいと考えていた。
 まさか自分があんな発言をするほど、を求めていたとは───

「一緒に逃げてくれ」
 今となっては笑い話だ。
 全てが終った今、はどうするつもりなんだろう?
 白龍の逆鱗を手に、朝夷奈へ向う。

 まだ君にほんとうの気持ちを伝えていない。
 偽りの上にある、偽物の幸せは要らない。
「家族になってくれって・・・・・・遠まわしすぎかな」
 に伝える言葉を考えながら先を急いだ。



「景時!」
「あはは〜、遅くなっちゃってごめんね〜」
 景時が九郎の前へ歩み寄る。
「頼朝様から、西国は九郎に任せるとの事。ちゃんと伝えたからね〜?」
 九郎の肩を叩く。
「兄上が・・・・・・」
「そ〜。ついでにオレを補佐に付けてくれるって。楽させてね?」
「ば、馬鹿者!しっかり働け。行くぞ!」
 真っ赤に照れた九郎がさっさと歩き出す。

ちゃん、ただいま」
 逆鱗を手渡す。
「お帰りなさい」
 逆鱗を受け取ると、景時と手を繋いで歩く。
「あのさ・・・・・・皆で京で暮らしたいなって思うんだ」
 が景時を見上げた。
「それでね、ちゃんとまた一緒に暮らしたいな〜って・・・・・・」
 景時の足が止まった。つられても立ち止まる。
「・・・・・・だけ?」
 首を傾げる
「その・・・・・・・・・・・・」
 景時の視線が泳ぐ。
「景時さん。私、京を目指して歩いてるんですよ〜?」
「あ!そ、そうだよね。うん、そうなんだけど・・・・・・」
 景時がに向き合った。
「オレの家族になって下さい!」
「えっ!・・・・・・」
 の顔が徐々に曇っていき、項垂れた。
「ええっ!?駄目?駄目なの〜〜〜」
 目を見開き、手を振り回す景時。
 密かに様子を見守っていた仲間が項垂れた。
「あの・・・・・・家族って・・・・・・」
 俯いたまま、が呟いた。
 『結婚』を申し込まれるシチュエーションに、夢を持っているお年頃。
 景時の言いたい事はわかるが、なんとなく素直に頷けない。

「景時〜、それじゃはOKしないぞ〜」
 将臣が大笑い。
「そうですね、少々言い方に問題があるようですね?」
「あれで姫君を口説こうなんて甘すぎだぜ」
「家族というのは、少々漠然としすぎですね」
「はっきりビシッと!じれったいのよ、兄上は!」
 それぞれ言いたい放題だ。

 景時は、うるうるの目になりながらの手をとる。
ちゃん・・・・・・オレのお嫁さんになって下さいっ!」
 頭を下げて頼み込む。
「はいっ!」
 が景時に抱きついた。
「や、やった・・・・・・」
 を抱きしめる景時。

「お〜〜〜」
 周囲から安堵の声が漏れた。

 

 ドサッ───
「やだ、景時さん?!」
 緊張が緩んだ景時が倒れた。
「オレ・・・・・・幸せすぎて、もう駄目・・・・・・・・・・・・」

 あまりの景時の格好悪さに、一同目に手をあてた。
(今度ばかりは、庇いきれない・・・・・・)
 ついにに情けない景時を見せてしまったのだ。
 今までの苦労は水の泡?!全員が息を飲む。

「景時さん、ひとりで頑張ったんですもんねv」
 そろりと景時の頭を膝に乗せる
「あの、景時さん疲れてるから。後で追いつくから、先に行っても
いいよ?」

「は?!」
(すごいわ、!こんな兄上を見ても平気だなんて!)
(うわ〜、台無しかと思ったら。さすが天然系の景時さんですね)
(・・・・・・こんなのでいいのか?どうして俺がもてないかな〜)
 またもや各自勝手な事を考えている。
「そ、そうだな。ゆっくり先に行ってるから」
 九郎だけが気を利かせて、先に行こうと促した。



 この後、目覚めた景時が鼻血を出す事は、誰も予想出来なかった。
 しかし、鼻血が出るほど可愛いと思われている事にご満悦の
「景時さんも、いつもぐりぐりぃ〜ってしたいくらい可愛いんですよ?」
 またものうるうるきらきら上目使い攻撃がクリーンヒット!
 景時、京に着くまで血が足りるのであろうか?!
「景時さん、あのね。ちょっと嫌かもしれないけど・・・・・・」
 鼻に詰め物をされた景時。の指で!!!
(駄目だ・・・・・・オレ、京にたどり着けないかも・・・・・・・・・・・・)
 頭がくらくらするが、に手を引かれるのが嬉しい。
 仲間に追いつくべく、歩き始める二人。

 

 ずっと二人で手を繋いで歩いて行こうね───






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≪遙かなるお題配布所≫からお題拝借。お題元はコチラからどうぞ。

 あとがき:鼻血なんてバレてもOKだったと(笑)じゃあ、始めから問題なかったんじゃ・・・・・・     (2005.3.16サイト掲載)




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