激しいツッコミ 「兄上っ!どうして、そういつも、いつも・・・・・・」 「ご、ごめんっ!朔!!!」 今日も朔に叱られている景時。 「なんつ〜か。あの人って癒し系だよな・・・・・・」 「兄さん。兄さんより年上なんですから、もう少し敬意を・・・・・・」 「お前だって、あの人にツッコミしてんじゃん」 「そ、それは・・・・・・」 こちらは兄弟仲良く(?)庭で寛いでいる、有川兄と弟。 「つ〜かさ、俺が今日来たのは、その後の進展を・・・・・・」 「兄さん。八葉の務めよりそっち?!」 「あ゛〜、なんだ。その、気になってなあ。何も手につかないわけよ!」 溜息とともに項垂れる譲。 「お前だって、気になるんだろ〜?」 譲の頭をぐりぐりしながら、ニヤニヤと顔を覗き込む将臣。 「な、だ、だって。それなりには心配ですけど・・・・・・」 譲も気になってはいたらしい。 「な?だ〜か〜ら!相談にのってあげないといけないわけよ!」 将臣は、さも当然といった風に、立てた人差し指を左右に振った。 「ほら!行くぞ!」 譲の手首を掴み、景時の部屋の前へ移動すべく歩き出した。 「よっ!景時、今日も朔殿に叱られてたな」 「み、見てたの〜」 階から将臣が声をかけると、景時が簀子に腰を下ろした。 「まあな。それに、そろそろ相談事とかあるんじゃないかと思ってな。 遊びに来たんだ。で?その後、とはドコまでいったんだ?」 「えっ?もう知ってるの?昨日はね、二人で市へ行ってさ〜」 「・・・・・・アンタ、天然にも程があるぜ?行き先聞くわけないだろうが!」 将臣が景時の肩を掴んで揺する。 「え?どこって、違うの?え〜〜?」 景時が、譲に助けを求める視線を送る。 「兄さん、景時さん本気でわかってないですから」 譲に窘められ、景時から手を離す将臣。 「景時さん、この場合兄が聞きたかったのは、先輩との関係の進 展具合であって、お二人で出かけた行き先ではありません」 冷静に譲が解説をすると、隣で将臣が腕を組んで頷いている。 「な・・・進展って・・・そんな・・・オレは別に・・・・・・」 もじもじしだす景時。 「もうキスぐらい済んだよな〜、まあそれくらいはな!」 将臣が、景時の肩を叩く。 「きす〜?」 「兄さん!景時さんにわかる言葉で説明しないと!」 「あ、悪い。あ〜、キスは、あれだ。口づけの事だ。接吻だな!」 景時の顔が真っ赤になる。 将臣が、ここぞとばかりに顔を覗き込んで質問する。 「いつ?どこで?ちくしょー、見たかったぜ。今まで見守ってきたんだか らな〜。それくらい教えてくれてもいいよなあ?」 「に、兄さん。そこまで根掘り葉掘り聞かなくても・・・・・・」 あまりに露骨な将臣の質問に、譲も首まで赤くなる。 「・・・・・・そんなの、出来ないよ」 景時がぽつりと漏らした。 「はあ?!」 有川兄弟の声がそろう。 「ちゃん、きらきらしてて。オレだってしたいけど、なんかもうわかん なくなっちゃうんだ・・・・・・」 しょげる景時。 「ま、待て!まさかとは思うが・・・・・・まだ?何もしてない?」 将臣に聞かれ、こくりと頷く景時。 「だーっ。あんたいくつだよ?経験ないわけじゃないよな?いいかげん、 だって待ってるだろうに」 「えっ?そうなの?オレって変?飽きられちゃったかな」 涙目になって将臣に縋る景時。 (この人、無駄に可愛すぎ。───) 有川兄弟、目を見合わせて同じ事を考えていた。 「景時はが好きなんだよな?」 うるうるの瞳で頷く景時。 「それで、どうしてわかんなくなるんだよ・・・・・・」 捨て犬を拾ったような気持ちになる将臣。 「だって、ちゃん可愛くて。オレ、顔も見られないんだ・・・・・・」 将臣と譲はお互いを見た。 (待て!顔も見られないって・・・・・・あっ!) 二人は思い出した。 景時がに告白した時、顔を見て言っていない事に。 (中学生の恋愛よりヒドイな、こりゃ・・・・・・) 溜息を吐く将臣。 (こんなに純真な人だなんて!でも、少々奥手すぎですね) 将来、弁慶の後継者になりそうな分析を始める譲。 しかし、面白すぎる。 (ほんとツッコミし甲斐がある人だよな、この人───) ツッコミし甲斐もあるが、放っておけない人でもある。 「でこチューだな。ミッション!でこチュー作戦だ」 パンッと将臣と譲が手を合わせた。 「でこちゅう?みっしょん?」 首を傾げる景時に構わず、二人がぼそぼそと話をしている。 「ね〜、何の話?オレも入れてよ〜」 裸足で下りるわけにもいかず、階の一番下段で二人の様子を窺う。 「ホントはあんたが出来れば話が早いんだけどな」 将臣がさっさと庭から帰っていった。 「さて。僕も今日のおやつを考えないといけないし」 譲も行ってしまいそうだ。 「ゆ、譲く〜ん!待ってよ」 「食べたいおやつありますか?」 「いや、譲くんが作るものは何でもおいしいよ?」 「それはよかったです」 それきり振り返りもせずに行ってしまった。 「オレって、ほんと情けない・・・・・・」 肩を落として自室へ入った。 「!出て来いよ」 庭から呼ぶ将臣。 「将臣くん?どうしたの〜、上がれば?」 部屋から出てくる。今日は可愛らしく着物を着ていた。 「いや。一応女性の部屋だからな。遠慮しとく」 「うわ〜、どうしちゃったの?将臣くんらしくな〜い」 が笑い出した。 (ったく!景時の気持ち考えたら、出来るかっつーの!) 意外と親友思いの将臣であった。 「お前さ、景時死にそうなんだけど。気づいてる?」 が足音を立てて階を下りてくる。 「ちょ、ちょっと!それどういう事?!」 将臣の腕を掴み、睨みつける。 「いや〜、早めに薬を処方しないと死ぬかなって・・・・・・」 「薬あるの?!どこっ!どこなのよ〜」 が将臣の胸を叩く。 「だから、取りに来たんだろうが。まったく、世話が焼けるよ」 を片手抱きし、階へ立たせる。 「その足じゃあな。ちょっと待ってろ」 将臣が庭をのんびり歩いて行く。 「なんでそんなにのん気なのよぅ〜!」 気が気でない。 (景時さん、病気なの?昨日は元気だったよ?) すぐに朔が簀子を歩いてきた。 「あらあら。兄上じゃないんだから、その足で簀子を歩かないでね」 朔がの足を桶につけさせ、手拭で拭う。 「朔、景時さんがね!」 「わかってるから。落ち着いて」 今度は反対の足をきれいにする朔。 「朔ぅ〜、そんなのん気にしている場合じゃなくって!」 が地団駄を踏む。 「はいはい、もうすぐ届くから」 「え?薬あるの?」 が朔を見つめる。 「そうね〜、あるのよね我が家には」 朔が微笑むと、は胸を撫で下ろした。 「なんだぁ。将臣くんたら。わざと意地悪く言うんだもん。心配したぁ〜」 「あるには、あるんだけどね・・・・・・」 「え?」 朔の視線を追うと、譲が盆を持ってやって来た。 「はい、先輩。今日はスイートポテトですよ。お茶は番茶ですけどね。 流石に紅茶までは作れないですからね〜」 に盆を手渡す。何故か二人分のおやつの用意。 その後ろからは、将臣が大きな盆を持ち、白龍を連れて来た。 「いつもの庭の方に居るからな〜」 に何も言わずに行ってしまった。 「俺も行くよ、兄さん」 譲もさっさと行ってしまう。 「これ・・・・・・薬じゃないよ?」 が朔の顔を見る。 「おまじないを兄上にしてあげて欲しいんだけど。あのね・・・・・・」 あがるのが治るおまじないを。がしてあげて。それは─── 「ええっ?!そんなの無理〜!効かないよ〜」 「だって、将臣殿が、これが一番効くって。すぐに緊張してしまって。ほ んとうに可哀相すぎるのよね。本人も落ち込んでいるみたいだし」 ちらりとの様子を窺う朔。 「そ、そんな・・・・・・!無理だよぅ・・・・・・」 「兄上、明日仕事で失敗しないといいんだけど・・・・・・」 わざとらしく溜息を吐く。 「えっ?明日何かあるの?」 「何も言わないけどね。今日はかなり沈んでるわね。が無理なら 仕方ないわね。皆でおやつ食べましょうか」 朔が立ち上がると、がお盆のおやつを見つめている。 「・・・お茶、冷めちゃうもんね。私、行って来る」 お茶を零さないようにそろり、そろりと景時の部屋へ向かう。 「将臣殿も、面白い事考えつくわね」 朔もおやつを食べるべく、将臣たちが待つ庭の方へ向かった。 「景時さん?おやつにしませんか?」 戸口で声をかける。足音が聞こえ、景時が顔を出す。 「あれ?ちゃん・・・・・・」 の手には、お盆があった。 「どうしたの?皆居ないの?」 お盆を受け取り、簀子へ置くと階の一番上の段へ腰掛ける景時。 「居るんですけど・・・・・・おやつとおまじないがセットなの!」 「せっと?」 振り向くと、が座っていた。 「わっ!どうしたの?」 景時の顔が真っ赤になった。 「おまじないをしますからね。目を閉じで下さい!」 「おまじない?何の?」 「おまじないが先!目、閉じて下さい!」 に強く言われ、わからないまま目を閉じる。 額に柔らかい物が触れた─── (え?今のって・・・・・・) 景時が目を開いた時には、が階に腰を下ろしていた。 「あの!緊張しなくなるおまじないです。効き目ありました?」 真っ赤になったが景時を見つめる。 (やられた!あの二人だ・・・・・・) 額に手をあて、景時が笑い出した。 「景時さん?」 「すっごい効き目!」 「よかった〜、じゃあ二人でおやつ食べましょう」 がおやつに手を伸ばそうとすると、その手を景時に取られた。 「効き目、試したいんだけどいいかな?」 「え?」 が顔を上げると、景時に口づけられていた。 「ん、効き目あったみたい」 顔を赤くした景時が、に笑いかける。 「えへへ。よかったです・・・・・・」 がうるうるの瞳で景時を見つめる。 (だ、大丈夫!おまじないしてもらったんだから・・・・・・) 今日は鼻が痛くならない。の顔も見られる。 (か、可愛いよ、ちゃん!もう、止まんない) 景時の手が、おやつのお盆を除ける。 「もう一度いいかな?」 を抱き寄せ、再び口づけた。 二人がおやつを食べる頃には、お茶はすっかり冷めていた。 「世話が焼けるよな〜、っとに」 口をむぐむぐさせる将臣。 「兄さん!食べてる時は話さないで下さい。零れてます」 譲が叱る。 「でも、あのおまじないで兄上の鼻血が止まれば、掃除が楽だわ」 「まあ、それはそうですけどね」 譲がお茶を注ぐ。 「何だな、景時って面白いよな〜」 「うん!」 白龍が将臣に返事をしたので、その場の全員の視線が集まる。 「何か・・・変だった?」 言葉を間違ったかと、きょろきょろする白龍。 「いいえ、白龍は兄上の事好き?」 「うん!神子を大切にしてくれる。一緒に守るって約束したよ!」 将臣が豪快に笑い出した。 「やっぱあの人、最高だわ。たまんね〜〜〜」 「に、兄さん!失礼だよ」 景時の妹の前で馬鹿笑いをする兄を窘める譲。 「いいのよ、譲殿。私も、ほんと困った人だと思うんだけど。基本的 には優しいのよね、兄上は。臆病すぎなくらい・・・・・・」 「だよな〜、人の気持ちに敏感すぎなんだよな〜。それなのに鈍くさ いというか。もトロイから丁度いい感じだけどな!」 譲はもう将臣への小言は無駄と諦めた。 「あら!はにぶくはないと思うけど。わりと冷静に色々考えてる わよ?ただ、兄上に関しては意識しちゃって駄目なだけよ」 過去のの発言の数々を思い出すと、可笑しくてたまらない朔。 「そうですね〜、先輩ってものすごくスルドイ意見言う時あります よね〜」 譲が遠くを見る。 「そうか〜?あんまりそうは見えねえけどな〜?」 首を傾げる将臣。 「将臣殿もお茶会に参加なさればわかりますわよ?」 朔と譲が笑い合う。 「そんなに面白い話してんの?」 「ええ、それはもう。譲殿が逃げ出したことも・・・ね?」 「さ、朔殿!その話は・・・・・・」 「それは、参加するしかないなっ!と」 将臣が立ち上がる。 「そうだ〜、皆で温泉行かないか?一日くらいいいだろう?色々話せ るぜ〜」 「それは九郎殿に相談しないと・・・・・・」 朔が返事に困っていると、庭から声がした。 「いいと思いますよ。ね?九郎」 庭に弁慶と九郎が立っていた。 「そうだな、一日くらい・・・いいかもな」 九郎が言うと、 「話がわかるじゃんか!」 将臣が指を鳴らした。 温泉の計画を相談し始める仲間から、庭へ視線を移す弁慶。 揺れる庭木がひとつ。 さらに視線を移すと、横切る影。 (そうですね、実に楽しくなりそうです───) 何かが起きそうな予感─── |
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あとがき:有川兄弟による、言葉のない激しいツッコミということで(笑)そろそろまた面白い景時くんに戻したい〜v (2005.3.10サイト掲載)