着物 「ね〜、朔。みんなどうして着物着てないの?」 「え?」 「着物だよ、着物!」 「着物って、着ているものでしょう?皆様きちんとお召しになって・・・」 「ちぃーがぁーうー!朔みたいなのじゃないんだもん!あれ、何?」 「そうねぇ、今は京の文化と東の文化と。それに合戦をしてるものね」 朔も、への説明に困った。文化が混ざり合っている最中なのだ。 しかも、合戦中だから鎧の武者も居たりして、服が簡素化してきている。 は、とうとうと語りだした。 「弁慶さんは、ちゃんと着物してるよね。あれはわかるの。被り物はね、昔の 仕事柄、顔がバレると困るからだと思うんだよね〜。うん。これはよし! ヒノエくんなんて、ダンサーだよ?短い着物にベストにスパッツ。上着を着ないで 肩に掛けてるなんて。それは邪魔なら置いてきなよ!とか思うんだよね。 まぁ、あれもね。海だと寒いとかあるんだろうけど。そうか、動き易さ重視ね。 九郎さんのは鎌倉時代の人が着てた直垂だよね。これはセーフかな。 牛若丸には、水干を期待したいとこだけど。もう子供じゃないからね〜。 でも、譲くんのは弓道部だよ。肩当してるしさ。あれ、手の防具とか皮だから。 手入れしないと臭いんだよね〜。着物の下にTシャツってのもすごいけど。 そうだ!将臣くんなんて。素肌に鎧つけてるのかな?ちょっと錆臭くなりそう。 汗かいたら嫌だな〜。陣羽織は・・・まあ合戦のトレードマーク?しょうがないか! 敦盛さんは公達っぽいよね。あれは・・・狩衣だっけ?平安時代のお坊ちゃま! 笛も上手だしね。うん、二重丸!そうだ〜。先生も変な服なんだよね。忍者・・・ っていうか。忍者のハシリくらい。マントって、邪魔だと思うんだけど。空気抵抗と か考えるとさ。それをものともしない動き!さすがリズ先生っ感じ。でも、着物から は、随分と遠い服だなぁ。白龍も、民族衣装みたいだよね。沖縄行った時、あんな 感じの服みたなぁ。琉球王国の。ラストエンペラーの方が近いかな?小さい時は よかったけど。大きい白龍の服は、ちょっとスケスケ気味の布で困るよね。そうだ! 白龍の性別って、男なのかな〜。ね〜、朔ぅ?」 のあまりの早口のまくし立てについていけない朔。 目をパチクリさせて、棒立ちだった。 「ねぇ〜、朔ってば!どう思う?あ!景時さんの服もさ〜。おもいっきりチビTだよね。 しかも、チューブトップかっていうくらい短いし。あれ、私も着られそうだなぁ・・・」 京の夏は暑い。気温もだが、湿度が半端じゃないのだ。 は、日焼けは嫌だがこの湿度には辟易していた。 そう、あのチビTはイケル。涼しそうだ。 そんな時に、帰って来た男、景時。タイミングがいいのか、悪いのか? 「あれ〜、二人で庭に水撒き?夕方には涼しくなるかな〜。いいね〜打ち水は」 この男、最近朔が楽しそうに笑うのが嬉しい。 といると、きゃらきゃらと普通の女の子のように戻る朔。 に感謝をしつつ、に思いまで寄せているちゃっかり者。 「景時さんっ、お帰りなさい!」 がパタパタと景時に近づいた。 「ん〜、ただいま〜」 ちょっと新婚さんみたいと嬉しい景時。実際は手も握った事のない間柄。 「景時さんって、着物着ないんですか?」 「着物〜?これ着てるよ〜」 「うぅ、そうじゃなくて。着物!」 「今は暑いしね〜、着物なんてオレ暑くて倒れちゃうよ〜」 「景時さんのその服。小さいサイズのないんですか?」 いきなり本題に入る。 「小さい・・・さいず?あぁ、これより小さめのものってこと?」 が首を縦にぶんぶんと振る。 「ん〜、昔のならあるかもしれないけど・・・どうするの?」 「私が着るの!暑いんですもん!!!」 景時は固まった。がこれを着る。それは・・・大変だ。止めなければ。 「そ、それは無理かな〜なんて!ほら、オレ大きかったんだよね。昔から!」 「え〜、それでもいいですよぅ。お下がりくださぁ〜い!」 にしてみれば、水着より布があるのだ。 ちっとも恥かしくない。むしろ、袖なんかいらない。キャミにしてくれ!と思う。 「ちゃん、君ねぇ・・・・・・・・・・・・」 不覚にも着ている様を想像した景時。 「兄上。お鼻の下が伸びてましてよ?」 すかさず朔のツッコミがきた! 「!そ、そ、そ、そんなことないよ〜やだなぁ〜〜あはは〜〜〜」 景時は、誤魔化すように手をバタバタと振り回した。 「兄上のお下がりならありますでしょ?、着てみる?」 朔はとっとと探しに行ってしまった。 「わぁ〜い!暑かったんですよね〜。なんだってこんなに重ね着をしなきゃいけ ないんだか!らっきぃ☆」 はスキップで朔の後を追いかけてゆく。 「あ・・・ま、待って・・・・・・」 景時の伸ばした右手は、空しく宙を彷徨っていた。 「これなんてどうかしら?」 朔が比較的小さめの景時の服の上を出した。 「うん!着てみるね」 が着替え始める。着替えてから重大な誤りに気がついた。 景時は肩幅がある。そして、襟ぐりが開きすぎなのだ。 の肩から思いっきり落ちる服の肩。 「あ゛・・・・・・」 「やはり兄上のでは大きいみたいね」 朔は、肩から落ちた布を摘んだ。 「あの〜、二人とも。入ってもいいかな?」 景時は、そろりと戸を引いて部屋を覗いた。 「兄上!返事するまで入らないでって。あれほどお願いしてますでしょ!」 朔は景時を叱る。そして、の肩で布を摘んでいた手は放された。 「朔ぅ〜、これあとすこぅし肩に掛かればイケルと思うんだよね〜」 がくるりと振り返る。 「ね?景時さん?」 景時は見た。の胸元を。肩を。お腹を。 「ご、ごめんっ!」 鼻を押さえて走り去る景時。 「。諦めて普段の着物にしましょう。生地は薄手の反物で縫ってあげるから。ね?」 「う〜ん。そんなに変なのかなぁ。景時さんも、すっごい速さでいなくなっちゃうし」 朔は真実を告げられなかった。 が暑いというから、どんな着物があるかという話になったのだ。 にあの格好で歩かれては、確実に景時は失血死するだろう。 廊下に点々と残る血の斑点を見つめながら、朔は大きな溜息を吐いた。 庭で両手を地面につけ、鼻血を流しながらハアハアしている景時。 数人の部下に目撃されてしまっていた事は、まだ本人も知らないことである。 |
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あとがき:洗濯が見つかるより恥かしぃ〜(笑)よしよし。どんどんヘタレていこー!!! (2005.2.17サイト掲載)