制服





「はぁ〜、どうしようね。譲くん」
「仕方ないですよ、あきらめましょう。先輩」
 と譲は、自分たちの世界から白龍に呼ばれ、宇治川辺りへ放り出された。
 しかし、着ていたはずの制服は無くなっていた。
「でもさ〜、半端なんだよね。たとえば私はスカートとかそのままだしさ」
「そうですねぇ。俺も半端にTシャツだけ着てますしね」
 またも溜息をつく二人。場所は梶原邸の庭。

「どうしたの?二人とも」
 朔が二人の方へ近づいてきた。
「あのね、今私たちが着ている服って。変だよねって話」
 朔は二人を交互に見る。
「そうね、の・・・下に穿く物は、普通は袴かしら」
「そうですよ。どうしてスカートなんですかね」
 譲は朔の意見に賛成のようだ。
「譲殿の服も変ってますものね」
 朔も、二人の服装について気になっていたらしい。
「Tシャツは首をすぽんっ!て着られて楽なんだよね!でも・・・・・・」
「どうしたんですか?先輩」
「着ていたはずの制服はどこへいったと思う?」
「どうしてそんなに気になるんです?」
 は、この変な格好では元の世界へ戻った時に困ると思っていた。
 さらに、制服がどこにあるのか?もしもあの時の渡り廊下だとしたら・・・・・・
「あのさ、もしも渡り廊下に私たちの着ていない部分の制服が落ちてたら?」
 が譲に問いかける。
「え?・・・・・・・・・それは・・・・・・」
 はともかく、譲は制服の上下と言うことになる。
 高校生が三人も忽然と姿を消し、現場に残された制服・・・・・・
「・・・・・・新聞の一面記事決定ですね、俺たち」
「でしょ〜?しかも服着てないと思われてるんだよ」
 またも深い溜息をつく二人。すると朔は、
「あの・・・“せいふく”って何のこと?」
 朔の聞き慣れない言葉について問われた、と譲。
「え〜っとね。“学校”っていうところで私たちくらいの子供が勉強してるの。それで、
そこで着る服がみんな同じっていう決まりがあって。その着るものが制服かな」
「そうなの。それで・・・・・・と譲殿は、それが無くて困っているのね?」
「まぁ〜、そういうことかな。しかもこの服だよ〜?」
 は立ち上がり、くるりと一回転し朔に見せる。
「何か、私の着物を探してみる?」
「う〜〜〜ん。着物だと動き難そうなんだよね〜」
 今度は、三人が溜息をつきながら悩み始めた。

「何、何、何〜?どうしちゃったの〜?そこ、暗いし!」
 仕事を終えた景時が、帰ってきた。
「何でもないですよ?・・・景時さんの服って、源氏の軍奉行の制服ですか?」
 も、景時の服が兼ねてより気になっていた。
「ん〜?“せいふく”〜?何?これ、へんかな?」
「変じゃないですけど・・・・・・」
 は、続きは言わないことにした。
 変ではない。しかし、なぜ腹を出す必要が?
「あのぅ・・・戦いの時って、防具をつけないんですか?」
「え?防具?あの重いのね〜。重くて動けなくなっちゃうんだよね〜、オレ」
 景時は、頬を指で照れくさそうに掻いていた。
 
 突然が景時の腹を指差す。
「譲くん!私たち、アレよりはマシだと思うの。ていうか、十分普通!」
 先程までの溜息はどこへやら、譲も立ち上がりと手を取り合う。
「そうですよね、先輩!僕たち、まだ普通の格好してますよ!」
 喜び合う二人。源氏の軍奉行があの服である。
 望美や譲がどんな格好であろうとも、普通にしか見えないだろうという結論に
たどり着く。もとの世界へは、戻れた時に考えればいい。

「な、何?オレ?ね〜、朔〜?何なのよ、オレ何かした?」
「今、何かした訳じゃありません!」
 朔は、あまりにのん気な兄が恥ずかしくなった。
「大体、兄上は嫁も貰わずフラフラと。そんなもの・・・・・・」
 朔の拳が震えていた。
「腹をしまいなさーーーーーーーーーーーいっ!!!」
 梶原邸に、朔の怒声が響いた。

 翌日から、九郎に付きまとう者が一名。
 制服について学んだ景時。
「ね〜、だからさ〜。源氏に“制服”作ろうよ〜」
「誰が腹なんかだすものか!バカモノっ!」
 源氏の兵が、全員腹だしの服になっていたとしたら・・・・・・
 歴史を変えたのは、ということだろう。





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≪遙かなるお題配布所≫からお題拝借。お題元はコチラからどうぞ。

 あとがき:源氏で腹だし服が大流行の兆し(笑)そんなのないって!   (2005.2.13サイト掲載)




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