夢見た日  ≪景時side≫





 オレにしたら、待ちに待っていた日。
 それなのに。
 朝ご飯からして変な一日の始まりだった。
 ちゃん泣いてる・・・・・・
 まさか後悔してるとか?!
 内心穏やかじゃないオレ。
 けど、母上がそっとして置きなさいって。
 言われるまま、朔と母上に任せてしまった。

 さっさと着替えて。譲君とおしゃべり。
 そうなんだよな〜、時間が余る。
 きっと足が痺れるよとか、式の話してたら牛車が来て。
 ちゃんを迎えに行って、固まった。
 
 そう、オレはちゃんの花嫁姿を初めて見るわけで・・・・・・
 ちゃんに「綺麗だよ」とか言えたら格好いいのに。
 馬鹿みたいに突っ立ってた。
 牛車の中でも、気の利いたこと言えなくて。
 さらに駄目っぷりを上げてしまった。

 仁寿殿へ通され、二人並んでど真ん中、帝の正面に座る。
 距離はあるから、別に緊張するもんでもなし。
 ただ、四方八方から見られてるから欠伸なんて出来ない。
 ちゃんは好奇心旺盛で。きょろきょろしてた。
 ほんと可愛いよね〜v
 辺りには見目麗しい公達が、物見高くちゃんをひと目見ようと。
 わんさかいたんだよね。ちょっと心配してたんだ。
 残念ながら向こうからは着物しか見えないとしてもね。
 こちらから向こうは見えるんだから。
 それなのに『勝手に座ってる』って。
 不覚にも笑ってしまった・・・・・・最高だよ、君は。
 オレもね、勝手にたくさんお集まりいただいたなって思ってたから。

 帝に言葉を賜り。適当に返す。いいんだ、どうでも。
 頼朝様に言葉を賜った時は緊張したけど。
 でもさ、ちゃんたら話す気がないのがありありで。
「着物が重くて疲れましたぁー」って、頼朝様に言うもんだから。
 九郎が怒るわ、頼朝様は笑うわ。オレ、焦ったよ。
 怒った九郎に、「九郎さんも着てみればわかるよ〜、失礼しちゃう」って。
 九郎は口を開けたまま固まってた。あれ、誰が九郎を宥めたんだか。
 弁慶だろうけど。

 そうして控え室へ戻り。計画通りちゃんは着替える。
 譲くんを呼んで説得し。敦盛くんを騙した。
 オレぐらいの術じゃ、式神に臨機応変な返事はさせられない。
 よって、この場を逃げ出すには幻術をかける。
 ただし、代理が必要。受け答えできる代理が。
 オレの代わりを譲君、ちゃんの代わりを敦盛君にしてもらった。
 周りからはオレとちゃんに見える予定。
 術は朔が解けるように仕掛けた。
 後日辻褄を合わせれば済む。
 
 二人で抜け出した時は、気分爽快!
 まだ空は青かった。
 宿でもよかったけど。
 人の出入りが激しくて落ち着かないかなって。
 小さな離れを借りた。手伝いの人が食事も下仕事もしてくれるし。
 いいと思うんだよね、のんびりできて。
 南を目指して歩く。
 内裏から離れるまでは、これが一番自然。

 

 今日はオレ、ヘタレててごめんね。
 これから少しずつ頑張るから。
 ちゃんの気持ちが綺麗なままでいられるように。
 隣でいつも君が笑ってくれるよう。
 穏やかな日々を過ごせるよう。
 たくさんの見えない何かに誓いを立てた。





Copyright © 2005- 〜Heavenly Blue〜 氷輪  All rights reserved.


≪景時×神子に30のお題≫の続編風で

 あとがき:夫婦としての始まりはこんな感じで。次は旅行編?!     (2005.4.2サイト掲載)




夢小説メニューページへもどる