聞き逃し  ≪望美side≫





 そういえば、そんな事・・・・・・


「パパ・・・言ってた・・・・・・・・・・・・」



 もう頭の中が大パニック!
 日付を見れば5日だし。
 パパの嫌味んぼに気を取られていて、大切な言葉を聞き逃し。
 もぉ!わかってたら、元旦にしたのにっ。
 それはさすがに無理としても、もう少し何か考えられたよ〜。
 

 『今日しかないっ!!!』


 今日って事しか頭になくって。
 何って、景時さんとの結婚の届け?を出すのが。
 本当は記念日とかだといいんだろうけど。
 そんなの待っていられないもん。
 無理、無理!!!今日だよ、今日。

 そして。結婚といえば、白なのよ。シ・ロ!

「白い服ぅ〜?無いっ!!!」
 またも大ピンチ!
 シャツだけ〜とか、スカートだけ〜なら白はあるのよ。
 それを上下となると、変なの。
 そうじゃなーいって感じで。
 じゃあワンピースぅ〜?って考えると、夏用とかしかなくて。
 いくらなんでもスリップドレスタイプは寒すぎ!
 困ったなぁ〜と思っていたら。
 しっかりママに服を決められちゃった!
 まだあれは着たこと無かったし。
 新しいの、嬉しいよね。
 そして景時さんのお洋服も選んだ。





 午後にパパとママのところへ行って。
「今日から本当に景時さんのお嫁さんだからねっ!」
 胸を張って宣言してみたんだけど。
「それは、それは。これでようやく静かになるねぇ?」
「・・・・・・は?」
 あれ〜?もう少し、こう、花嫁の父は泣くとかぁ。
 何かないのぉ〜〜?

「さあ、さあ。早く有川さんのところへ行きなさい」
「う、うん」
 ママにまであっさり追い出されちゃって。
 私って・・・・・・すっかりお邪魔虫さん?





「景時さ〜ん。なんだかとってもあっさりだよね〜。もっと、こう・・・
人生の大イベントって思ってたのにぃ」
 何となく気が抜けちゃった。
「そぉ〜?オレはちゃんと正式に夫婦っていう事実も嬉しいけど。
周囲に認めてもらえて、一緒に暮らせるっていう事実の方が嬉しかったかな」
 あ、そっか。
 紙だけだしてオシマイっていうより、景時さんと暮らす方が大切だね!
「そぉ〜ですね!そ〜でしたっ!」
 やっぱり頼りになるっ。景時さん、格好イイ。





「可愛いわ〜、ちゃん。今から行くのね?いってらっしゃい!」
「寂しくなるねぇ。そうそう、景時君の・・・これが必要だね」
 すっかり必要なところが記入済みになっている婚姻届が用意してあった。
 後は自署だけだぁ。
「ありがとう、おじ様!大好きっ」
 今日用意したって感じじゃないもの。
 きっと、景時さんが本当にこっちの世界へ来た時に用意してくれたんだ。

「でぇ〜?二人で行くのか?」
「そう!でね、これ・・・お願いしたいなぁ。後で朔に見せたいんだよね」
 景時さんがしっかりデジカメを将臣くんて手渡した。
 いつの間にって思ったけど、朔に見せたいのは同じだもん。
「へ〜、へ〜。お付の人で行ってやるよ。ついでに譲も来いよ」
「俺?俺は・・・・・・そうですね。行きます」
 よかったぁ。なんとなく・・・来て欲しかったの。
 向こうでの景時さんも知っている二人に。



「それじゃ。行ってきま〜す!」
 元気に手を振って。
 今日からホンモノの夫婦になるために。

「ね。景時さん。私ってさんから梶原さんだね?」
「・・・そっか。そういう事?オレがさんでもいいよ?」
 確かに、どちらかの姓を名乗ればいいんだけど。

「出席番号、どっちも“か”だから順番は変わんねぇんじゃねぇの?」
「そういう問題じゃないんだよぉ!将臣くんはデリカシーってものが無いの?」
 私にとっては、表向き“”、実は“梶原”という生活の始まり。
 嬉しいヒミツなんだけどなぁ〜。

「そういえば、そうですね。イニシャルも変わらないって事ですね」
「・・・譲くん。それも何だが違うよ」
 冷静に言うところが、いかにも譲くんだなぁ。

「ま!オレとってはちゃんだから同じ。ただ、正式にってトコが嬉しいんだ」
「うん!私もっ」
 皆に二人を認めてもらえて。
 これから何かあったら書く名前は、梶原さんなの。
 学校関係はダメだけど。

 いつ書けるのかな〜。
 何に書けるのかな?
 ドキドキ!

「どうでもいいけどな。その顔なんとかしろ、二人そろって」
 将臣くんに言われて、景時さんを見上げると───



「景時さん。口元・・・うにゃんだよ?」
「ん〜。それを言うなら、ちゃんもだね?」
 だって、無理だよ〜。嬉しすぎると顔が直んない!

「この顔で残っちゃいますよ?」
「うん。いいいよ。嬉しいから・・・変えられないし?」
 あらら。景時さんたら。



「どうでもいいから歩け。後でおじさんたちも来るんだろ?」
「兄さん。うちの両親もです。なんでも、このメンバーで写真を撮るって」
「はぁ?俺、こんな格好だぞ?」



 ふ〜ん。そうなんだ。集合写真もなのね?
 でも・・・将臣くんたらよれよれのデニムパンツ・・・・・・。



「どんな格好でもいいんだよ。嬉しいな〜。家族だね!」
 景時さんが益々うにゃんな顔だ〜。
「将臣くんが主役じゃないからいいよ!私と景時さんだけびしーっとで」
「ひでぇの。向こうからアイツ等が来たら笑われるの俺だぜ?」
 将臣くんが気にするなんて意外!
「兄さん・・・気にする程普段から服装に気をつけていたとは思えないけど?」
 そうそう。そうだよ。いいツッコミよ、譲くん。
「お前も地味だよなぁ〜。まあ譲らしいケド」
「派手とか地味の問題じゃないんだって。・・・・・・皆で撮る時は考えるし」
 ・・・え?

「譲くん・・・それって・・・・・・ありがと!」
 夏には皆を呼べるかな?夏休みなら安心して遊べそうだし。

「景時さん!夏!夏休みに皆でどこか貸切で遊びに行くのはどうですか?朔と二人で
すっごくおしゃれしてお出かけしたいかも!!!」
 そうだよ。朔、きっと可愛いよ。似合うよ〜、洋服も。

「・・・オレ・・・心配が増えそう・・・・・・」
「何のですか?」
 さっきまでうにゃんだったのに。
 今度は髪までへにょんだよぅ?

「・・・仲間限定にして。オレ・・・・・・」
「まあ、まあ、まあ!!!その話は後にして。まずはお前等の記念写真が先な!」
 将臣くんに誤魔化されちゃった感じぃ。
 今度は聞き逃してないよね?

「景時さん、行こう?」
「行こうか!」
 後は出すだけだも〜ん。
 パパに同意書ももらったし。



 ドキドキするけど、二人で行こう。
 始まりの一歩だね!!!
 この扉の向こうへ。
 帰りには違うワタシになる───






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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→現代へ

 あとがき:行きと帰りで変わってるっていう感覚はどんなものなんだろ〜。まだ経験ないな(笑)     (2006.08.04サイト掲載)




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