眩しき朝 「うぅ・・・・・・」 「わっ!」 目覚めはしたものの、腕を動かすとが起きてしまう。 の寝顔を眺められる時間を大切にしたい景時。 景時がいる事を無意識に確認しているであろうの手。 場合によってはくすぐったいので注意が必要である。 「危なかった・・・・・・」 「・・・・・・何がですか?」 「うわぁ!」 残念ながら、本日はが目覚めてしまった。 「お、おっはよ〜」 「おはよ・・・頭痛いとかないですか?」 昨日の機嫌よく寝た様子を考えれば二日酔いは回避出来ているとは思うが尋ねずにはいられない。 先に景時の額に手をあてた。 「うん。それはないんだけど・・・もったいない事したなぁ」 が目覚めているならば安心して抱きしめられる。 腕を動かし包み込めば、自然にも景時に腕を回してくる。 「へ?」 「ん?せ〜っかくちゃんが着てくれたのにね?」 さり気なくの肩紐を抓む。 「・・・いいの。いつも着てるんだし」 「いいの?!じゃ、今から〜〜〜」 の手が軽く景時の額を押し戻した。 「・・・今日はお出かけですよ?」 「・・・・・・・・・そうだったっけ?じゃ、せめてコレはいいよね」 を抱きしめて仰向けに転がる景時。 慣れたものでも上手く上体だけを重ねる姿勢になった。 「重い?」 「それはない。・・・背中のすべすべで我慢しようって頑張ってるから、あんまり動かないでね」 本気で残念に思っているらしい景時の様子が可笑しくて、つい笑いを零してしまう。 ついでに擽ってみる。 「くすぐったい・・・ダメだよ〜、そういう悪戯しちゃ。お昼までに行けなくなるよ?」 「遅刻はダメですぅ〜だ。新年から遅刻したら、一年間遅刻しそうで嫌ですぅ〜だ。将臣くんじゃ ないんだから。遅刻はダメ!」 「・・・あはは!それって将臣くんが遅刻魔みたいだね?」 「そ〜だもん。いっつも先生に言い訳してあげるの私なんだから」 景時にダメと言われてもそろりと触れては遊ぶ。 景時は体を捩りつつも、を落としたりしないよう腕だけは離さないでいる。 しばらくベッドでいちゃついて、まだ初夢を見ていない事を語り合った。 「ん〜とね、この辺りなんだろうとは思うんだよね〜〜〜。電話すれば来てくれそうだけど」 「ですよね〜〜〜。将臣くんを呼んじゃいます?譲くんはお昼の支度で忙しいだろうし」 久しぶりの譲の料理だ。 料理の先生の味を盗むために、は譲の邪魔をしたくない。 「あ、そっか。だね〜〜〜。じゃあ、将臣君の電話を・・・・・・」 景時が携帯を取り出すと、かける前にメロディが流れる。 ディスプレイを見れば、将臣からである。 「もしもし?」 「もしもし〜?じゃねえっての!母さんが退屈してて、早く迎えに行けって大変だったんだぜ? 少しは早く来るくらいの気遣いしろよ〜〜〜」 電話からではなく、もっと近くからの声に景時とが同時に振り返る。 「あ゛!」 地蔵の様に薄い目つきで景時とを睨む将臣と視線が合う。 「あ・・・・・・あけましておめでとぉ〜・・・って、もう言ったね」 「いいから早く来い。とにかく来い。今すぐ来い」 将臣に手首を掴まれた景時が引きずられる様に歩き出すと、その後ろをが小走りに追いかけた。 「きゃ〜!景時君、ちゃん、いらっしゃいっ!ここなのよ、二人にあげたいな〜って思ってる別荘。 兄さんにあげるの勿体無いから、譲に頑張ってもらいましょうね!」 玄関の扉に手をかけるより早く紫子が飛び出してきた。 「今年もよろしくお願いいたします!」 「あ・・・いたします」 冷静に挨拶をする景時に、最後だけ言葉が追いついた。 「いいの、いいの。そんな堅苦しいの、他所でしてね?家はいいの。譲がご飯作ってるから、ちゃんは 私と遊びましょうね〜〜〜」 「えっ?!ま、まだ、おじ様にご挨拶が・・・・・・」 「そんなの食事の時でいいわよ」 紫子にすぐに連れられてがいなくなった。 「ま、こういう事だ」 将臣が肩を竦めて景時へ視線を送る。 「ごめんね〜?ほ〜んと。もう少し早く起きられたらよかったんだけどね」 起きてはいたが、昼前でいいと思っていたのでのんびりしてしまったのだ。 「いいさ。母さんもさ、を着せ替えしたいだけだろうし。しばらく借りるぜ?景時は親父の担当な」 将臣に軽く別荘内を案内されながら、恐らく京都を一望できるであろう位置の部屋の扉の前に立つ。 「入るぜ〜〜」 将臣は返事を待たずに扉を開く。 そこには、のんびり外を眺めながら座る行成だけが居た。 「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。これ・・・・・・」 渡しそびれていた手土産を行成の前に差し出す。 「こちらこそ、今年もよろしくお願いいたします・・・だね。家は景時君の実家のつもりでと言ったのに。 ま、あんな事があったらそう思ってもらえないのも仕方ないか」 土産を受け取りながら、寂しそうに微笑んだ。 「そっ、そんな事はないです。その・・・ちゃんが何事もきちんとって。オレもケジメっていうか。 新年から軽いと叱られちゃうっていいますか・・・・・・」 景時が慌てて手土産の経緯を説明すると、行成が笑い出した。 「はっはっは!ちゃんらしいね?景時君の奥方様だからね。ま、あまり最初から頑張りすぎないように ・・・なんていうのは、私が言わなくてもかな」 勧められるままに椅子に座れば、静かな京都の町並みが見渡せる。 「ここはね・・・高台だから静かだろう?いい場所だと思うよ」 多くを語らないが、この場所が気に入っている事は景時にも伝わった。 「・・・ええ。時間の流れが・・・緩やかに感じられますよね」 古い町並みというならば、鎌倉でもそうだ。 同じ歴史ある土地でも、京都は違って感じられる。 「ジジくせ〜。で?何飲む?景時となら酒?俺は参加OK?」 棚に並んでいる酒を漁る将臣。 行成が振り返り、指で将臣を呼び寄せる。 「・・・ここでは未成年だ。お前は飲まなくてよろしい。盛子さんに日本酒を用意してもらってくれ」 「うわ〜、俺だけ酒もなくてどうしろってんだよ・・・・・・水か?」 軽く肩を竦めると、部屋の出口へ向かって歩き出す将臣。 「将臣。私が気づかない分には構わないよ」 「おっ?!話せるじゃん!すぐにご用意させていただきますってな」 足取りも軽く将臣が部屋を飛び出した。 「まったく。黙って飲んでりゃいいものを。あいつもまだまだだな」 「将臣君って、真面目ですよね〜」 それこそ言わなければいいものを、自ら言ってしまう辺りがまだ幼いといえば幼い。 「あいつの良い面といえばそれはそうなんだけどなぁ。いまひとつ知恵が足りていない」 「いいえ。相手にに認めさせるっていうのもアリですから。将臣君はそういう方が得意なんでしょう」 黙って相手を意のままに操る弁慶タイプもあれば、先頭に立つことで従わせる九郎タイプもいる。 将臣は、相手を引き込むタイプだ。 「それじゃ、景時君は自分をどう分析しているんだい?」 それだけ冷静に洞察しているならばと行成が景時を試す。 「オレは・・・本来はコソコソと最悪を考えて準備する様な戦術でしたから・・・・・・今は・・・ 最善を考えて動こうって、そう思ってます。ちゃんの影響でしょうけど、最悪だけ考えて心配ばかり するくらいなら、いい事も考えないとって」 「はっはっは!逆説的だね。さすが陰陽師といったところかな?幸先の良い年になりそうだよ」 「な〜にが幸先?」 盛子とともに部屋へ戻った将臣が酒の用意を載せたお盆をテーブルに置いた。 景時と盛子が軽く新年の挨拶を交わすと、行成が景時が持ってきた手土産を盛子へ預ける。 「譲ぼっちゃまが、もうすぐ食事なのにお酒を飲むのかって怒ってらっしゃいますよ?」 おつまみを並べながら、溜息をついていた譲を思いやって盛子が台所での様子を伝える。 「そう浴びるほど飲むわけではないよ。いわば・・・食前酒といったものかな?」 さっさと景時に酒を勧め、冷酒を飲み始めている。 「・・・お正月だけですからね。少ししたら降りてきて下さい」 さっさと盛子だけが台所へと戻っていく。 「・・・譲はそんなに怒っていたかい?」 さり気なく将臣に探りを入れる。 「あ〜〜〜、どっちかっつうと仲間ハズレがムカつき系?ひとりだけ働いてるし。ま、大丈夫!」 ぐびりと杯を飲み干す。 「・・・どこでそんな飲み方を覚えたんだか」 味わう間も無く飲み干しているのだ。ついこめかみに手がいってしまう。 「んあ?ああ・・・飲む物がなかったから自然に。お湯か酒って感じだったしなぁ。味がある分マシ?」 「馬鹿者!美味い酒は味わえ」 軽く将臣の額を指で弾く。 「へ〜、へ〜。景時は味わう方だよな。いっつもチビチビやってたよな?」 「う〜〜ん。好きは好きだよ?ただね〜、こうちまっと飲むっていうか、間が楽しいっていうか」 仲間が楽しそうにしているのを眺める側にいる自分が楽しいのだ。 時々輪に入りつつ、また眺めつつ。 (・・・そう・・・穏やかな時間が・・・欲しかったんだ・・・・・・) いま手に入れた時間は、今までがあるからこそ穏やかで大切なモノだとわかる。 「・・・将臣にはまだ少しばかり経験が足りないからね。酒の深みまではわからんだろうな」 少しだけ静かに流れる時間を楽しみ、食事のために階下へ移動した。 「食べようか」 行成の掛け声で挨拶をすると食事が始まる。 「・・・すごいよ、譲くん。お節料理まで練習してたの?」 様々な料理が並べられているが、何といってもテーブルの中央にある重箱が目立つ。 軽く眼鏡をかけ直しながら謙遜しつつも努力の成果を披露する譲。 「その・・・今回は料理本を見ながらなんですけど・・・・・・出来るだけ忠実にと思って、何回か 練習していたんです」 「すごぉ〜い!私なんて、なぁ〜んにもしてなくてね?ママに作りなさいとか言われたの」 縁起物とばかりに小皿に取り分けては食べる。 褒められれば悪い気はしない譲の頬が少しだけ紅く染まった。 「今年は俺が作るから言わなくていいよ〜って言ったのは誰だったかしら?」 何回かではなく、かなりの回数を練習していたという真実をさらりと紫子にばらされる。 「かっ、母さん!」 「だって〜。譲ったらね、はりきっていたのよ、こっち来ても作るって」 京都に来ることになったのは、いわば後から割り込みの予定である。 「そうなんですか?譲くんたら、そんなに前から練習してたんだぁ。向こうで言ってくれればいいのに。 そうすれば私も向こうで練習できたのにぃ。ママを驚かせたかったな」 着物を着られるようになっただけで褒められたのだ。 お節までつくれたのなら、さぞかし立派な主婦と認めてもらえただろうと思う。 「あ・・・そうですよね。でも、俺もまだこの重箱につめる並びとか覚えていなかったし」 作れるものは作れても、一の重が何であるか等、まったく覚えていなかったのだ。 「うん。次は教えてね?私も出来る様になりたいんだぁ。景時さんにたくさん味見してもらいながら 頑張るよ」 のお節を味わう一番は景時らしい。瞬間、景時に視線が集まり散らばった。 「いいわよね〜、景時君。ちゃんをひとり占めで。家にも遊びに来てね?」 「はい!景時さんの実家ですもん。それにぃ、私も譲くんにお料理習いたいですから」 の返事で場が和み、食事と会話を楽しみながら時間が過ぎた。 「それじゃ、また」 「お邪魔しました」 景時とが手を繋いで帰る姿を見送る行成他、有川家の面々。 「・・・女の子はいいねぇ」 「親父もしまらねぇ顔してないで。さっさとあいつ等の為に何かすれば?」 将臣がもっともな意見を述べると、行成が将臣の頭に軽く手のひらを乗せた。 「背ばかりでかくなって。男は可愛くないなぁ?私など出る幕は無いといいたいところだが。将臣には 出番があるから私の部屋に来い。先にお前には話しておく」 と同級生でクラスも同じなのは幸いだ。 一番いいポジションにいる将臣に、年明けに予想される出来事を先に知らせる必要がある。 「へぇ、へぇ。俺もお手伝いさせていただきますって。が学校壊したら責任とれねぇし」 行成と将臣が二階へ消えると、紫子は譲を手招きする。 「ね、今度はお茶に付き合って。偶には母さんの相手なさいな」 譲にはぜひとも別荘を手に入れるための試合に勝ってもらわねばならない。 それに、兄の性格を知っていて仕掛けたのだ。 向こうも勝算があっての事だろうが、勝負は負けたくない。 「・・・母さん。弓の稽古ならするし、そう心配しなくても大丈夫。俺だって負けるつもりはないですから」 「やだぁ〜、すっかり男っポイ事いっちゃって。譲はまだ男の子だと思っていたのに!母さん、寂しいわ」 しっかり泣き真似をすると、溜息と共に承諾の気配を感じる。 「・・・少しだけですからね。それから。クドイ様ですけど、あまり先輩に無理を言わないこと。先輩は 優しいから、母さんの着せ替えごっこや買い物にまで付き合ってくれるけど、普通は嫌がられますよ」 厳しい言葉を吐きつつも、紫子の後ろを歩く譲。 そのまま茶室で二時間ほど相手をさせられたのは、譲の誤算だった。 「おじ様、ご機嫌だったね?景時さんは・・・大丈夫?」 手を繋いで歩く景時を見上げる。 「ん〜?オレ?オレはそんなに飲まなかったし。千鳥足とかにはならないよ」 そう大量に飲んだわけではない。ほんの付き合い程度の酒量だ。 「よかった!もう暗くなっちゃいますね〜」 冬の落日といった風情の京都。 西を目指して歩いている二人。 新春でも冬は冬。日が落ちるのは早い。 「うん。でも・・・二人だから・・・寂しくないね」 夕暮れは物悲しい印象があるがと手を繋いで歩くなら別とばかりに、景時が繋いだ手を大きく振る。 「もちろん!もっとたくさん京都めぐりしなきゃ。明日はどこへ行きます?」 二人の想い出の地は、まだまだある。 「そうだなぁ・・・折角だから、西の方も行ってみる?ほら、北と南はお母さんとお父さんの実家で行ったし。 東も伏見も行ったから、残りは西!」 「そうですよね!景時さんの方角だもん。いい事ありそ〜」 「あはは!そういえば、そうだね〜。偶然、偶然」 そんなに深く考えたわけではない。 ただ、と出来るだけ一緒に居たかったのだ。 誰にも邪魔されずに─── 「・・・嵐山の渡月橋って、カップルで渡ると良くないんですって。だから、嵐山はダメだよ?」 「そ〜なの?渡月橋がねぇ・・・・・・」 に手渡されたガイドブックには、その様な事は書いていなかった。 呼称の始まりは“くまなき月の渡るに似る”と感想を漏らした上皇がいったという内容だったはずだ。 どこから別れる橋になったしまったのかとは思うが、橋自体がそもそもそのようなものだ。 一条戻り橋にしても、黄泉と現世を繋ぐ橋と信じられていた。 繋ぐといえば聞えはいいが、黄泉と現世を隔たつのが橋である。 「ま!橋を渡らないで行けるトコがあるといいね〜」 ページを捲っていると、が景時の服の袖を引いた。 「銀閣寺に行ったから、金閣寺もっていうのはどうですか?」 「金?!まぁ・・・銀があれなら・・・・・・」 「金ぴかですよ?え〜っと・・・・・・ほら!」 ガイドブックを奪い取ると、金閣寺のページを開いてみせる。 まさに金としかいいようのないその写真。 「うわ・・・派手だね〜〜〜。ぴっかぴか。盗まれちゃいそうだ」 金を野ざらしにしているというわけなのだから、景時にしてみれば考えられない。 警備がさぞかし大変だろうと、警備している者たちを憂えてしまう。 「どうでしょ?ちゃんとした金なのかなぁ?絵の具だったりして」 水彩画の絵の具に金がある。そう大層なものではないという感覚の。 「・・・でもさ、これは金箔っポイよ?そりゃあ、ひらひらっと薄いことは薄いけどさ」 見れば見るほど金にしか見えない。 「ふ〜ん。景時さんは金が好き?」 景時の好きな色が金なのかと思う。 だからといって、金色の服というのは無理なのだが聞きたいものは聞きたいのだ。 「いや〜?金は別に好きとかじゃなくてさ。財っていうか、大変だよね」 「なぁ〜んだ。景時さんが実はぴっかぴか好きなのかと思っちゃった」 軽く肩を竦める。 「ひどいなぁ〜。金はね・・・オレ運んだことあるんだよね。大変だったなぁ〜って」 「そ、そうなんですか?!いつ?」 アクセサリー程度の量ではないことくらいにだって解る。 「ん。そりゃあ・・・色々と入用な場合もあるしね」 戦に兵站は付き物だ。物資の調達には交換するものが必要である。 「そうですよね。景時さん、軍奉行さんでしたもんね」 景時があまりに飄々としているので忘れがちだが、仮にも軍奉行の職にあったのだ。 が知らない事も数多く経験しているだろう。 「そうだね・・・ない方がいい職だよな。・・・な〜んてね!京都でたくさんデートしようね」 「はい!」 景時の呟きには触れずに、歩き出す。 こちらの世界では関係の無いことだ。 「夕ご飯は何にします?」 「ええっ?!オレ・・・まだ空いて無いかも?」 豪華な譲の手作り料理の数々に舌鼓を打ってきたばかりだ。 景時を見上げたがぺろりと舌を出した。 「冗談ですよ!でも・・・暖かい部屋でアイス食べたいな〜〜〜」 「あはは!そうだね。コンビニ経由で帰ろうか」 が笑うと景時も笑う。 「景時さん、コンビニ大好きだもんね?私より詳しくなっちゃって」 コンビニのサービスを知り尽くしている人間はそうそういないだろう。 景時の知りたがりが発揮されてしまった場所がコンビニだった。 狭いスペースでありながら、様々なサービスが受けられるのだ。 「あるものは使わないとね〜〜〜。そうだ!今度さ、お取り寄せグルメしてみたいよね」 「・・・もう!そんなに毎日行ってもかわらないよぅ」 鎌倉では、殆んど毎日の様に行っていた。 思いついたようにフラリと行くのだから、考え無しに行っているのではないのだろう。 けれど、顔見知りになってしまう程いかなくてもいいのではとも思う。 「それが違うんだな〜。わりと商品の並んでいる場所か変わってたりするよ。それにさ、こっちの コンビニって探しにくいよね〜。看板がぴかぴかっとしていないし」 「京都はね、そうなんです。マックも違うんだよ?街の色に合わない色はダメなんだって」 「ええっ?!そうなの?」 「・・・テレビで観たもん。多分そうですよ?もっと遅くなったら行ってみます?」 「行くっ!」 何にでも興味を示す景時が面白くて仕方ない。 「じゃ夜のお散歩も追加〜〜。どこにありましたっけ?」 「そういう時はコレでしょ!」 携帯まで使いこなして店舗検索を始める景時。 「あ、そっか。その手があったかも」 普段ならも思いつくのだが、旅先という特別な状態が普段を忘れさせてしまう。 何があっても景時は変わらず冷静なのだと、頼もしくなる。 「こういうの考えた人ってスゴイよね〜〜〜。ものすっごく欲しかったんだろうね?」 「え?」 それこそ、気づかない視点である。 「だってさぁ〜、自分で欲しいから考えて作るんだよね?こういうのって」 片手で携帯を軽く掲げてみせる。 「そうかぁ・・・そうですよね」 世にある道具は誰かが考えて作ったモノだ。そうでなければ存在しない。 「そ〜。上手いこと考えてあるよな〜って。何を見ても楽しいんだよね」 「えへへ。景時さんも作りたい?」 「どうかな?もう色々あるし。今は仕組みを知りたい方が先かな?」 作るには知識が必要である。 そして、既存のモノを物真似して発展させるのが基本。 まったくの新しい技術やモノは、偶然の産物である場合が多い。 「ふうん?景時さんがお家で本に潰されないように見張らなきゃですね!」 「あ〜〜〜・・・気をつけマス」 潰されるほど本を揃えてしまうだろう事は予測できる。 は事前に景時のために発明部屋まで振り分けているのだ。 (・・・ちゃんって、不思議だよなぁ) 朔にはあまり歓迎されていなかった景時の発明。 は楽しんでくれている。 隣で景時の説明を楽しそうに聞いてくれるのはだけだ。 「・・・発明・・・嫌じゃない?」 「?・・・どうしてですか?今度は何が出来たのかな〜ってわくわくですよ?」 つい顔が綻ぶ景時。 「そ?失敗しても?」 「次がありますよ?最初から簡単にできちゃったら、考える楽しみが減りませんか?」 何にでも前向きな。 「そうだよね〜。考えて、考えて。成功した瞬間がキモチイイんだよ〜」 まだまだ正月という特別な日。街中は常とは違った賑わいの風景が続いていた。 |
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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→現代へ
あとがき:何かを達成するのは気持ちイイもんです。苦労が多かった時程ね! (2006.04.20サイト掲載)