三国一  ≪景時side≫





 嘘だろ?

 少なくとも、オレの知っている弁慶は怪力自慢ではない。
「・・・持ち上げると三国一の花嫁さんねぇ?」
 しばし考える。
 別に、これを持ち上げなくともオレにはもう三国一の花嫁さんがいる。
 正しくは、予定だとしてもだ。

「こっちの弁慶さんって、ムキムキぃ〜って伝わってるんですよ」
「熊みたいだね〜、こんなの持ち上げられるなんて」
「・・・・・・うぷぷっ。弁慶さんに言っちゃおう!」
 小走りに逃げるちゃん。

「それはナシ!小出しにイジメられちゃうよ〜」
 本気で走るわけじゃない。単なるじゃれ合い。
 これが楽しいんだな〜。


「ひゃ〜〜。高いですね。清水の舞台ですもんね」
「そうだね〜。ここで舞をしたんだよね〜。向こうから見えるのかな?」
 舞台というからには、舞を舞う場所なわけで。
 神泉苑でちゃんが舞った、あの春の日を思い出す。

 ん?

 ちゃんがオレのコートを引っ張ってる。
「・・・・・・大丈夫。そんな顔しなくたってさ。ちゃんが綺麗だったなぁ〜って」
 正直に言ったのにな〜。またも逃げられた!


 そんなこんなで、清水の坂を下りながら思い出す。
ちゃん。縁結びに行こうか?」
「縁結び?さっきのは違うの?」
 あ〜、したね。清水さんで。地主神社とか。
「え〜っとね、オレが知ってるトコ」
「行くっ!」


 
 あるかな?あるといいなと思いながら道を渡る。
「あった!コレ、コレ」
 指差す先にあるものは、『安井金毘羅宮』。ここは由緒正しい縁結びの神様だ。
「古そうですね〜?金毘羅って・・・うどん?」
「残念!うどんかどうかは知らないんだけどさ。悪縁切りと縁結びの神様のはずだよ。
ぴったりじゃない?」
 ちゃんが悪戯を思いついたような笑いを零す。
「切っちゃおう!変なヒトたち。嘘でもスッキリで新年を迎えられそう」
「あはは!そんなに張り切らなくたって・・・・・・」
 形代に気合を入れて縁切りの願掛けをしている。

「ぺた〜ん。出来ました。今度は縁結び!」
 ぐるりと回ってきてからオレに飛びつくちゃん。
 かなり満足気な顔で笑える。

「・・・いいですよ?笑っても。気分の問題だもん」
 オレの幸せは、向こうから飛び込んで来てくれちゃうからね〜。
「オレって、立ってるだけで幸せが来る男だな〜って。嬉しくなってみました」
 軽く頭を下げると、ちゃんが笑った。
「幸せは捕まえないと逃げられちゃうからです!景時さんもね、捕まえないと・・・・・・」
 惜しい!逃がさないし。

「れ?・・・・・・ずるーい。読んでましたね?」
「もちろん。こうみえて、軍奉行してたしね〜。相手の戦術は読まないと!」
 ちゃんを抱き上げて、軽くキスしてから下ろす。

「もぉ〜。外だよ?」
「う〜ん。でも、誰も見てな〜いし?」
 膨らんだ頬が元に戻った。

「縁結びしたばかりですから今回のは見逃してあげます。次行こう、次!」
 あらら。そっちは逆だよ。

ちゃん。・・・・・・こっちかな。六波羅は」
 反対方向を指差してみると戻って来た。
「手!手を繋ぎましょう」
「だね〜。こっち、こっち〜」



 いつでも君の手は温かい。縁結びって、手を繋ぐのと一緒じゃないかな───






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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→現代へ

 あとがき:当時の三国って、インド、中国、日本・・・らしいです。“安井金比羅宮”の話はマジです。ピンクのお守り買いましたv     (2006.01.03サイト掲載)




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