準備は誰が? 玄関のチャイムが鳴る。 祝日の朝である。 八時半は遅い時間ではないが、休みならば早いともいえる。 が玄関へ駆け出した。 「パパ、ママ。行って来ま〜す!」 花奈は遠くから了解の返事をし、雅幸は玄関までを見送る。 「何かあったら電話しなさい。後、夕方遅れないようにね」 毎年恒例の有川家のクリスマスパーティーは、イブの前日の祝日に決まっていた。 「うん!景時さんとちゃんと遅れないように行くから」 ブーツを履きながら、答える。 「・・・景時君に挨拶でもしようかな」 雅幸が玄関へ降りようとすると─── 「駄目ーーーーーっ!朝、最初に会うのは私なのっ」 愛娘にいきなり突き飛ばされる雅幸。 が玄関を開けて、景時に挨拶をした。 「おはよう!景時さん。お待たせっv」 景時に飛びつくの後ろには、苦笑いの雅幸が立っていた。 「おはよう、ちゃん。おはようございます・・・・・・」 景時の言葉の後を紡ぐ。 「いいよ、お父さんって呼んじゃえば?ね、パパ」 振り返りながら、しっかりと現実を突きつける。 「・・・おはよう、景時君。そうだね、“お父さん”と呼んでもらっても構わないよ」 雅幸が下を向いて笑っているのを、が口を尖らせて注意する。 「パパ!偉そうに言わないの。名前がいいの?“お父さん”がいいの?それとも、“お 父様”とか?言わなきゃわかんないよ」 「ちゃん!あの・・・・・・」 景時が割り込もうとすると、雅幸に手で制された。 「では、今日からは“お父さん”でお願いしようかな?」 雅幸が景時の肩を叩いた。 「あ・・・はい。・・・・・・行って来ます、お父さん」 「パパ、行って来るね」 「いってらっしゃい」 手を繋いで出て行く二人を、雅幸は見送った。 「景時さん。あのね、私そんなに広くないお家がいいんだ。だってね、お掃除大変だし」 の言葉に景時が笑う。 「大丈夫!俺も掃除するし〜〜」 任せろと言わんばかりに胸を反らす景時。 「だけじゃなくてね。その・・・お互いが何してるか、いつもわかる距離がいいなぁって」 の耳が赤くなっているのに気づく景時。 「・・・うん。オレも・・・その方がいい・・・かな?」 景時の耳も赤くなっていた。 マンションの前に着き、管理人に話をすると、すんなり中へ通された。 「五階までは社員の方が入ってますけど、六階以上へ行けるエレベーターは別なので。 六階からは鍵が無いと上がれないエレベーターを使って下さい」 一見するとエントランスからエレベーターの場所はわからない。 「・・・パパったら。変なトコ細かいなぁ。ね?」 景時にすれば、安心この上ない。 に何かあったら大変というところで、雅幸としっかり意見が一致している。 「いいと思うなぁ〜。ほら、玄関の鍵だけじゃ心配っていうか」 ひとり頷く景時。 「・・・景時さんもだぁ!パパと気が合いそうだね?」 エレベーターが六階へ到着した音を鳴らす。 「わわ!いくつあるのかな?・・・・・・五部屋みたいだね」 ドアの数を素早く数える。 「どこでもそう変らないと思うけど、端の部屋なら日当たり良さそうだよね」 がエレベーターから一番近い部屋を開けた。 「うひゃ〜〜〜」 マンションのサイズに対して、ひとつのフロアーに部屋が五つ。 それの意味するところは、が想像するより一つの部屋が広かったという事。 「・・・明るいね。それに・・・床・・・・・・」 フロアリングである。畳はない。 景時にとっては、木の床に馴染がありつつも違った様子の部屋だった。 「決めた!ここは、皆が来た時の為にキープにしよ。パパに頼もうっと」 「は?」 は何を言っているのか?─── すぐには理解出来ない景時。 「だって。来年ね、しばらくしたら向こうへ行くでしょ?その時は、お土産持って行きたい なって思うんだ。でも、逆も出来るかもしれないでしょ〜〜?」 「・・・・・・皆に・・・来てもらうつもり?」 「そ〜だよ!」 が両手を合わせて、嬉しそうに飛び跳ねる。 「ここなら、二人ずつ泊れそうだもん。九郎さんと、弁慶さん。敦盛くんとヒノエくん。先生 は静かな方がいいだろうから一人で。朔と黒龍に、お母様と白龍も。もしかしたら白龍は 譲くんに着いて行っちゃうかもだけど。ほら、五つで丁度いい感じぃ〜」 の提案に景時が笑う。 「ちゃんはすごいなぁ〜。そう出来たら楽しそうだね。でも、オレたちは?」 「上の部屋見に行きましょう!まずはそれから」 に手を引かれて七階へ移動する。 七階は、ワンフロアーすべてで一室の造りだった。 「うっ。さらに広い・・・・・・」 「・・・・・・だね」 室内を走れそうな勢いである。 「これじゃ広すぎだよぅ・・・・・・」 がリビングに座り込む。 「確かに広すぎだけど・・・・・・」 景時が手近な部屋をいくつか見て回る。 「部屋を全部使わなくてもいいんじゃないかな?」 「景時さん、ここがいい?ううん。ここでもいいの?」 景時に手を取られ、が立ち上がった。 「ん〜?使ってるとこだけ掃除して。何でも二人ですればいいかなって。下は、九郎たち が来た時用にしたいんでしょ?」 景時に見つめられ、俯く。 「だって・・・用意しておけば・・・・・・叶う気がするんだもん・・・・・・」 さらに俯くを抱き寄せた。 「オレ、駄目とか言っていないよね?広いけど、小さく使おう。それに、ここなら皆でご飯 食べられそうだよ?作るの大変だろうけど」 二十畳はあろうリビング。仕切りを使わなければ、さらに広い。 「ほんとだ・・・・・・そうだね。ご飯どうするかまで考えてなかった!景時さん、すごぉ〜い」 「ようやく笑ってくれた」 景時がの額にキスすると、の顔が赤くなった。 「使う部屋、決めようか」 「はい!」 まずは寝室を決める。 「うひゃ〜〜。何にも無いね。収納はたくさんあるけど・・・・・・タンスは欲しいなぁ」 が音を立てながら扉を開けては確認する。 「う〜ん。便利に作られてるね〜」 の後から景時もクローゼットを見たり、家の造り自体を楽しんで見て回る。 「あのね。ここはアジアっぽくして大きなベッド欲しいんだ〜。どかな?」 「うん。お任せしちゃう。オレさ、そういうのわかんないしね〜」 困った様に頭を掻く景時に、が飛びついた。 「駄目だよ。景時さんも、こんなのがいいな〜とかないの?」 に上目遣いに見つめられ、少々居心地が悪い景時。 「あ・・・その・・・うん。オレは・・・ちゃんがいてくれればそれでいいから・・・・・・」 今度はが照れて、飛びついた時に景時に回した腕の所在に困った。 「う、うん。私もそうだけど・・・でも、景時さんのお部屋は自分で決めてね」 「そ、そうだね」 しばしの沈黙の後、各自の私室を決めて台所へ移動した。 「いや〜ん。ひろぉ〜〜い!」 ここだけは広くて嬉しいのか、がシンクで手を広げた。 「これだけ大きなシンクなら、食器たくさんでも大丈夫だよね。ガスも四つあるし。冷蔵庫 だけは贅沢して、大きいの買ってもいい?」 「ちゃんが入るくらいの大きさとか?」 冷蔵庫が箱型のものだとはわかっている景時。 「ううん。景時さんくらい!」 「ええっ?!」 驚く景時を置き去りに、お風呂を探す。 「きゃ〜んv広い、ひろ〜い」 さらにフロアーを走り回ると、ベランダまで出てみる。 「わ!ここでご飯食べてもいいかも〜。お外だ〜」 まだまだ扉を開けては探検する。 一通りみて満足してリビングへ戻ると、景時が胡座で座っていた。 「景時さん、退屈?」 隣に腰を下ろす。 「違うよ〜。ここでちゃんと暮らせるんだなぁ〜って」 「うん。また膝枕したり、おしゃべりしたり。たくさん一緒にいようね」 「御意〜〜〜」 ちゃっかりの膝に寝転がる景時。 「ちょっとだけだよ?家具とか決めにいかなきゃだから」 口では少しと言いながら、景時の頭を撫でる。 (毎日、大変だよね・・・・・・知ってるけど知らないものたくさんで・・・・・・) しばらくそのままで過ごすと、家具を購入するために横浜へ移動した。 「全部欲しぃ〜〜」 展示されている家具を見ながらが叫ぶ。 と景時が家具の品定めをしていると、店の人らしき女性に声をかけられた。 「初めまして。さん・・・ですよね?」 「えっ・・・・・・」 知らない人に名前を呼ばれてが戸惑っていると、景時は自分の背にを隠す。 「あの・・・何か?」 つい冷たい声で尋ねてしまう景時。 「ごめんなさい。いつもお父様とお仕事させていただいてる・・・田中千夏です」 名刺を差し出され、は父にもらった名刺の名前を思い出す。 「あ!インテリアコーディネーターの人・・・・・・」 「へ?」 景時がを振り返ると、はバッグから同じ名刺を取り出す。 「パパに紹介してもらった人だ・・・・・・」 「よかった!社長に話を伺っていて、たぶんここへ来るかなって。さんの写真は、社 長の机にあるので・・・・・・」 困った顔をしている千夏に、が頭を下げた。 「ごめんなさい。あの・・・ビックリしちゃって・・・・・・」 「私の方が悪いの!社長が多分さんから連絡は無いだろうけど、もしもの時はって。 私、仕事じゃないからつい力入っちゃって。パターンを描きまくっちゃって・・・・・・」 と景時は、顔を見合わせた。 「あの・・・パパって社長なんですか?それと・・・パターンって・・・・・・」 千夏は目を見開いた。 「知らない・・・の?建築系のお仕事の会社の社長さん。最近はインテリア付販売が流行 でしょ?だからデザイン部門でインテリアも請け負っていて。小さいけど、有名よ?」 今度はが驚く番だった。 (パパって・・・いくつの会社に行ってて、何しちゃってる人なのよぅ〜〜) まだまだが知らない事がありそうだ。 景時は話の途中から予想済で、あらかじめ待たれていたなと感じていた。 (ほんと。ちゃんを大切にしてるよね〜〜〜。敵は大きいなぁ) 雅幸に勝てる日が来るのだろうか? 自信はないが、希望は捨てないと決めたハズと腹に力を入れる景時。 「ここはいつも利用してて、皆知り合いなの。奥でパターン見て欲しいなぁ」 千夏に言われて、が大きく頷いた。 「あの、あの。アジアっぽい感じのお部屋にしたくって。それで・・・・・・」 「OK!それじゃスタッフルームを借りましょう。持って来てるの」 千夏の後について、“スタッフ・オンリー”と書かれたドアの向こうへ入った。 何の疑いも抱かずに、次々と出される色鉛筆で描かれたイラストを見ては溜息の。 「わ〜、これイメージ通りだぁ。こっちも素敵ぃ。でも、でも。私の部屋はコレかな〜」 幾つものパターンで描かれている部屋。間違いなく七階のあの部屋だ。 (う〜ん。しっかり行動と思考パターンまで読まれちゃってるわけね・・・・・・) 景時は、心で唸りつつ雅幸のさり気なさに感服。 「これっ!これに決ぃ〜めた!」 の決めた物は、リビングと寝室はアジア風、キッチンとのは明るい色を使った シンプルな洋風だった。 「景時さんは?これとかどうかな〜」 数枚のイラストが景時の手元に出された。 「あはは。これ、知ってる感じだね」 和風のデザインイラスト。確かに景時は、畳の部屋を選んでいた。 「・・・イラストがあるって事は、現物をどこかで見てらっしゃるって事ですよね?」 選んだイラストを千夏の前に出しながら訊ねる景時。 一瞬千夏の表情が固まったが、すぐににこやかなものに戻った。 「ええ。雑貨屋さんとか、いつも仕事させてもらってるところのカタログを見て描いたから。 ここの店頭にもディスプレイされているものもあるし。気に入ってもらえたのなら、すべて任 せてもらってもいいかな?」 「えっ?任せるって・・・・・・」 が首を傾げた。 「明日、マンションにこちらで揃えさせていただくわ。さんは、何時頃に戻る予定?」 「たぶん・・・午後には。お昼で学校終るし・・・・・・」 「そう。じゃあ、今からそれまでに全部終らせておきます!」 目を瞬かせる。 「だって・・・そんな・・・電化製品とか・・・・・・」 「イラストの感じじゃ駄目かな?」 首を横にふる。 「大丈夫。アテはあるの。それと・・・トレイとか、何色ベースがいいかな?」 「グリーンがいいです!景時さんっぽく。グレーとグリーンな落ち着いた感じ・・・・・・」 「了解。気に入らなければ何回でもチェンジ出来るから。安心してね」 目を輝かせてが景時の腕を引っ張る。 「どうしよ〜。なんかすっごい素敵なのが簡単に決まっちゃったみたい!」 「そうだね〜。得しちゃったね」 に微笑み返す。 「この後はどうしよ〜?」 思いのほか早く用事が片付いてしまい、戸惑い気味のに千夏が提案をする。 「食器とか、雑貨を見ていくのもいいかも。最近はかわいい観葉植物もたくさんあるのよ?」 「そっか!そうですよね。食器かぁ〜〜」 の頭の中では、お客様用の食器と普段の二人の食器をどうしようかと考えていた。 「それでは・・・お任せします」 「はい。頑張らせていただきます」 景時が千夏に頭を下げると、千夏も頭を下げた。 固い挨拶を交わす二人をが不思議そうに見つめる。 「ん?」 景時がに顔を向け、首を傾げる。 「何でもな〜い。よろしくお願いします」 も千夏へ頭を下げると、景時の手を引いてまた店内へ戻った。 「どうしたの?ちゃん・・・・・・」 手を引かれたままの景時が、前を歩くに声をかける。 「・・・何でもない」 手に力を入れて、を引き寄せる景時。 「何でもなくな〜い!何?オレがそんな顔させちゃった?」 景時の手が、の頬に触れた。 「・・・だって・・・・・・」 「だって?」 俯くの顔を上げさせる。 「・・・私と景時さんとじゃ、兄弟みたい?千夏さんとなら・・・お似合いかもだよ・・・・・・」 (景時さんは大人なんだもん・・・私、ひとりではしゃいで・・・子供っぽい・・・・・・) 涙が零れそうになり、目を瞑るを景時が抱き寄せた。 「大変〜〜オレが悪かったんだよね、ごめんね」 途端にが暴れ出した。 「景時さ・・・っ、ここ・・・っ、お店!」 「構わないよ。ちゃん泣かせちゃったから。どうしたらいいかな・・・・・・このままデートし ようか。オレはね〜、ちゃんとイチャイチャ出来る所に行きたいかな!」 公衆の面前で抱きしめられ驚きで涙が止まったの手を引いて景時が走り出した。 公園でベンチにを背中抱きにして座る景時。 「到着〜〜〜。天気もいいし、海も見えるね〜〜」 の肩に顔を乗せて景色を眺めた。 「・・・・・・ごめんなさい。焼もち妬いて・・・・・・」 軽く顔をの方へ動かすと、の頬に景時の唇が触れた。 「オレもね〜、ちゃんが学校で男の子たちと一緒だと思うと嫌で。大学もね、オレの知ら ない所で何かあったらどうしようって。将臣君にね、ちゃんと同じ大学行ってよって。頼ん だんだ。・・・断られたけど。そんなのわかんないって。兄弟に見えるなんて言われたら、オレ 悲しくて大変〜〜〜。もう涙が洪水な感じ?」 軽口を叩く景時に、が笑う。 「洪水になったら・・・大変ですね」 「でしょ〜?だから、そんな事言わないでね。他の人がどう思ってもいいケド。ちゃんに 言われたらオレもう駄目〜〜〜」 の肩に額をつけて首を動かす景時。 景時の髪が首に触れるたびにくすぐったいので、が首を竦めた。 「景時さん・・・・・・」 「ん〜?」 「・・・大好きだよ」 の腰に回された景時の腕に力が入った。 「オレにはちゃんしかいないんだ・・・・・・大切にしてくれる?」 あえて大切にするとは言わない景時。 「もぉ、景時さんたら!大切だよ?一番だからね。・・・早く大人になりたいなぁ・・・・・・」 コートの下はミニスカートにニット。にしてみれば精一杯のおしゃれ。 しかし、千夏は柔らかい素材のマーメイドタイプのスカートを女らしく着こなしていた。 「大人とか子供とか関係ないよ。それならオレだって、大人じゃないし。それじゃダメ?」 「景時さんは景時さんだよ!」 景時が笑う。 「ちゃんもちゃんだね」 「うん。皆にわかるようにしてればいいんだよね。手はね、離さないの。繋ごう?」 「もちろん。でも、違う事もしたいなぁ・・・・・・」 景時が海を見つめる。冬の海は少し暗い色をしていた。 「違う事って?」 が振り返る。 「ヒミツ!さて、どこへ行く?夕方までは、まだまだ時間あるしね〜」 「景時さんは、どうしてここに公園があるってわかったの?」 ようやく冷静さを取り戻したが、景時に連れられてきたという事実を思い出す。 「ああ、それは駅の地図。あれチラッとみたから」 「チラッとぉ〜?!そんなんでわかっちゃうの?」 が立ち上がって景時を見下ろした。 「ん〜?そりゃ、これでも軍奉行していたし。地図とか地形はね、すぐ頭に入るよ〜」 立っているを抱きしめる景時。 なかなかいい高さで、つい腕に力が入る。顔はしっかりの胸の位置。 「・・・景時さん・・・・・・」 気づいたから、やや低めの声。 「ん〜?白いコートもふわふわ。ちゃんもふわふわ〜〜ってね!」 の小言が出る前に立ち上がり、手を繋いで歩き出す景時。 「どこへ行こうか〜?そろそろお昼食べようよ」 「もぉ〜〜!誤魔化してぇ〜〜」 早歩きで隣に追いつく。 「誤魔化してないよ〜。今日はデートして、明日は部屋を見て足りない物を買って。早く二人 で暮らしたいな〜〜って」 「うん!お昼は・・・イタリアンにしよ?パスタ食べたい!」 「御意〜〜〜、姫君」 のんびりとレストランがある建物を目指して歩いた。 ランチを食べ、それなりに欲しいモノも見定めた二人。 食器やリネン周りの物は、しっかり明日届く予定にしてもらった。 「後は〜、何かな?」 が景時を見上げる 「何だろうね?」 悪戯っぽく景時が笑う。 「なぁ〜にぃ〜?その笑い方・・・何か隠してる!」 「隠してないよ〜〜〜。そろそろ帰らないとね」 景時に言われて、腕時計を見る。 「大変だ〜。家に帰ってからじゃないと・・・・・・」 「帰ろう。パーティーなんだよね?将臣君に教えてもらった」 手を繋いで駅を目指す二人。 「うん!すっごいご馳走だよ、きっと。景時さん、またまた初めてのものかも」 「そっか〜、ご馳走ね。何だか想像もつかないよ」 そのまま電車に乗り、家へ帰った。 「ただいま〜。景時さん、リビングで待ってて!」 景時の返事も聞かずに二階へ上がる。 奥から雅幸が出てきた。 「おや、おや。は落ち着きがないなぁ。景時君、どうぞ」 「お邪魔します・・・・・・」 スリッパまで出されてしまい、上がらないわけにはいかなくなった。 「景時君、田中さんから電話がきたよ。明日はいじめないようにね?」 途端に景時が赤くなった。 「その・・・あまりに準備が・・・それで・・・・・・」 マンションの間取り通りのイラストなのだから、疑念も湧く。 「うん。すまないね。に選ばせようとは思ってるんだが・・・・・・世間知らずでね」 花奈がお茶を用意して来た。 「なあに?男同士で内緒話して。景時君、お疲れ様。の相手は疲れたでしょう?」 お茶を出されて、軽くお辞儀をする景時。 「そんな事ないです・・・色々買い物して、楽しかったです」 「それならいいんだけど」 雅幸の前にもお茶を置くと、花奈は台所へ戻った。 「家の方は、明日にはすべて揃っていると思うよ。他に足したい物があれば田中さんに言え ば用意してくれるから。小さな物までは用意出来ないからね」 「は、はい。オレも・・・よくわからなくて」 景時が畏まっている所へが戻ってきた。 「パパっ!景時さんをいじめちゃダメだってば!」 景時を押しのけ、雅幸と景時の間に割り込む。 「ちゃん?!オレ、別にいじめられてとかないし・・・・・・」 「へっ?そうなの?」 割り込んだ勢いで景時の膝の上に座る。 「うん。明日、全部そろうといいねって話をね・・・・・・」 が真っ赤になった。 「やっ、その・・・パパも、ちゃんと言ってよぅ」 「・・・・・・何も言う暇がなかったけどね?それより、景時君が重いだろう」 景時の上に座っている事に気づいた。 「ひゃっ!・・・・・・重くないもん」 そのまま景時にしがみ付く。 「大きな赤ちゃんで大変だねぇ?そろそろ有川家へ行くとしようか」 雅幸は立ち上がると、の頭を軽く叩いてコートを取りにリビングを出て行った。 「・・・・・・重い?」 重いと言われて、少しばかりショックの。 「ぜ〜んぜん重くないよ?空気みたいに軽〜いよ?」 景時の腕がを捕まえる。 「・・・・・・それはいかにも嘘っぽいよ」 が景時の鼻をつまむと、立ち上がる。 「そろそろ行こう?パパとママは後から来るよ」 は台所の花奈と廊下から雅幸へ声をかけると玄関へ向かう。 「荷物・・・持とうか?」 小さな紙袋を持っているに手を差し出す景時。 「これはね、私が持たないとダメなの。軽いから平気だよ。行こ〜〜」 と景時は手を繋いで有川家までの道を歩く。 今夜のパーティーの主役は誰? 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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→現代へ
あとがき:主役は、望美ちゃんでしょうねぇ(笑) (2005.6.19サイト掲載)