誓い  ≪景時side≫





 血判状なんて恐ろしい響きのモノではなくて。
 目標なんていう短期的なモノでもない。
 壇ノ浦で一生を賭けたオレとしては、思い起こせばあれほど緊張した
ことはなかった。
 鎌倉での方が状況は不利だったかもしれない。
 でも、気持ちが。覚悟が決まっている人間というモノは、何かが違う。
 君と約束したからね。
 あれは・・・誓いだったから。


「・・・あ〜らら。置いていかれちゃったな」
 君が駆け出した理由もわかっている。
 毎日言葉にしてもらっているのも。
 君が好きだという理由で覚えた歌だけれど、オレの知らない異国の言葉
の方が、的確にオレの心情を表していたように思う。



 『単純に訳すと“ずっと好き”っていうだけなんだけどな。この“LOVE”
  を使う時は、軽い告白の時の“LIKE”とは比べ物にならん深い気持ち
  なワケよ』
 『ふうん?でも、両方とも“好き”という意味・・・なんだよね?』
 『・・・恥を覚悟で文字通りではなく訳すと、言いたくない内容になる。
  説明不可。無理。黙秘権発動。流れで覚えて歌え!歌うべし』
 『ええっ!?それ聞かなきゃ全然わかんないよ!!!』


 将臣君に歌詞と歌意を書いてもらった時を思い出すなぁ。
 あの将臣君でも困る言葉なんて。
 いや、将臣君だからかな。
 約束の言葉の重みを知る彼だからこそ、口にしたくなかったんだろう。
 とはいえ、俺だって意味も知らずにちゃんに歌って聞かせられるモノ
でもない。
 紙と筆を手に追いかけまわして、ようやく意味を教えてもらえたっけ。


 『ちっ。面倒な事引き受けちまったな。いいか。この“faith”がポイン
  トで、いわゆる“誓い”になる。一度しか言わないから覚えろ。特別
  に景時っポイ感じで言ってやる』


 ─── 毎日、君に恋しています。
       いつでも、いつまでも恋しています。
       君も同じ気持ちでいてくれる?

       運命が出会わせてくれた二人だから。
       初めて会った時の気持ちを覚えていてくれる?

       永遠にね。君も誓って同じままでいてくれるよね ───


 真っ赤になっている将臣君なんて滅多に見られないだろうけれど。
 意味を知って放心していたオレは、そんな珍しい彼をからかうでなく、
あっさりその状況を流してしまっていた。


 絶対に覚える。そして、君に伝える!!!


 どう伝わるかは知らない。
 でも、オレが勝手に、一方的に伝えたかった。
 だから、必死に覚えたんだ。



「・・・まさか伝わっていたなんて。参るよな、ホント」
 まだ沙羅が君のお腹にいたんだっけね。
 喜んでくれるから歌っている風に誤魔化していたのに。

「うわ〜、やばい。オレが真っ赤だよ!!!」
 どんな顔をしているのか、自分じゃわからない。
 わからないけど、顔だけ熱けりゃわかるって。

 大きくひとつ深呼吸。よしっ!

「今日もただいまは言ったし。お昼寝している隣にいてもいいよね?」
 沙羅はうとうと程度だったから。
 すぐに起きちゃうね。



 今日も君に気持ちを告げるよ?



 言いたりないなんて、困ったもんだよ。
 君もそうだといいな。



 足取りも軽やかに、君のところへ向かう。
 今日はオレが君の隣でもいいかな?
 沙羅に許可をもらってないけど、いいよね。



 今日はお昼寝日和〜っと!決まりっ。










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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!

 あとがき:隠していたつもりが、望美ちゃんは元々歌詞を知っているんだから・・・みたいな(笑)     (2009.07.16サイト掲載)




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