照れ隠し ≪望美side≫ うっかり尋ねちゃった。 もしかしたらが、やっぱりになる。 本当は最初から気づいていたのかもしれない。 あの歌を貴方が覚えて、歌って聞かせてくれた時に。 「朔。あのね、お昼寝したいの」 「え?ええ。どこがいいかしら」 源太くんは今頃お母様がみてくれているだろうから。 「この部屋で転がりたいな」 「そうね。すぐに用意させるわ」 朔が一足先にいつもの遊び部屋へ入って。 私は一瞬だけ庭を振り返る。 景時さんが真っ赤になってる! 私だって、負けないくらいに耳が熱い。 思わず逃げちゃったけど、赤いって事は、景時さんも同じ気持ち。 毎日、好きって言いまくっているけど、それとこれとは・・・別。 別なの!!! 「?」 「えっ?あっ、ありがと。少し横になるね」 朔に呼ばれて用意された褥にコロン。 沙羅ちゃんもうとうと、ごろごろ、いい感じ。 「起きたらおやつかな?」 「そうね。今日はクッキーを焼いていたわ」 「・・・すごい!沙羅ちゃん、正解!今日、クッキー食べたいって 言ってたの」 朔もビックリ顔で沙羅を覗きこんでいて。 「におい・・・ではなくて、周期で覚えているのかしら。この前も おやつを当てたのよ?マドレーヌ」 「景時さんに似たんだね!」 自然に周囲を観察して判断してるのかな。 だったらスゴイ。ほんとに景時さんみたい。 嬉しくなって沙羅ちゃんの手にそっと触れて寝顔を眺めた。 「兄上?今日もお早いのですね」 「そ!皆がオレを追い出すから、自然にね。・・・眠ってるね」 「ええ。ようやく源太君が朝と夜を覚えたみたいですし・・・・・・ も少し昼寝をすれば、何とか午後も動けるようになりましたわ」 遠くで声がする。 あ、そうか。 私はまた眠ってるんだ。 景時さんと朔の声が、すっごく遠くに聞こえる。 でも、この温かさは、景時さんが傍にいる証拠。 「散歩がいいんじゃない?昼は外で明るい、夜は中で暗いみたいなの を、感覚から覚えるんだろうから」 「・・・そうなのよね。それで源太君も割と早く落ち着いてくれたの はいいけれど。はじっとしているのが苦手みたい」 え〜っと? いつも朔に安静にとか言われてるけど、実は諦めていたとか? 「内緒で外に出るような事が無ければいいよ。まだ本調子にはかなり 遠いと思うし」 わわわっ!景時さんの手!頭を撫でてくれてる! 私の背中側にいるって事? 「こっそり外出なんて無いですわ。必ず何でも相談してくれますもの」 「朔にはね。オレを驚かせたいっていうなら、せめて朔が知っていて くれるならいいよ。・・・いつだったかみたいに、九郎に大目玉じゃ 可哀想だ」 あ〜、あったわ。足がしびれる程の長時間のお説教。 九郎さんは、こう・・・融通がきかないのよね。 「もひとりきりでは出かけません。あの時は、お願いをしたのが リズ先生でしたから、少し間が悪かっただけで」 「・・・九郎を試してた気がするんだよな〜、あの一件は。とばっち りだったんじゃないかとか。相手がリズ先生だからね〜。ま、いいや。 オレも少しだけ休ませてもらお〜っと」 「静かにしていて下さいね。いつも一刻くらいで目覚めますから」 「ん。任せて」 朔の足音だけが遠くに消えて。 沙羅ちゃんの寝息は変わらず聞こえていて。 景時さんはといえば、ちっとも眠っていない感じ。 髪に触れられているのが何となくわかる。 「・・・恋文はイマイチだったけどさ。あの歌は合格点だったよね?」 ぽつりと漏れた一言が、妙に耳に残って。 景時さんの言葉で書いてくれた恋文に、不合格なんてないのに。 そりゃあ、歌集に載るような素晴らしく技巧に富んだお歌と共に文 をいただいたことなんてないけど。 そんな夢物語より、現実の方が嬉しいんだよ? 「またしばらくはママさんだけが大忙しで。・・・ごめんね?」 私だけって事はないと思うんだけどな。 普通よりかなりサボっている部類じゃないかと思うし。 でも、こっちの世界で武家の基準だと違うのかな? お母さんがひとりで全部じゃないのだけはわかる。 私じゃなきゃっていうのは、源太くんのご飯ぐらい。 何でも助けてもらってばかりで、楽々だよ? 「どうしてか君には全部バレちゃうんだよね〜」 バレる・・・というより、それだけ見てるから、“わかる”んです。 朔がいたら、ツッコミしてくれたかな? 背中に景時さんの気配を感じながら意識が遠のく。 起きたらみんなでクッキーを食べましょうね。 沙羅ちゃんが大好きな、お花の形だといいな。 源太くんもおやつが食べられるようになったら。 もっと大忙しで楽しくなりますよ! |
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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!
あとがき:ちょ〜優しい旦那様ですよ、景時くん☆でも、ゲーム中でも歌(和歌)は微妙な扱い。 (2009.07.17サイト掲載)