育児  ≪景時side≫





 オレに出来る事なんて、高が知れてるんだけど。
 早起きしてしまった沙羅の相手くらいは出来るし。
 九郎は日課らしく、朝から庭で鍛錬してるし。
 沙羅を抱えて素振りをしている九郎を眺めてるわけで。

「何もそんなに頑張らなくたって・・・ねぇ?」
 朝餉を食べてから守護邸へ帰るって言ってくれたからさ。
 それはいいんだけど、この状態は沙羅に期待をさせちゃってないか?
 九郎は仕事だから、ご飯の後に遊んではくれないぞ?
 胡坐の上にいる愛娘は、木刀がなくても九郎の真似をして手を振っている。

「九郎〜〜〜。まだするの?」
 出来る事なら、少しでいいから沙羅と遊んで欲しいなぁ・・・なんて。

「ああ。あと百回は素振りをしたい。沙羅も頑張っているしな」
「これは・・・かな。真似が好きだから」
 まったくあっていなくとも、ちゃんが洗濯物をたたんでいれば、そのような。
 朔が舞の練習をしているなら、そのような。
 なんとなく似た感じの動きはしてる。
 ・・・変な動き、出来ないな。

 ひゅんひゅんと風を切る音を聞きながら、しばし休憩。

 源太は起きたかな。
 ちゃんも、まだまだ動けないだろうし。
 つらつらと沙羅が生まれた時の事なんて思い出してみたり。
 とにかくよく寝てたなぁ。
 源太はどうだろうか。比べるものでもないけど。

「ちゃ!」
「ああ。もう終わりだ。もう少し待っててくれるか?」
 九郎が沙羅の頭を撫でると、わかってるのか大人しくなった。
 ちょっとだけ複雑。
「景時。は起きられないだろう。俺が沙羅にご飯を食べさせる」
「あ・・・うん。ありがとう。沙羅も九郎と遊びたいみたいだし」
 九郎が話しながら支度を整えるのを目で追ってるもんな。
 ほんとに複雑。
「ほら。今日は沙羅の母上は休んでいないといけないからな。朝だけ俺で我慢しろ」
 九郎に抱き上げられて、大満足の笑顔だよ。
 大いに複雑な気持ちなんですが。
 ここはお任せしてしまおう!

「じゃ、お願いしていい?朔か母上がいるから。オレ、ちゃんのとこ行ってくる」
「大丈夫だ。弁慶も散歩から帰ってくる頃だろうから」
 そういや居なかったな。
「・・・散歩?」
「ああ。朝一番に摘むのがいい薬草があるらしくてな」
「ふうん。ま!弁慶なら心配ないかな。じゃ、よろしく〜」
 仲間になら預けられる。
 みんながオレの家族を大切に思ってくれてるのは、十分に伝わってるからね。





ちゃんは起きたかな・・・・・・」
 泣き声がしないから、源太はまだ夢の中。
 静かに、静かに部屋へ入れば、源太と並んで眠る君がいる。
 
「・・・だよなぁ。もう、オレの支え無しでも立てるし、座れるかぁ」
 源太が生まれたのだと実感。
 少しだけ惜しい気もする。
 なんとなく枕上に座り、君の額に触れてみた。

「ん・・・き・・・さん?」
「ご、ごめん。起こしちゃった?」
 しまった!つい君に触れたくて───

「・・・じょ・・・ぶ。ごは・・・ん・・・とで」
「うん。沙羅も大丈夫だから。もう少し眠るといいよ?」
 しっかり者の妹君がそろそろ来るだろうし。

 ・・・ご飯。
 源太のご飯は・・・だよなぁ。
 朝から不埒な事を考えてしまった。


「先に食べてきちゃうから、待ってて」
 可愛い額へ約束のシルシにキスをひとつ。

 さ〜て。そろそろ九郎が音を上げてるかな?
 沙羅のお守りの方が、いい鍛錬になるよなぁ。
 後で教えてあげよう!
 沙羅はちゃんに似て、剣術が好きかもしれないし。
 そうなったら、それはソレ。
 師匠がたくさんいて頼もしいね〜。
 自分のことを考えるより楽しいなって言ったら、君は笑うかな?

「ははっ。さっさとご飯を食べないと、朔が呼びに来そうだ」
 沙羅も源太も自由にやりたいことをすればいい。
 オレはちゃんに逢って、ようやくそれが出来た。
 君たちにとっては彼女はママだからね。
 怖いものないでしょ。

「と、いうわけで。勝手に抱っこしよう。うん」
 ちゃんに呼ばれなくても、抱っこをしてしまおうと決めた。










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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!

 あとがき:パパは色々なこと考えてます。時に妄想も(笑)     (2008.11.7サイト掲載)




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