家族  ≪望美side≫





 やっぱりすぐに起きているというのは無理で。
 でも、ひとりで寝ているのは仲間はずれみたいだから嫌で。
 ちょっとだけ無理して。
 ちょっとだけ我がまま言って。
 南の部屋で沙羅ちゃんを眺めつつ、源太くんを抱っこしつつ。
 まだ顔らしい顔ではないけれど、なんとなく景時さんに
似ているような予感がしてドキドキ。

 景時さんに抱っこしてもらって。
 温かくて、安心できて。
 九郎さんもここではリラックスできるのか寝てしまって。
 そんなまったり空気の中にいたら眠ってた。



 夢で会った源太くんは、ちび景時さんで。
 可愛くて抱き締めたいのに、するりと逃げてしまう。

 どうして?

 考えてみれば、あれって源太くんなのかな?
 もしかして・・・景時さんなんじゃ・・・・・・。
 夢って都合がよくて、自分なのかわからないけど自分視点で
小さな景時さんを追いかける。


 待って?私の事、わからない?


 何となく確信。
 彼は・・・景時さんだ。
 絶対に捕まえてぎゅってしなきゃいけない。
 そう考えてからの私の視界はみるみる流れて。
 すっごく必死に走ってるのがわかる。


 待ってなんてもう言わない。
 貴方のことだから、待ってなんてくれないもの。
 いつだって私が追いかけなきゃいけなかったもの。
 絶対に追いついてみせる!


 小さな背中まであと少し。
 もう手を伸ばせば届く。
 転びそうになった彼を、転ぶ前に捕まえて思い切り抱き締めた。



 すぐにまた逢えるからね───



 一番大切な言葉を伝えられた。
 彼の姿は消えて、小さな源太くんになっていた。
 抱っこしている腕の重みが妙にリアルで。
 思い切って目蓋を開けば、ちょうど朔が私から源太くんを
抱き上げようとしていた。


「起こしてしまったかしら?」
「ううん。違うの。源太くんがね、夢を見せてくれたの。とっても
とっても大切なチャンスをくれたんだ〜」
 朔の手が源太くんを抱き上げた。
 ちょっと腕が痺れてきていたからよかった。
 振り返ると、景時さんが微笑んでくれた。



「ごめんね?ちゃんが重いかなって思ったんだ」
「私、源太くんを抱っこしたまま寝ちゃったんですね。ごめんなさい」
 まだ産まれたばかりで、首も据わっていないのに。
 皆を困らせちゃったかな。

「心配かけてごめんなさい」
「そんなことはないよ?やっぱり、母親といるのが一番だろうからさ」
 景時さんは眠くないのかな?
 さっきの・・・景時さんも夢見ていたんじゃないのかな?
 うぅ。気になる。


 
「・・・重いですか?」
「何が?」
 だって、ずぅ〜っと私を抱っこしたままだし。
 寄りかかりきりで、ぐうぐう寝ちゃったし。
 重かったよね?

 なんとなくまだ頭がちゃんと動いていなくて、言葉が繋がらない。
 そんなのもわかっちゃうみたい。


ちゃんと源太のことなら・・・重くなんてないよ?命の重みは
重くても、それとは別だから。鼓動とか温もりって安心する方が大きいよ」
 苦しくないようにふわりと抱き締められているままで。
 それが景時さんの距離の取り方なんだって、わかった。
 優しい、優しい景時さんだから。
 離れたら不安に思うの、知られてるみたい。
 


「何だか・・・まだ眠いです・・・・・・」
「いいよ、ずっとこうしてるから。・・・つらくない?」
「・・・ん」
 景時さんが何か言ってくれたのに、聞き取れなくて。
 すとんって落ちるように眠ってしまった。
 何だか眠ってばかり。頭の中に霞がかかって───







 『は寝てしまったの?』
 『うん。無理しても起きていたかったみたいなんだよね』
 『はぁ〜〜〜っ。兄上が頼りないから』
 『・・・やっぱり?』


 違う。違うの。
 景時さんがいるから安心なんだよ?


 『冗談よ。みんなといたかったのでしょう』
 『かな。夕餉の支度は大丈夫?』
 『ええ。譲殿が来て下さったから。が好きなモノを作るって』
 『へ〜〜。何だろ?楽しみだなぁ』
 『・・・兄上にではなく、にですから』


 うぷぷ。朔ったら。
 それにしても、譲くんのお料理!
 楽しみだなぁ。デザートが豪華だともっと嬉しい。
 ・・・まただ。また食いしん坊だよ、私。


 『九郎と沙羅、大丈夫?』
 『ええ。よくお休みですわ。九郎殿を休ませたかったみたいですわね』
 『弁慶だからね〜。言っても聞かない九郎には・・・ってトコじゃない?』
 『何か心配事でも?』
 『いや?本人はこっそりしているつもりらしいんだけど。歌をね』


 九郎さんが歌のお勉強を?!
 うわ〜〜〜。どうしちゃったんだろ。
 私も何かはじめないといけないかなぁ。
 お習字、最近してないな。


 『・・・すまない。沙羅が・・・・・・』
 『お目覚めですか?・・・やだ、沙羅ちゃん。ごめんなさい、今、着替えを』

 
 朔が部屋から出て行く音がして。
 景時さんの笑い声もする。
 沙羅ちゃんたら、何をしちゃったのかしら?
 着替え・・・・・・まさかっ!


 『あらら。沙羅ちゃんはご機嫌だ〜〜〜』


 沙羅・・・しでかしたのね?
 お姉さんになったなんて思っていたら、大間違い。
 

 『とりあえず、沙羅を捕まえててくれる?被害が広がらないようにさ』
 『・・・わかった。沙羅、少しの間だけ冷たいのを我慢しろよ?』


 やっぱり。やっぱりオネショなのね!!!


 『九郎殿。申し訳ござませんでした。こちらに着替えがあるので、隣で
 着替えて下さいな。黒龍、任せるわね』
 『わかった。九郎、こっちだ』
 『すまない』


 九郎さんって、ほんとうに礼儀正しいなぁ。
 でも、子供のオネショは叱れないしね。ありがと。


 『沙羅ちゃんもお着替えよ〜』
 『きゃ!』


 ・・・ここで起きなきゃお母さん失格じゃない?
 がんばらなきゃ───



ちゃんは・・・もう少し寝ていようね?夕餉には起こすから」
 景時さんが大きな手で頭を撫でてくれるから。
 起きられそうだったのに、またまた寝てしまった。
 気持ちいいからもう少しこのままでいいやって思った。
 


 起きたら・・夢の話をしてみよ〜っと。










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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!

 あとがき:おねしょネタを使いたかっただけ〜♪     (2008.05.04サイト掲載)




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