賑やかな時間  ≪景時side≫





 源太が無事に産まれて。ちゃんも無事で嬉しくて。
 仲間に報告にいけば休みをくれて。
 なにもかもが特別な日になった。
 そんなオレの中での特別感を知ってか、知らずか。
 沙羅がいつもの倍は動くし、言葉を発する。
 急に成長してみえてしまうのは、いわゆる親バカってやつなのかな。

「あ〜〜〜〜〜〜。きゃ!」
「こら、こら。そんなに暴れたら!」
 南の部屋で大暴れ。
 四足での疾走とでもいうのか、逃げ足が速いというか。
 こんなに全身で動いてたら、疲れちゃうよ〜と思っていたら、まんまと疲れて
眠ってしまった。



「今日はちゃんがいるからいいけどね〜。・・・向こうへ行くか」
 眠ってしまった沙羅の着替えも済んで、ちゃんたちがいる部屋へ向かう。
 沙羅もそれがわかっている前提でオレと遊んでいるのだろう。
 だからちっとも泣かないし愚図らない。

 一日がかりの大仕事で源太を産んでくれたんだ。
 まだ眠っているだろうけれど、君の顔が見たかった。





「あ。起きたんだ〜。大丈夫?」
 オレの大好きな瞳がオレを見上げた。
 小さな返事だったけど、つらいからではなさそうだ。
 それにしたって───



 オレ、何かした?!
 そんなに見つめられると、動けなくなる。
 意識が遠退きそうになるオレに、とんでもない質問が。



 言い訳するほどのことじゃないけれど、オレは家族を増やせない事情があった。
 こんなオレを必要としてくれる人がいるなんて想像もできなくて。
 だけど、あの日、庭で会った君とだけは、もっと話しをしたいと思って。
 本当はなけなしの勇気を振り絞っての引き止めの言葉。
 君は・・・気づいてた?


「景時さん!抱っこして下さい」


 大好きな君が、大好きな声でオレの名を呼んでくれる。
 君の願いは、むしろオレがあたたかい気持ちになるものばかり。
 抱っこだなんて、嬉しいのオレの方でしょ!


ちゃん似なら安心だ・・・・・・」
 
 こんな臆病なオレじゃなくて。
 真っ直ぐで眩しい君に似てくれたなら。
 それはとても嬉しいことだ。



 南の部屋へ行きたいと強請られ、少しだけ心配になる。
 寒がりの君が寒くないよう。
 いつまでも君の一番でいたいオレが寂しくならないよう、ぐるぐる抱っこを提案。
 そうしてそれを実際にしているわけですよ、今。

「ま〜〜〜!」
「うふふ。巻き巻きあったかなんだよ?沙羅ちゃん、今日は追いかけこっは無理だからね?」
 巻き巻きのちゃんの膝の上を横断する沙羅。
 確かにちゃんは動けないだろう。
 沙羅はそれを知っていて、上っては下りてをしている。
 だってさ、ちゃんが源太を抱いているんだから。
 弟が気になっているんだろうな。

「沙羅!父上の背中があいてるぞ〜〜〜」
「きゃ〜〜!」
 無理に上ろうとするんだけど、それこそが狙いだったりする。
 どうしたって立たなくてはならないから。
 沙羅が妙な立ち方をするのが可愛くて仕方なかったり。



「・・・兄上。今日はを支えているのですから、沙羅ちゃんを煽らないで」
 朔が沙羅を抱いてオレの背中から引き剥がしてしまった。



「沙羅ちゃん。ごろんごろん出来るようになったでしょう?」
「あい。ごろ〜〜〜〜」
 ただ横に転がるだけなんだけど、いまひとつすんなりと転がらないところがまたまた可笑しくて。
 家に来たばかりの九郎のツボを刺激したらしい。



「クッ・・・沙羅・・・・・・その格好は少し・・・・・・・・・・・・」
 片足を上げて、勢いつけては転がるんだ。
 笑いたい気持ちはわかる。その足が妙に可笑しいから。

「く〜〜〜!そぼ?」
「ああ。わかった。ぴょんぴょんか?」
 九郎が沙羅の手をとれば、沙羅はその場で跳ねだす。
 何だか通じ合ってるなぁ。



「九郎さん、いらっしゃい。それと、ありがとう。景時さんが居てくれるの嬉しい」
「い、いや。その・・・起きていて大丈夫か?」
 沙羅と遊びながらもちゃんを気遣ってくれて。

「うん。景時さんに支えてもらえるから起きていられるの。後で源太くんも見てくださいね?」
「あ、ああ。祝いに来たのだが・・・捕まってしまった」
 弁慶が九郎を寄越してくれたのだろうに。
 まんまと沙羅に捕まっちゃって。
 もう手を離してもらえないからね〜。
 だって、沙羅はその遊びが好きなんだから。


「悪いね〜、九郎。おかげで沙羅が退屈しないで済みそう。弁慶も夕餉の頃には来られる感じ?」
「ああ。俺がいる方が効率が悪いといって追い出された。先に源太を見ようと思ってきたのだが」
 源太のお祝いに来て沙羅に捕まるあたり、その要領の悪さがいかにも九郎らしい。
 本当は、沙羅を心配してたんだろうに。
 家には朔もいるから、案外大丈夫だとは思ってるんだけど。
 そこはオレがそう思うだけで、沙羅に確認できるものでなし。


「く〜。ち!あれ」
 どうやらオレとちゃんの真似をしたいらしい。
 らしいんだが!


「まだ沙羅ちゃんは小さいからなぁ。片膝になっちゃうね」
 九郎の片膝で十分な大きさの愛娘は、同じ様に巻き巻きになれて満足なのか笑っている。
「ああ。だがこの方が表情もみられていいだろう。沙羅はいい子だな」
 今日は暴れすぎて疲れ気味なのだろう。
 おやつを前に、半分眠ってしまっている。


「九郎さん、ごめんなさい。着物・・・・・・」
「構わない。静かにした方が眠りそうだぞ」
 沙羅が手に持っているのは、今日のおやつ。
 握り締めたまま、ウトウトと首を揺らしているのが微笑ましい。
 朔が気を利かせて、九郎の着物が汚れないよう布を広げてかけて。
 ちょうど手にしていたドーナツが落ちた。



「・・・ぷぷっ。ダメだ〜、笑いたい」
「もう!景時さん、しぃ〜〜っ。沙羅ちゃんが起きちゃう」
 ちゃんの手がオレに触れてくれる。
 注意されているのに嬉しいって何だろう。

「大丈夫だ。よほど嬉しかったのだろうな、沙羅も。弟の誕生が」
「一応は人数が増えたと思ってるみたいではあるんですよね」
 まだ僅かな時しか過ごしていないのに、確かに人見知りをしていないわけで。



「俺も休みたくなってきた」
「あ。いいですよ。このお部屋は暖かいし、静かにごろんってして下さいね」
 ちゃんに言われると、何故か九郎も素直で。
 沙羅を上手に抱え直して横になる。
 あれっていつもオレがしてる姿勢だよなぁ。


「景時さん、怒らないの?」
「へ?どうして?」
「だって、沙羅ちゃんと九郎さん、ラブラブ〜に見えません?」
 ・・・待て。確かに見えなくもない。
 けど、この部屋だと見えない。
 ん〜〜〜?


「特別に許可!沙羅が何か夢見てるみたいだから、起こしたらかわいそうだ」
「うふふ。パパにはご褒美」
 君の唇が頬に触れる。
 嬉しいけど───


「こっちにして?」
 試しに自分の唇を指差してみる。


「今度はパパからして下さい。ママにご褒美」
「御意〜」
 軽く触れ合わせても伝わるモノがある。
 子供たちが目覚めて賑やかになる前に。





 家に仲間が集うのが嬉しいよ。賑やかなの、夢だったから。










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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!

 あとがき:のほほん、のほほん。     (2008.03.31サイト掲載)




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