やっぱり団子  ≪望美side≫





 花よりなんとか・・・ってうけど。
 我が家は見事に団子なんだわ〜〜〜。
 どうしてって、沙羅ちゃんももぐもぐ。
 私ももぐもぐ。
 源太くんももぐもぐ。
 なんていうか、もう、食事が優先な家族で。
 朔にせっせとお世話してもらって。
 ぐうたらな嫁でごめんなさいって感じ。
 でも、食べたら眠くなっちゃうの。
 まだお昼前なのに三人ともお腹いっぱいになったら寝ちゃいました。



「ただいま」
「あら、兄上。お休みをいただけましたの?それに、ずいぶん静かに
ご帰宅ですのね?」
 
 う・・・ん。景時さんの声。

「九郎がちゃんへのお祝いがわりって、オレに休みくれたんだ。
嬉しいよね。源太が寝てるかな〜って、一応静かにね!」
「・・・まあ」
「九郎がさ、沙羅が退屈だろうから、オレが居た方がいいって」
「九郎殿が?」

 沙羅?沙羅ちゃんのこと、九郎さんが?

「そうですわね。毎日と一緒だったのに、源太君がいますものね」
「うん。大丈夫。沙羅は賢いし、ちゃんとわかってくれるよ。ね、朔。
オレも並んで寝たいな〜〜〜。沙羅の隣側」

 景時さんも?
 うふふ。私の隣に源太くん。その隣に沙羅ちゃん。
 そのお隣に景時さんってこと?

「今何か被るものを持ってきますわ。お静かに」
「ありがと。沙羅・・・ちょっとだけお隣に入れてね〜〜〜」

 眠っている沙羅に断わりを入れて横になったんだろうな。
 それがなんだか景時さんらしくて。
 またまた安心して、今度はしっかり眠ってしまった。







「沙羅。静かにな。向こうの部屋で遊ぼうか?」

 景時さんの声はするのに、沙羅ちゃんの声がしない。
 あれれ?

「ん〜。ここがイイ?起こしちゃダメなんだぞ〜〜〜」
「あい」

 沙羅ちゃんが!
 お姉さんになってる!!!

「源太、可愛いだろう?沙羅の弟なんだよ」
「んぅ・・・ちゃ!」
「こら!しぃ〜って約束したばかりだよ」

 景時さんが沙羅に言い聞かせているのが可笑しくて。



「兄上。南の部屋の用意が出来ましたわよ」
「そ?でもさ、沙羅はここがいいみたい。いつかと同じで、ちゃん人形も
効き目がないと思うんだよね〜。ここにいるのわかってるだろうから」

 いつかって・・・あ。私がお買い物に行っちゃった時だ。
 沙羅ちゃんたら、いつもそんな素振りみせなかったのに。
 大泣きしてたんだっけ・・・・・・。

「沙羅ちゃん。大声出したらだめなのよ?源太君はまだ小さくて、たくさん眠らないと
いけないのだから。沙羅ちゃんは追いかけっこが好きでしょう?」

 朔までしっかり沙羅に言い聞かせていて。
 なんだか沙羅ちゃんが急にしっかりさんになっちゃったのかしら?

「や!こぉ〜〜〜」
「う〜ん。抱っこかな?沙羅。今日は父上はお仕事がお休みなんだ〜。遊ぼうよ?」

 また静かになっちゃった。
 沙羅ちゃん・・・大丈夫かしら?

「きゃ!ち〜〜〜」
「だよね〜。向こうで遊ぼう!」
 
 足音が遠ざかって。
 景時さんたら、沙羅ちゃんを上手くのせちゃって。
 今頃、南のお部屋で大騒ぎだよ。
 沙羅ちゃんのテンション上がっちゃって大変だろうなぁ。
 お昼寝は楽そうだけど。



 静かになった産屋で、源太くんの寝息と朔が何か片付けたりしている音がしていて。
 今日はお天気いいんだなぁ〜って、なんとなくお日様の気配を感じて。
 次に起きたのは源太くんの泣き声で。



。大丈夫?」
「うん。ありがと・・・何だかすっごく気分が良くて眠いだけなんだ〜」
 起こしてもらって、源太くんを抱っこして。
 まだふにふにしてるんだけど、温かくて。

「朔。・・・その・・・ありがとう。私の・・・恋の応援してくれて。家族になれちゃった」
 大原で約束してくれた。
 私の恋の応援をしてくれるって。
 まさか、家族中でお世話になるとは考えていなかったけれど。

「なあに?改まって。ただ・・・が兄上を・・・って、とても驚いたけれど。応援すると
言ってしまった手前、応援するしかないのよねぇって」
 ん?私の中で何かが繋がらないんですけど。
 そんなに溜息交じりで言われちゃうの?

「兄上ったら、後できいたらに声をかけたんですって?しかも、かなり後ろ向きな
声のかけかたで。待っててって言って、待っててくれたら・・・だなんて。まあ、あの兄上に
しては上出来といえばそうなんだけれど」
 朔が私がおしめを替えやすい様に手伝ってくれて。
 それでいて、何か大切な事を言ってる気がする。



「ええっ?!南のお庭の時の話?結界を解いてもらおうとした時の・・・・・・」
「ええ、そうよ。可愛い子がいたから勝負したつもりなんですって。待っててくれたら脈が
あるかもしれないって。は用事があるから待っていたのにね?」
 さらりととんでもない事を告げられた気がする。
 だって、あの時の私は───

「朔。私、あの時点で景時さんが朔のお兄さんだなんて知らなかったんだよ?だから、用事が
あって待っていたのでもなくて・・・なんとなく・・・見ていたくてっていうか・・・・・・」
 とっても軽い人だな〜と思ったんだよね。
 でもさ、とっても話しやすい空気を作ってくれる人だなとも思って。それで・・・・・・。



 朔が目をパチクリ。
 私も目をパチクリ。
 そのうち朔の顔が蒼ざめて。



「わ、わ、わ、私。おやつの。そう!おやつの支度でもしてこようかしら?あ、お昼がいいかしら」
 朔らしくもなく、慌てて部屋を出て行っちゃった。
 そんな慌てた朔と入れ替わりに景時さんが沙羅を抱っこして戻ってきて。

「あ。起きたんだ〜。大丈夫?」
「は・・・い」
 なんとなく景時さんを見上げてじぃ〜〜〜っ。
 座ってもじぃ〜〜〜っ。
 だんだん景時さんが照れてきて、耳が赤くなった。



「あ、あの・・・そんなに注視されると困っちゃうな〜〜〜」
 可愛い。
 間違いなく可愛いんだ、景時さん。
 こう、相手が和んじゃう仕種が。


「景時さん。景時さんって、女の子に声かけたりする人?」
「へ?オレ?・・・・・・それって、どういう・・・・・・ないっ!そんなのないから!!!」
 景時さんが大慌てで全否定してるけど。
 私には!声をかけたんだよねぇ?


「でもぉ・・・私ってば、景時さんに声をかけられた女の子知ってるんですケド」
 何となくからかいたくなって。
 思わせぶりに言ってみた。


「・・・・・・それ、ちゃんのコトでしょ?オレ、他に記憶ないし」
 あっさりばれちゃって。
 いつもの冷静な景時さんに戻っちゃった。

「なんだ〜。わかっちゃいました?」
「まあね。朔にでも聞いた?オレさ、あの時はそれなりに大勝負してたんだよね」
 景時さんの勝負、待っててくれたらって・・・・・・めちゃめちゃ勝負じゃなくない?!
 そんなこといったら、ヒノエくんなんて毎日が大勝負だよ?
 何となく、朔がいう所の“情けない”がわかったかも。
 情けないというより、相手に伝わらない範囲の行動が景時さんにとっての勝負かぁ。
 私のアピールがなかったら危なかったわ!
 せっせと景時さんの背中を観察していたもの。
 そして、まさに大いなる野望を抱いたのよ。
 景時さんに好きって言ってもらうっていう。
 ・・・・・・本気で危なかったかもしれない。どうりで朔が逃げたわ。


「景時さん!抱っこして下さい。疲れちゃった」
「あ、うん。任せて〜」
 とっても優しい貴方が大好きだからね。
 眠っている沙羅を私の隣に寝かせてくれて。
 そうして背中から支えるように抱っこしてもらった。


「沙羅ちゃん、寝ちゃったんですね?」
「そ。暴れて疲れたみたい。オレもヘトヘト〜。沙羅はさっき母上が着替えさせてくれたから。
風邪ひかないようにって。だから安心して?」
 うふふ〜。こんなに家族を大切にしてくれる人、いないと思うのよね。
 やっぱり勝負したのは私の方じゃない?

「源太くんはおしめ替えたらまた寝ちゃいました。ほら」
「うん。沙羅もこんな感じだったよね。よく寝るんだよなぁ」
 景時さんが源太くんを撫でてくれて。

「私もよく寝てますから。沙羅ちゃんも源太くんも私に似ちゃったみたい」
「あはは。それは嬉しいね。ちゃん似なら安心だ・・・・・・」
 どう安心なのかは聞かないでおいた。
 たぶん、そんなのは知らなくてもいい。
 だって、私が恋の勝利者ですから。

「お休み・・・いつまでもらえたんですか?」
「ん〜?九郎がね、ちゃんへお祝い代わりにってオレに休みくれたんだよ。火急の呼び出しが
なければ、たぶん七日くらいはよさそう」
「わわわ。それは・・・おとくな感じ。私が嬉しいのは変かな?いいのかな?」
 景時さんがお休みで私が嬉しい。
 それって・・・お祝いなのかなぁ?
「オレも嬉しいし、たぶん沙羅も嬉しいから。一番のお祝いじゃない?オレさ、仕事にいったら
仕事がなくて。そっちが面白かったよ?弁慶が九郎の机にこぉ〜んなに文を積んでてさ」
 あら〜。九郎さんにごめんなさいかしら?
 でも、せっかくのお祝いだから。

「おやつの時は、南の部屋で皆でごろんしましょうね」
「大丈夫?そんな無理は・・・・・・」
「こうして景時さんが支えてくれれば平気です。それに、向こうは暖かいし。もしかしたら、
九郎さんたちがひょこって来てくれるかもしれないし」
 誰もが気軽に来てくれるからちっとも寂しくなくて。
 そんなお家にしてくれている景時さんに感謝しなきゃ。



「そうだね。ぐるぐる巻きで抱っこすればいいか!」



 ご機嫌で納得してもらったけれど。
 何かチガウ・・・かもしれない。
 梶原邸のパパさんは、やっばり心配性で甘々です。 










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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!

 あとがき:望美ちゃんの野望達成は危なかったのよっていう真実がここに。     (2008.01.01サイト掲載)




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