遊び場 ≪望美side≫ 寒いといったらハンパなく寒くて。 でも、寒くたって沙羅ちゃんは元気印で動き足りないと愚図りだすし。 だからといって、そろそろ産み月の私は風邪なんてとんでもなくて。 思い出したのが幼稚園の遊び場。 雨の日には、弾力性のあるクッションみたいな遊戯が置かれている部屋で遊んだなって。 この世界には絨毯はなくても布はある!綿もある! 薄手の綿入り敷物とクッションを作って。 沙羅の遊び場を用意したら、私にとってもお昼寝にいい場所になっちゃって。 なんとなく皆が集まる場所にもなっちゃった。 まだ春というには早い季節だし、温かくしないと。 「はぁ。・・・起きてるのツライ。そろそろ外は暖かくなってきた気がするのに」 「あらあら。まだまだよ。朝晩はとても冷えるもの」 毎日がドタバタで月日が経つのは早いな〜なんて思うんだけど。 お腹は重くなるばかり。 沙羅ちゃんを産んだことがあるから、別に心配はないの。 もう少し大きくなるの知ってるし。 ただ・・・また産む時に景時さんがいてくれたら嬉しいな〜とか。 贅沢な事を考えながら朔の膝へ横になり、白龍たちと遊んでいる沙羅を見る。 「きゃ〜〜〜!!!」 とにかく声を上げて動きまくる沙羅。 う〜ん。私も声は大きかったなぁ。 「どうかした?」 「え?・・・沙羅がね、このままじゃとってもお転婆さんだな〜って」 朔が私の額を撫でながら尋ねてきた。 変な顔してたかな。かも・・・だって、沙羅ちゃんたら白龍よりすごいんだもの。 渋い顔になっていたかしら。 「舞を習うのはどうかしら?もちろん、歩けるようになってからだけど」 「そうだよね。私もそれは考えていたんだ。まだ扇は危なくて持たせられないし」 沙羅ちゃんが危ないんじゃなくて。 周囲の人が危ないのよ。 モノもよく投げるんだよね。 「お人形も潰されてしまってるしね。うふふ」 「・・・パパとママを踏んでるなんて〜。悪い子ちゃんだなぁ」 私に似せて作った人形が見事に沙羅ちゃんの下敷き。 景時さん人形なんて、片腕踏まれ中。 取れちゃうよ、腕。 「ぱ!ぱ〜〜〜。ぱ!!!」 突然、沙羅が外へ向かって叫びだした。 私が何に驚いたかといえば、朔の表情。 きりりと引き締まって扉の辺りを睨んでるよぅ。 ・・・もしかして、もしかするのかしら。 「沙羅ちゃ〜ん!いい子にしてたかな?パパはお仕事終わったよ〜〜〜」 景時さんが真っ先に沙羅ちゃんを抱き上げる。 ちょっと焼きもちだけど、嬉しかったりして複雑。 「ぱ〜〜〜・・・ちゅっ!」 「・・・・・・見た!?オレにちゅうしてくれたよ〜〜〜」 景時さんの喜びように、誰もが口を挟めなかったりして。 「ちゃん!」 「おかえりなさい。景時さん」 お約束のほっぺにチュウをしてあげて。 「これで両方になった〜〜〜」 「た〜〜〜」 何でも景時さんの真似をする沙羅ちゃん。 景時さんがあまりに楽しそうだから、真似をしたくなるんだろうな。 「・・・兄上」 「ただいま〜、朔」 まったく空気を読まない景時さんが可笑しくて。 朔の頬がピクピクって怒ってるのも可笑しくて。 「ちゃん。今日は久しぶりにオレが何か読んであげるよ〜」 「ほんとに?」 朔がさりげなく場所を空けてくれて、入れ替わりに景時さんが抱っこしてくれた。 そして、朔が沙羅の面倒もみてくれる。 「沙羅ちゃんは・・・今度は何して遊ぶ?」 「れ!」 朔はお手玉が上手なんだよね。 沙羅ちゃんには不思議らしく、ず〜っとお手玉がくるくるしてるのを見てて。 ぱっかり口が開いちゃってるのが可愛いんだよね〜。 そんな風景をみながら、景時さんの声を聞いていた。 「・・・眠ってもいいよ?」 ついついウトウトしていたら、景時さんの声が耳元でした。 せっかく物語を読んでもらっているのに、お話よりも景時さんの声が心地よくて。 「・・・・・・景時さん。あのね?」 眠いけど、これだけはいつかちゃんと言おうって思っていた事を言わなきゃ。 「あのね?」 「うん」 肩に景時さんの体温を感じる。 眠くてちゃんとしゃべれてないのかも。 聞こうとしてくれてるんだ。 「私ね、とっても幸せなんだよ?皆も・・・・家族もいるの。だから・・・・・・」 私はいなくならないって、言わなきゃ。 景時さんが気にしてるの、なんとなく気づいてたもの。 「ごめん・・・ちゃん」 え?今、ごめんって・・・・・・それって─── 「気持ちは見せられないものだから、一概には比較できるもんじゃないと思うけど。 それでも・・・オレの方が幸せ。オレには絶対ないと思っていたよ、幸せなんてさ」 景時さんの手が私の手に触れてる。 「こうして君がいてくれて。何度も夢じゃないかって夜中に目が覚めたりしたんだ。 それも・・・沙羅が生まれてからはさ、減ったんだけど。今はね、なくなった。 ごめんね?心配かけて。今は・・・オレが家族を守るんだって、頑張ろうって。 すごいことだよね〜。かなり前向きなオレ」 「よかった・・・私・・・・・・」 駄目だぁ。眠いよぅ。 景時さんの手が悪いんだ。 この手で触れられてると─── 私だけ眠ってしまった後、兄弟でお話していたみたい。 目が開かないんだけど、遠くで声がして。 実際は温かいから、景時さんは私を抱っこしているままなんだろうな〜って。 そんな事を考えながら、沙羅が朔の膝で寝ているのが見えて。 「朔・・・オレ、幸せなんだ」 「その様ですわね。が物好きでよかったですわね」 相変わらず朔は景時さんに厳しい口調で。 「まあ・・・今だから言うけど。たぶん・・・誰にも譲れなかった。壇ノ浦の前にさ、 一緒に逃げてくれって言ったんだ。だけど、逃げるなって言われてさ。手を離されて。 ・・・初めてちゃんから否定された事が、今までのどんなことより怖かった。 怖いっていうのは少し違うのかな。もう・・・他なんてなかったんだよ。失いたくないって それだけしかなかったんだ」 景時さんにそんなに想われていたなんて。 「兄上。長い間・・・迷惑ばかりかけてごめんなさい。黒龍の時も庇ってくれていたのに。 それに・・・この髪の時も・・・・・・」 朔が珍しく素直になってる。 これが本当の景時さんと朔の関係なんだよね。 優しいお兄ちゃんに優しい妹。 お互いを大切に思うから口に出来なくなってしまう事がたくさんな二人。 「・・・それはもう終ったことだよ。それより・・・髪、伸ばしてるんだよね?」 「ええ。がそうした方がいいと・・・でも・・・・・・」 「いいんだよ。気持ちはあとからだって。そういう意味だと思うよ」 そぉ〜なの。 まずは見た目からっていうか。気合にはきっかけっていうか。 黒龍だってそう思ってる・・・と思う。確認したコトないけど。 「兄上ったら。すっかりに似てしまって」 「もちろん!オレ、自分の事は信じないけど、ちゃんの言う事なら何でも信じられる からね〜。オレにはもったいないくらい眩しいんだ」 ・・・やたら褒められてて。もう少し頑張れば起きられそうなんだけど、起きても 恥ずかしいような。再び遠ざかる声に、まだ眠いんだなと自覚した。 仲良し兄弟が久しぶりに本音で語り合う時間がもててよかった。 私の居眠りも役に立つものよね! |
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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!
あとがき:キルトっぽいのをイメージして下さいませ。 (2007.10.25サイト掲載)