無声 ≪望美side≫ 「景時さん。沙羅ちゃん。夕ご飯だよ〜?」 沙羅ちゃんの誕生会の夕方。 お昼寝しないでぐずっている沙羅ちゃんが寝るようにと、皆が少しだけ 早く帰ってしまって。 あまりに楽しくて興奮しちゃった沙羅ちゃんは、益々悪い子ちゃんに なっちゃって、どうしよ〜って思ってたの。そうしたら! 「ほ〜ら!沙羅は父上と遊ぼうよ。無理に休まなくたっていいんだから」 景時さんが沙羅を高々と抱き上げて、沙羅の相手を始めた。 あまりに自分の希望と違うことを強要されるとムッとするよね。 確かに沙羅ちゃんはまだまだ遊びたくて。 でも、休まないと体力的には無理だから心配だし。 母としては休ませたい方に気持ちが傾いちゃったのよね。 ついつい煩く言いすぎちゃって拗ねちゃった。 ところが景時さんは違う。 沙羅ちゃんの気持ちを理解して、沙羅が眠くなるまで付き合って。 「しぃ〜っ。そろそろだから・・・任せて!夕飯の支度するんでしょ?」 沙羅に見えないように私に合図を送ってくれた。 今日は沙羅ちゃんのために準備をしてたから。 それをわかってくれて子守をかってでてくれた景時さん。 優しくて最高のパパで旦那様。 頷いて静かに部屋から出たのが一時くらい前の話。 今はというと、夕飯の支度が出来たから二人を呼びにきたの。 きたんだけど・・・・・・寝てるの・・・かな? 忍び足で近づいてみた。 「景時さん」 小声で名前を呼んでみたけど・・・・・・自分の腕を枕にして。 もう片方の手で沙羅が転がらないように、衾で上手に包んで抱え込んで。 沙羅ちゃん、いいなぁ・・・そこは私の場所だぞ〜って、ちょっとだけ焼きもち。 お昼寝というには遅すぎで、お夕寝というのかな? そんな言葉ないかな。 なんとなく・・・声を出さずに二人を見守る。 よくよくみると、景時さんに似てるの。沙羅ちゃんは。 よかった〜。きっと朔みたいに可愛くて美人さんになるよ! 楽しみ、楽しみ。 問題なトコも・・・あるにはあるけど認めたくないっていうか。 「・・・ちょっとだけお転婆さんなんだよね?沙羅ちゃんは」 歩くようになる前から、どことなく遊びが激しいなと思ってはいたの。 せっかく作ったお人形も、ぶんぶん振り回してるし。 こう・・・本を読んだり、お絵かきしたりとか、静かな事も静かに出来ないっていうか。 「朔に似て欲しかったトコが私に似ちゃって・・・困ったなぁ」 静かにしていたつもりが、声に出ていたみたい。 眠っていた沙羅の瞳が瞬時に開く。 「ま〜!んま!!!」 「はい、はい。・・・食いしん坊も私に似てるかな〜。沙羅ちゃん、おいで?」 どうにか膝をついて両手を伸ばして沙羅を待ち受ける。 待ってるんだけど来ないのよ。 「沙羅ちゃん?」 「・・・・・・ぱぁ」 そっか。 「景時さんは眠ってるから、しぃ〜だよ?そぉ〜っとはいはいしてね」 指で静かにの合図。 白龍たちと隠れ鬼をする時にいつもしてるから覚えてるよね? 「しぃ〜〜〜〜っ」 景時さんの様子を窺いながらはい出す姿が可笑しくって。 笑っちゃダメよ、我慢なの。 景時さんが・・・たぶん起きてるだろうけど、沙羅が頑張るのがポイントなんだから。 「いい子、いい子。お腹空いたんだ」 「んま〜」 お昼が美味しかったから期待がふくらんでるとか? 「沙羅の好きなおイモだからね。熱々を食べようね」 沙羅はグラタンが、とくにポテトグラタンが大好きで。 まだまだ寒いから夕飯はグラタンって朝から決めていた。 もともと今日一日は沙羅の好きなものばかりにしようって思っていたから。 じゃがいもがホコホコに仕上がったのは、我ながら上出来! 「・・・・・・ぱ・・・は?」 「う〜ん。パパはお疲れだから・・・・・・このまま」 理解したのかしないのか、沙羅が景時さんを見つめている。 「沙羅ちゃん。大丈夫。後で食べるから。それとも、一緒がいいの?」 沙羅なりに悩んでいるみたい。 でも、どちらかといえば私に性格が似てしまった沙羅の決断は早かった。 「沙羅ちゃん?!」 止める間も無く腕からすり抜けられ、景時さんの上に飛び込まれてしまった。 「うわぁ!まった!!!危ないよ〜〜〜、沙羅〜〜〜」 沙羅の気配に気づいていたみたいで、素早く起き上がって沙羅を受け止めてくれた。 「ぱ〜〜〜〜、も!」 ぺちぺちと景時さんの頬を軽く叩きながらご満悦の沙羅。 悪い子ちゃんのままだぞぅ? 「あはは!お腹空いたよね〜。今日はたくさん遊んだんだもんな〜。早く・・・食べよう!」 沙羅を抱えて先に行っちゃった。 あれれ? 「・・・・・・私が迎えに来たんですケド」 うっかりひとり取り残されてしまって。 なんだか寂しいなぁ。 「よいしょっと。ママを置いていくなんて、悪い子ちゃんだよ〜、二人とも」 膝に手を当てて立ち上がる。 ついつい掛け声がでちゃうのよね〜。年かしら? 体が思うようじゃないから・・・つい、つい口癖になってるかも。 「はぁ・・・・・・さび・・・・・・」 「しくないよ。本当は驚かせようと思ったんだけど、何かあったら困るから。ね?」 簀子の角で景時さんと沙羅が隠れていたの。 「ま!」 「うん、うん。家族で・・・みんなでご飯が楽しいよね〜。沙羅!」 景時さんが沙羅に大切な事をしっかり教えてくれる。 そして、私に伸ばされる手。 「今日はグラタンなんですよ〜?景時さん。今度は火傷しないでくださいね?」 「だってさ〜、あんなに熱いなんて知らなかったんだよ〜」 景時さんに手を引かれながら歩くの楽しいな。 景時さんだと沙羅ちゃんを片腕で楽々だから。 もう片方の手は私のもの。 「沙羅ちゃんは、ちゃんとふぅ〜して食べられますよ?」 「きゃふ!」 褒められたのはわかるみたい。 景時さんに自慢げに笑って見せてるし。 「・・・今度はどういうものかわかってるから大丈夫!」 「さ!早く行きましょう。みんな待ってますよ」 「だね〜。今日は沙羅のお誕生日だもんね。・・・嬉しいよ」 景時さんが沙羅ちゃんに頬ずりしてる〜。 なんとなくだけど、わかる。 ずっと皆でいられたら・・・そう思ったんだろうなって。 妻はしっかりわかってますからね? |
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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!
あとがき:いつまでもイチャコラな夫婦だといいな〜という願望からv (2007.07.07サイト掲載)