人体の不思議  ≪景時side≫





 今まで休日はのんびり寝坊・・・なんてことをよくしてた。
 朔には叱られたけれどね。
 ちゃんは許してくれた。
 むしろ、一緒に寝坊をしてくれた。

 二人でいちゃいちゃ出来たのは、沙羅がちゃんのお腹にいた時まで。
 産まれてからは嬉しい反面、ちゃんを奪われたような。
 そんな複雑な気持ちがする事もしばし。
 だけど、沙羅と一緒に遊んでいると時間を忘れてしまう。
 そんな親子の時間を大切にしてきた。

 それでも仕事の疲れから、どうしても起きられない日もあり。
 そんな時は寝ていられたし、誰も起こしに来なかった。
 最近はどうもねぇ・・・危険なんだな、これが。



「きゃーーーっ!沙羅ちゃん、ダメよ!景時さんは疲れてるんだからっ」



 ちゃんの悲鳴に近い叫び声で、オレは自分の危機を察する。
 武士として気配で察しろといわれても、そこは我が愛娘の気配。
 殺気があるわけでもないのに、わかるわけないって!
 まだまだ寝ていたいが、ここは素早く起きねば、つい先日の二の舞。


「・・・い・・・しょっと!こ〜ら!またオレで遊ぼうとしたな〜?」
「きゃふふ!きゃふ〜〜」
 褥から起き上がり、オレの顔に悪戯しようとした沙羅を抱き上げる。
 遊んでいると思ってるな〜?

「な〜に〜?沙羅はぁ・・・ほんっと顔が好きだね〜〜〜」
「きゃ!」
 沙羅は人体に興味があるらしい。
 特に顔に。
 普段はいい。起きている時ならば。
 寝こみを襲われるとかなり効く。
 忘れもしない、この前の休みの朝───





「・・・・・・あいてっ!だっ・・・沙羅〜〜〜?!」
「きゃふ〜!ぶ〜〜!めっ。め」
 覚えた単語を使いたいのはわかる。
 オレの目が目だと言いたいのも理解できる。
 が。
 眠っているオレの目に指を捩じ込むのはどうかと思うよ?
 目に触りたいんだろうケド。
 目に何かが刺さる痛みというのは、かなり効いた。
 何かって、沙羅の指だけど。





「沙羅ちゃんはお利巧さんだからね〜。これは?」
「よ!よ〜〜〜!!!」
 ちゃんが話しかけている言葉の一部を発しつつ、体の部位を示すんだよね。
 つまりは。
「あたり〜〜〜!足だね、足。あんよ。沙羅ちゃんの足は可愛いね〜〜〜」
「きゃ!」
 我が娘ながら、かなり覚えるのは早い方じゃないかな〜と思う。


「景時さん、ごめんなさ〜い。沙羅ちゃんに逃げられちゃったの」
 四足で逃げ回る沙羅に追いつくのは、今のちゃんには大変難しいと思う。
「大丈夫。もう起きる頃合だったし。ね?沙羅〜〜」
「きゃきゃっ!」
 嬉しそうに笑ってくれると、もう少し寝ていたい気持ちは消えていて。
 頬ずりすると沙羅も真似して頬ずりをして返してくれる。

「いいな〜、景時さんは。沙羅ちゃんたらパパにはいい子にして〜〜」
 ちゃんも頬ずりに参加したから、何となくオレは二人を抱きしめていたり。
 真ん中ってイイ〜〜〜〜〜。



「・・・兄上がさっさと朝餉を食べてくださらないと、片付かないのだけれど」
 冷たい声に振り返れば、入り口で朔が睨んでいる。
「きゃう!さ〜」
 するりと沙羅に逃げられ、沙羅は朔に抱き上げられていた。

「困った父上様ですね〜?沙羅ちゃん。真似しちゃダメよ〜〜〜」
 沙羅が朔に連れて行かれてしまった。
 正しくは、連れて行ってくれたんだと思う。
 ここは感謝をして、しっかりちゃんに甘えようかな。



ちゃん・・・その・・・お腹苦しくない?」
「えへへ。二度目だから、何となくわかってるし。安定してるんですよ?ほら」
 う〜ん。お腹に触ってしまった。
 ここにいるハズなんだよね、源太。

「ごめんね?コレばかりは代われなくて」
「謝ることじゃないのにぃ・・・毎日楽しいんですよ?そろそろ景時さんに起こして
もらわないと、起きられないかも?」
 こんなに手首なんて細いのに。
 その体内にオレの子を宿しているわけで。
 また歩くのも大変なお腹になっちゃうんだろうなぁ。
 申し訳ない。
「うん。起こすのなんてわけないんだけど・・・オレさ・・・・・・」
「景時さん!ぎゅってして下さい。あのね、最近ぎゅってしてないから。この頃は
あまりきつくぎゅってしてくれないでしょう?」
 ちゃんのお強請り。
 オレに嬉しいその願いを叶えるべく、腕を回して抱きしめる。


「・・・景時さん」
「ん?」
「たくさん・・・たくさんお話しましょう?でね・・・・・・」
 何となく言葉では伝わらない気がして、行動で示してみた。
 つまりは、口づけてみたわけなんだケド。

「たくさん触れ合おうか」
「うん。そうなの。たくさん一緒がいいな〜って言いたかったの」


 言葉よりも伝わるモノ。
 君の髪に触れて。
 君の体温を感じる時間。
 久しぶりにちゃんに触れたって気がする。
 

「おっ・・・と・・・・・・」
 ゆらゆらと揺らぎ始めた君を支えながら。
 二度寝の体勢を整える。
 風邪をひかせちゃ大変だからね。

 褥へ二人で転がって。
 ひとつの衾を分け合って。
 朔がいるから、沙羅の攻撃はない・・・だろう。うん。



ちゃん。いつもありがとう。お母さんも時々寝坊してもいいと思うよ」
 


 次に目覚めた時は、何故か沙羅も一緒に眠っていて。
 少しだけ暖かな日差しが差し込む中での朝寝は楽しかった。






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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!

 あとがき:朝寝が気持ちイイんですよね〜、冬って。     (2007.02.28サイト掲載)




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