小雪  ≪望美side≫





「今日も寒いね〜。・・・沙羅ちゃん!きょうもたっちしようか〜」
「あ!」
 手を伸ばすと、嬉しそうに私の手につかまって立つの。
 でね〜、歩くんです。
 ひとりでは無理だけど、手を貸してあげると歩けるの。
 足を前に出すのが歩くなんだな〜って思う。
 寝ている時に足の裏に触るんだけど、まだふにふにしてて。
 歩くから硬くなってくるんだって。
 沙羅ちゃんをみてると、とっても勉強になる。

「はい!みぎ〜、ひだり〜」
「う!うぅ〜〜。ぱぁ〜!」
 沙羅が反応する方向を見るんだけど・・・・・・何もないし。

「どうしたの〜?沙羅ちゃ〜ん?」
 簀子で歩くのを止めてしまった沙羅。
 私より、朔の方が先に反応した。

「・・・・・・庭を見てくるわ」
「へ?」
 かなりバカっぽい声だしちゃった。

「朔ぅ〜?少なくとも、家の庭に変な人は入れないよ?そのぅ、景時さんの
結界もあるしぃ。警備の人もいるしぃ」
 階から降りて振り返った朔の顔がとっても楽しそうで、意地悪に微笑んだ。

「ええ。そうよね。ただし・・・変な人がその本人だと入れるのよね?」
 こっ、怖い。朔がブラックになってる!!!
 簀子からはかなり遠い木陰までスタスタ歩いていっちゃった。
 
 なんとなく心配で、沙羅を抱えて朔がいるあたりを見ていると、すぐに
沙羅ちゃんが歩かなくなった理由がわかったケド。
 ・・・・・・仕事はどうしたのよぅ・・・景時さんたら!
 朔に連行されて階まで二人が歩いてきた。



「あっ・・・あのぅ・・・沙羅がね?歩くとこみたいな〜なんて!」
 頭を掻きながら可愛く言ってるけど。ダメなんですからねっ。
「景時さん。気持ちはわかるんですけど・・・お仕事は?」
 ぐぐっと堪えてお腹に力を入れて、出来るだけ厳しい口調で問いかけた。

「あ〜っと・・・見回りの途中でぇ・・・少しだけ寄り道してきていいかな〜
なんて・・・・・・任せちゃってみたりしてみたりして・・・・・・」
 わざわざ最後を長く言わなくてもいいのに。
「要は。部下の方に任せて抜けてきちゃったんですね?」
「きゃふふ!きゃふふ〜」
 沙羅ちゃんが景時さんの様子に喜んじゃって。
 ママはパパを叱ってる最中なのよ?

「だっ・・・だってさ。オレだけ沙羅に会う時間が少ないっていうか・・・
なんていうか・・・・・・」
 指と指を合わせてうにうにと動かしながら言い訳中の景時さん。
 私が簀子の上にいるから、珍しく視線が上目遣いになってて可愛いっ!
 ダメ、ダメ、ダメ、ダメ。ここはきちんとなの。

「お休みの日は朝から遊べるでしょ〜?」
「だってぇ・・・最近まともにお休みないしぃ・・・外は寒いし、暗いし」
 ・・・景時さん、意味不明になってるよ?

「それにぃ・・・もう少しで歩きそうなのに、オレだけ見られないのも」
「ちょーっと待って!景時さん。そんな事いいだしたら、沙羅ちゃんは何でも
初めてばかりなんですよ?」
 今の沙羅ちゃんは何でも初めてなのよね。


「あ・・・・・・」


 そこまでは考えていなかったみたい。
 景時さんがぽかんと口を開けたままになっちゃった。


「オレとした事が!一年間休みをもらうべきだったって気づかなかったよ!
ありがとう、ちゃん!」
 復活した景時さんが、ますます意味不明な事を口走りながら庭を駆け去った。


「朔・・・まさか・・・ないよね?」
「ふう。兄上ったら。本当に頼りなくて・・・ごめんなさいね、。考えてみれば
最初から休みを一年いただけばよかったのよ」

 ・・・はい?朔まで変な事言ったよ?

「時々は見逃して差し上げていたけれど、こうして庭に隠れていたのは今日だけでは
ないのよね。どうせ皆様の迷惑にしかならないなら、休めばよかったのよ。まったく。
私も考えが足りなかったと反省したわ」
 
 おかしい。あきらかに話の方向がおかしいよ?
 ちょっとー!誰かー!!!

「朔。景時がいては騒々しいから、沙羅には邪魔だ。いなくていい」
 庭から黒龍と白龍がやって来た。
「神子!今から譲を迎えに行ってくる!今日のおやつはお汁粉にしてくれるんだよ」
 冷静な黒龍のおかけでいつも助かってるんだけど。
 その言われようもちょっとチガウような・・・・・・。

「・・・それもそうね。それと、今日は寒いからお汁粉は良さそうね。二人で大丈夫?」
 あのぅ・・・朔?それもそうって・・・・・・。

「神子。お使いしてくる?譲は今日は守護邸にいるといっていたから」
 明るいわね〜、白龍。
 もう頭の中はお汁粉でいっぱいなんだね。

「じゃあね、景時さんに伝言してね。今日のおやつはお汁粉ですよって。皆にも声を
かけてきて?」
 木枯らしの季節。
 お酒ばかりが温かくなるモノじゃないでしょ?
「うん!わかった」
 白龍が大きく頷いてくれた。
 白龍にとっては、景時さんより食べ物なのね。



 立ち去る小さな背中を二つ見送りながら。
 景時さんが本当にそんなバカな事を九郎さんに言ったりしないかが心配で。
「・・・どうしよう。皆が来てくれたら・・・聞いてみようかな?」
「きゃ!」
 沙羅ちゃんはわかってないみたい。人が多かったから楽しかったんだね。

。兄上なら心配ないわ。間違いなく九郎殿にお願いしていると思うし」
「ええっ?!それ・・・・・・」
 景時さん、本気だったの?さっきの。
「それより、今日は寒いから中へ入りましょう。沙羅ちゃんも、今日は皆様と追いかけっこ
できるでしょうし、運動は十分よ」
「そっ、そうだね。うん・・・そうする・・・・・・」



 景時さんが心配で心配でたまらない。
 だって・・・沙羅ちゃんでこうなら、この子の時もだよね?
 もう名前も決まってるのに・・・・・・。
 景季くんの初モノも見逃すまいとしたら、仕事しないじゃなくてなくなっちゃうかも!
 ひぃーーーっ。私が働くべきかしら?






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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!

 あとがき:いつ歩くかな〜?景時くんの育児休暇はあるのか?!(笑)     (2006.12.31サイト掲載)




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