団栗ころころ  ≪景時side≫





「あ〜、どんぐりだ。たくさん落ちてるな〜」
「ほんとだ〜!可愛い」
 ちゃんがどんぐりを拾い始めた。

「木の実って、動物のご飯なんですよね?」
「そうだね〜」
 ご飯という表現がちゃんらしいなぁ。
 エサって言わないんだ。

「これがね、帽子みたいで可愛い・・・とれちゃった!」
「へ?」
 ああ。ソレね。


「殻斗(かくと)っていうんだよ。それで木を見分けるかな」
 実際、どこがどうといわれても困るけど。
 多少の違いはある。
 町近くと山里じゃ種類が違う。
 実の大きさも違うしね。



「・・・どんぐりって、種類があるの?」



 団栗眼っていうんだよな。
 まんまるでくりくりな瞳の事を。
 今のちゃんの驚きの目が、まさにまんまる。
 オレの気持ちを穏やかなモノにしてくれる。



「えっとね〜、高い山の方が実が大きいよ。色々と拾い集めればわかるんじゃ
ないかな。木の種類がそもそも違うから」
「そうなんですか〜。景時さんって、何でも詳しいですよね」
 こんなことで感心してくれちゃうんだから。
 オレの雑学も捨てたもんじゃない。


「これで何かおもちゃを作れたら可愛いのにな〜」
「・・・食べるんじゃないの?」
「食べるんですか?!」


 君とオレの間の認識は違っていたらしい。
 オレにとっては非常食。
 これは古代人も食べていたんだ。
 動物も食べているし、問題ナシ。
 オレたちだって、栗なんかは普通に食べてるしね。


「これ・・・こう・・・やじろべえ〜とか、コマとか・・・・・・」
「遊びの方ね〜。うん。すぐに作れるよ。大きいのが一つと小さいの二つで」
 やじろべえか。
 そういや、朔も小さい時に喜んでくれたよな〜。
 その辺の枝も拾って、小刀を出して作り始めた。



「はい、どうぞ」
「わ〜、これ、これ。これもね、菫おばあちゃんに教わったの。あとは、
竹とんぼとか」
「そっか。器用な人だったんだね〜」
 女の人が作って遊ぶものではないしね。
 こっちの世界を懐かしんで作っていたのだろうか───



「景時さんもですよ。器用なの」
「オレ?オレはどうかなぁ?」
 発明失敗の数々の事件を思い出すにつけ、器用かどうか疑わしい。

「お家に帰ったら、沙羅ちゃんにみせてあげよ〜っと。今見せたら、見るの
止めなくなっちゃうから」
「そうだねぇ。沙羅はちゃんに似たのかな。すっごい集中力だよね」
 いつだったか、洗濯物が風に揺れているのが楽しいらしくて。
 いつまでも、いつまでも。
 その場を離れることを許してくれなくて。
 風が止むまで眺めていたなぁ。

 今は九郎の髪の毛がお気に入りらい。
 どっちが世話してるんだかわからないほど遊んでいるね〜。

「九郎さんって、弟とか妹がいたらすっごく過保護なタイプな気がする」
「ん〜?・・・そう・・・かもね」
 九郎って寂しがりやだからね。
 幼い時から気合入っちゃってて、愛情に飢えているよね。

 仲間を優先しちゃうトコが心配で。
 だからこそ、そんな九郎についていく者も多くて。
 飢えているけど、与えることを惜しまないところが。
 オレには出来なかったことばかりの九郎が。
 羨ましかったよ───



「景時さんも過保護ですよ。シスコン」
「しすこん?」
「うん。朔の事。めちゃめちゃ過保護。あっ!やきもちじゃないですからね?
二人の会話、大好きなんですよ。最後に景時さんがへにょって負けちゃうのが」
 君は微笑んでくれる。
 格好悪いと詰るのではなく、それがオレらしいのだと。
 そう気づかせてくれる。
 そして、オレこそが愛情に飢えていたのだと。
 不足を補ってくれる存在。


「しっかりしなきゃとは思うんだけどね〜。今はしっかり者の嫁さんがいるから。
少し朔の小言が減ったよね?」
「え〜〜?前と変わってませんよぅ?旅してた頃と。沙羅ちゃんの事で、前より
叱られてるかも?」
 え〜っと。
 あれ?
 そうかな?・・・・かも・・・・・・。

「成長してませんねぇ?」
 頬の辺りがかゆくなる。ぽり、ぽり。あはは〜。
「してますよ。パパですもん。私は景時さんがいるから頑張れるの」
 君の視線は、九郎に抱き上げられている沙羅へ向けられている。



 家族を守ってくれる人。
 オレを信じてくれる人。
 わかってはいるんだ。だけど───



ちゃん」
 名を呼べばオレを見てくれる。



「何ですか?」
「何でもな〜い」



 君は首を傾げたけれど。
 肩を竦めて黙って手を繋いでくれた。



「景時さん」
「ん?」
 呼ばれて返事をする。



「お父さんも時々お休みしていいんですよ?みんながいるから、沙羅ちゃんを
こうして預けられるし・・・・・・」
「そうだよね。オレ、ちゃんと二人でデートしたかったみたい」
 家族は大切。
 でもさ、その前に自分も大切。
 ちゃんと二人で話す時間が欲しかったのだとしたら。
 オレもまだまだコドモだよな。



「私も。一年に一回くらいは二人きりでデートしてもいいですよね?」
「一回だけ〜?」
 それは・・・ないよりはある方がいい。
 一年に一度は少なくないか〜〜〜?



「だって・・・ね?」
 ちゃんがお腹を押さえている。
 そうだった・・・そうだよね。
「・・・重い?」
「まだ重くないですよ。重いのは産まれる頃」
 こればかりは、本当に申し訳なくて。

「景時さん。次は・・・男の子ですよね?」
「うん。・・・あっ!」
 しまった。言わされた!
「ふ〜ん。じゃあ、名前は景時さんが考えておいて下さいね?先にわかってると、
考える時間も長くあるからいいですよね〜」
ちゃんは考えないの?」
 二人目は・・・欲しくなかったのだろうか?
「え?だって。沙羅の時は、何だかお告げみたいに思いついたのに、今度は何にも
思いつかないんです。だからね、景時さんが思いつく順番かなって」
 にっこり微笑まれると、オレもそういう気がしてくる。
「そっか〜。そうだね〜」



 名前は・・・季節の移ろいになぞらえて。
 源氏の一字をもらって。一番目の男は太郎君というのが通例で。
 源太景季にしよう。
 命名書きをしてから、君に話そうと思う。
 だって、思いついたばかりだからね。

 そういえば、どうしてオレの名前、平三なんだろう・・・・・・。
 何が三番目?
 それをいったら、九郎なんてどうして九?
 名前は真剣に考えないとダメだな。うん。






Copyright © 2005-2006 〜Heavenly Blue〜 氷輪  All rights reserved.


≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!

 あとがき:どうして平三・・・・・・気になるわけです。     (2006.11.12サイト掲載)




夢小説メニューページへもどる