晴れのち曇り  ≪望美side≫





「あ、あ〜〜〜。きゃ!!!」
「起きちゃった。沙羅ちゃん、もうちょっとだよ?」
 馬の揺れ方って私のお尻は痛いけど、沙羅ちゃんにはいい感じと
思ったんだけどな〜。
「お目覚めだね。まだ天気は持ちそうだし、いけるかな」
「え?」
 こんなに空が青くて、雲がもこもこなのに?

「神子・・・明日には天気がくずれるだろう・・・・・・」
「はい、先生」
 リズ先生って、何が見えるのかな?
 まるで気象予報士さんみたい。
 ううん。データなしで当ててるんだから、もっとスゴイ。
 景時さんも天気がわかるんだよね〜。謎。

「明日はお洗濯しても、乾かないかも?」
 朔に向かって話しかけると、
「そうね・・・どうしても必要なものだけにしましょうか」
「そうだね」
 必要っていうか、沙羅ちゃんのおしめは毎日だもんね。

「そろそろ着くよ」
 景時さんの声で顔を上げると、紅葉の道が見えた。



「わぁ・・・・・・」
 紅葉の道が続いている。遙か遠くに本堂らしき建物があって。
「あの・・・歩いてもイイ?」
「もちろん!待って」
 ひらりと馬から降りちゃう景時さんがカッコイイの〜〜〜。

「朔!沙羅をお願いするね」
 先に沙羅ちゃんが預けられて、私の番!
 景時さんが手を伸ばしたと同時に飛びついてみた。

「あはは!そうきたか〜。・・・・・・これじゃ歩けないよ?」
 景時さんに抱っこされちゃってる!
 みんなの前でこのままは流石にちょっと。

「えっと・・・いいです。降ろして下さい」
「嫌だって言ったら?」
 ええ〜〜っ?!景時さんが変!

「朔。オレさ、久しぶりにちゃんと手を繋いで歩きたかったり
するんだよね。沙羅は・・・九郎!頼むね〜」
「景時さん?!」
 景時さんの手には、馬の手綱がふたつ。リズ先生の手にもふたつ。
 朔は片手を黒龍、もう片方でおやつの包み。
 私は・・・右手が景時さんで左手が白龍。
 ものすっごく変な感じ?先生がひとりになっちゃった!


「景時・・・手綱を預かろう。お前はこの荷物を。私はこちらの山に
用事があるので馬は山門で預けておく」
 リズ先生がさっさと馬をつれて行っちゃった。
 山って・・・天狗さんとでもお友達なのかな?

「これなぁ〜に?」
「沙羅ちゃんグッズ!」
 普通の肩掛けバッグなんだ。私の手作り。
 ちょっと便利商品なの。
「ふ〜〜〜ん。沙羅のなんだ〜〜〜」
 景時さんがニコッ。私もニコッ。
 振り返ると、九郎さんが上半身を揺らさないで歩いてる。
 別に・・・平気なのに。

「九郎。大丈夫?」
「あ、ああ・・・その・・・元気がいいな」
 うん。元気印が沙羅ちゃんの売りだもん。
「きゃふ〜!あ!あ!」
「九郎さん!気をつけないと、髪の毛つかまれますよ」
 動くものが嬉しいんだから、顔や髪の毛がとにかく危険。
 油断してると、案外痛いの。
「・・・・・・だ・・・っ・・・大丈夫だ」
 ま、いいや。沙羅が泣いてないから。
「景時さん!行こう?白龍も」
 手を繋いで歩き出す。
 白い塀にちらほら紅くなった紅葉が映える。



「ここ・・・だね。それと・・・向こうが龍神の庭か」
「うん!遠い昔・・・眷属の姫が遊んだ場所」
 景時さんの呟きに、白龍が返事をした。
「他にもいるの?その・・・龍神様」
「・・・いた・・・よ。その・・・小さな眷属は、先の変異の時に姿を
保てなくなった者も多いけれど」
 納得。この大気に・・・いらっしゃると思えばいい。
 そういう事なんだよね。


「沙羅っ!待て!!!」


 九郎さんの声のする方を見ると、私たち目掛けて沙羅が突進中。
「九郎さ〜ん。沙羅ちゃんのハイハイダッシュすっごいんですから。
ダメだよ〜。沙羅〜〜」
 九郎さんたら、沙羅のいう事きいて下ろしてあげちゃったみたい。
 沙羅の作戦なのにぃ。
 家の中だと捕まえるの大変だけど、ここは土だから───


「あ〜らら。沙羅ちゃん、泥んこだねぇ?あはは!」
「う〜!」
 パパに抱っこされてご機嫌ね。

「すまない!景時・・・・・・・・・」
 九郎さんに謝られちゃった。
「いいんですよ、九郎さん。それより、九郎さんの着物が・・・・・・」
「俺の事はいい!・・・沙羅の着物が・・・・・・」
 軽く肩に手を置いて、頭を上げてもらった。

「秘密兵器があるから大丈夫です。たくさん沙羅と遊んであげて下さいね」
 景時さんの肩にあるバッグを指差すと、九郎さんが首を傾げた。

「お出かけの時は着替えを持つのは基本。何でも入ってます!だから、
気にしないで、沙羅とたくさん遊んで下さい。もうね、すっごい早いから。
九郎さんに負けないですよ?」
「はい、九郎。家のお姫様は九郎と追いかけっこしたいみたい。向こうの
石の庭じゃなければ怪我もしないだろうし?」
 景時さんが、沙羅ちゃんを庭に下ろしたのが合図。

「う〜、う〜!」
「ま、待て!沙羅っ」
 そうね〜。土で遊べるのって幸せかも。

「九郎さん!落ち葉を食べないようにだけ見ててくださいね!」
 ちゃっかりお任せしちゃおう。
 お母さんは毎日大変なんだよって、身をもって学んでもらわなきゃ。
 九郎さんのお母さんだって、九郎さんを大切に育てていたはずだよ。

「白龍。どうしたの?」
「沙羅・・・楽しそう。いつもは私と遊ぶのに・・・・・・」
 ・・・ん?

「白龍も一緒に遊べばいいんだよ。遠慮しないで行っておいで?」
「うん!私も遊ぶ!!!」
 はい、はい。
 朔と黒龍は、すっかり紅葉を眺める体勢だし。

「景時さん。私たちも紅葉を座って眺めよう?」
「そうだね〜。敷物を敷いて。ちゃんは冷えるとダメだから抱っこね」
「はい!ぬくぬくしましょ」
 九郎さんだけが大忙し。
 私たちはのんびり紅葉を眺める。


 沙羅は九郎さんの抱っこが気に入ったみたい。
 高い高いをしてもらってる。
 青空いっぱいに手を広げて。
 大きくなってね!






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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!

 あとがき:慣れない人がしている抱っこは、すぐにわかるものです(笑)     (2006.11.02サイト掲載)




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