季節の区切り  ≪景時side≫





 ちゃんって、何でも楽しそうにするんだよな。
 オレにとっての季節の行事は仕事の一環というか、そんな感じで。
 どこかで、「ちょっと面倒だなぁ〜」とか思っていたりするんだ。

 ところが!家でするのは楽しい。どうしてだろ〜。
 何でも楽しそうにする君が。
 君がいるから。
 とても頼もしくて、こっそり庭で眺めていた日もある。


「沙羅ちゃ〜ん。今日はね、七夕様なんだよ?短冊飾ろうね〜」
「あら、あら。欲張りすぎじゃない?」
「いいのっ!沙羅ちゃんに、ちょ〜女の子らしくなって欲しいの」

 そう言いながら朔が短冊を笹へ結ぶ隣に立つ彼の人。
 腕には沙羅がいてさ。
 確かに短冊を何枚も朔がつけていて。
 ・・・たくさんお願いしたね。何だろうか?
 忘れ物があって少しだけ家に寄ったオレは、そのまま踵を返した。





「ただいまっ。・・・今日は遅くなっちゃったから、静かにしないとね〜」
 宮中の乞巧奠の手伝いもあって、帰りはいつもより遅く。
「おかえりなさい。お疲れ様でした〜」
 こんなに小さな声でも気づいてもらえて。
「うん。疲れるっていうより、暑いのがねぇ〜」
「そ〜ですよね。お風呂、準備出来てますよ」
 どうやら沙羅は寝ているらしい。
 今ならちゃんを独占できるんだけど、この埃まみれの体じゃなぁ。
 両手を広げたままで考えていると、君が飛びついてきた!

「景時さん!考え事?」
「え〜っと・・・考えてたけど・・・うん。ちゃんに触りたいな〜とか」
「な〜んだ。考える事ないのに」
 キラキラの笑顔でさらりと言ってのけられてしまった。

「あのね、お風呂に入ってから・・・短冊書きませんか?」
「そう、そう。書かなきゃね」
 笹は早めに準備したんだ。去年したから覚えてたし。
 オレだけ短冊に書く事が思いつかなくて。
 後で・・・と言って、まだ書いてない。

「ぱぱっとキレイにしてくるね!」
 風呂はね、ひとりの時は汚れが落ちれば十分。
 まさにカラスのなんとやら。



「・・・景時さん・・・お風呂はのんびりするトコですよ?」
 ちゃんに髪を拭いてもらいながら簀子に座って笹を眺める。
「うん。でも、時間がもったいないからね。ちゃんはさ、何て書いたの?」
 なんとなく知りたくなって笹に下がっている短冊を探してみる。
「まだ秘密!」
「・・・秘密かぁ。オレは去年と変わらないなぁ・・・・・・」
 考えた割には変わり映えしない結果に終わってしまった。


 『ちゃんと、ずーっと一緒がいいです。  景時』


「今も一緒なのに、これが一番のお願いだよなぁ・・・・・・」
「景時さんたら。パパなのにぃ・・・・・・」
 ちゃんに短冊を見られながら笹の一番高いところへ結びつける。
 ついでとばかりに、今朝、朔がつけていた辺りの短冊を手に取ると───


 『沙羅ちゃんがお裁縫上手になりますように。  パパとママ』
 『沙羅ちゃんがお料理上手になりますように。  パパとママ』
 『沙羅ちゃんが美人になりますように。  パパとママ』
 『沙羅ちゃんが歌が上手になりますように。  パパとママ』

 他は省略するとして。沙羅についてばかり大量に願われていた。
 

「ママは・・・沙羅ちゃんだけ?」
 ちゃんを見ると、真っ赤になって抱きつかれてしまった。

「あのね、あのピンクのが私のなの」
「ふうん?どれ、どれ・・・・・・」
 桃色の短冊を手にとって裏返すと、思わぬ事が書かれていた。


 『もうひとり家族が増えても仲良く、楽しく、暮らせますように。  


「これって・・・・・・」
「沙羅に・・・弟か妹。たぶん・・・弟・・・かな?」
 蝸牛のお告げに間違いはなかったようで。

「うわっ!大丈夫?体・・・苦しいとか、だるいとか・・・・・・」
 馬鹿みたいに急に慌ててちゃんの全身に触れて確認してしまった。
「あの・・・二人目だから・・・・・・大丈夫デス。初めてじゃないもん」
「そっか。・・・ありがとう」
 苦しくないよう、そっと君を抱きしめる。
 七夕様の夜、今年も最高の贈り物をもらった。






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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!

 あとがき:二人目をって事でv 次は史実通りのあのお名前を拝借!     (2006.09.27サイト掲載)




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