沙羅  ≪望美side≫





「あのお花がね、沙羅の名前の由来なんだよ?」


 真っ青な空に白い雲。
 深い緑に白い花。
 庭に降り立って、夏椿の花を眺める。
 木陰は涼しい・・・かな?
 うん。
 これで風が吹いたら最高に涼しい。

「きゃっ!う〜〜〜」
 わかるのかな?
「わわっ!ダメよ〜、沙羅ちゃん」
 ちょっと油断すると、顔を弄られちゃって。
 口でも鼻でも目でも、沙羅の指に気をつけないとた〜いへん!

「いいお天気だね〜。そうだ!池を見に行こうか?」
 今日は暑いから、白龍たちが遊んでいるかもしれないし。
 のんびり庭を歩いて、白龍が作った池まで歩いた。





「神子!今、神子にも水を用意しようと思っていたところだよ?」
「・・・桶に?」
 白龍の手には桶。
 まさかこのお水を全部飲ませようとか〜?
 ・・・白龍ならありえるわ。

「違うよ。朔と黒龍が神子の部屋の前に盥を用意している。暑いから、足をつけたら
涼しいと言っていたよ?」
「そうだったんだ〜。庭をお散歩していたから、気づかなかったよ」
「うん!沙羅も、水遊びが出来るよ。・・・ここではまだ危ないと朔が言うから」
 そうね、池はまだ危ないわ。
 それに、ここだと日差しがね。
 沙羅ちゃんにはまだキツイかな。

「ありがとう、白龍。それじゃ、お部屋の階に戻ってようかな」
「うん!すぐに私も行く」

 うふふ。嬉しいな〜。
 皆が沙羅ちゃんを大切に思ってくれてるんだな〜って。

「沙羅ちゃん。お水、キラキラできれいだよ?沙羅ちゃんもお洗濯好きになりそう」
 もう少し大きくなったら、沙羅ちゃんを背負ってお洗濯してみようかな。
 お水は怖がらないし、きっと大丈夫だと思うんだけど。
 大きくなった沙羅ちゃんを想像しながら部屋の前の庭へ行くと───



。今日は、ここで水遊びはどうかしら?最後にここへ水を撒いたら涼しくなるし」
「うん!今ね、白龍に聞いて。それでこっちへ戻ってきたの。ありがと〜、嬉しい!」
 階に腰掛けると、白龍が桶に水を入れて運んで来てくれた。

「これ・・・沙羅はこっちがいいよ?盥に落ちたら大変だから」
「うん。ありがと。沙羅ちゃん、濡れてもいい支度にするからね〜〜〜」
 腕を出させてあげると、桶にいきなり両手を入れて振り回すものだから───



 パシャンッ!



 飛び散った水が日の光を反射してキラキラ。
 それが楽しいらしくて、沙羅ちゃんが益々水面を叩いて喜ぶから、皆が水浸し。



「・・・ごめんね〜、朔、黒龍、白龍。しばらくはコレ止めないと思う」
 一度気に入ると長いの〜。
 こういうトコって、景時さんに似たのかなって。
 発明で気になると部屋に篭っちゃうもん。あんな感じ。

「大丈夫よ。この天気ですもの・・・すぐに乾くわ」
 朔が軽く首を振るったら、またまた飛んだ水に光があたる。

「きゃっ!う〜、う〜」
「こぉ〜ら!朔お姉ちゃんに水をかけちゃったからなんだから〜。めっ!」
 朔がずぶ濡れになっちゃうじゃない。

「ごめんなさい。何だか私が煽ってしまったわね・・・・・・」
「いいの、いいの。沙羅ちゃんの事は気にしないで?髪から跳ねた雫が光ってキレイだったからだし」
 朔の髪からつるんって雫が空に舞ったの。
 沙羅じゃなくても、キレイだな〜、もう一度みたいな〜って思ったと思う。
 黒龍の耳、赤いし。


「朔。風邪ひいたら大変だから・・・髪、拭いた方が・・・黒龍!朔の髪、拭いてあげて?」
 黒龍を呼び寄せて、乾いている手拭を渡す。

「神子・・・私は?」
「白龍はこの際沙羅ちゃんに付き合ってあげて?後で拭いてあげるから」
「うん!」
 あ〜〜〜、頭から被るほどには遊ばなくていいのよ。
 あたりに飛び散る水飛沫に、太陽の光があたる───



「うわ〜〜〜、何?今日は水浴びとか?」
「景時さん!お帰りなさいっ」
 嬉しいっ。景時さんが早いよ〜!

「え?あ・・・その・・・うん。寄り道だけなんだ・・・ごめんね?うわぁ!沙羅ちゃ〜ん・・・・・・」
「ごめんなさいっ。私が目を離したから・・・・・・」
 両手を桶に突っ込んだ沙羅が飛ばした水が景時さんにかかっちゃった!

「ん〜?まあ・・・着替えるつもりで寄ったから大丈夫。・・・ついでに、沙羅と遊んじゃえ〜!!!」
「あ゛・・・・・・」
 景時さんと白龍と沙羅ちゃんの組み合わせは、かなり危険。
 
「どうせなら、頭から被っちゃお。ほ〜ら!ぷるぷるぷる〜〜〜」
 景時さんたら・・・朔の視線に気づいてよぅ。
 沙羅は大喜びだけど・・・ピンチ、ピンチ、ピーーーンチ!!!


「兄上!馬鹿やっていないで、さっさと着替えて仕事に戻ってくださいませ!!!」
「はいぃぃぃっ。いま、すぐに!!!」
 きた。
 耳にキィーーーーンとキタよ、朔。


「きゃふ、きゃふふ!!!ぶ〜〜〜」


「・・・景時さん。沙羅にはウケてるけど、その格好で上がらないで下さいね」
 前髪も降りちゃって可愛いけど、その服で簀子を歩かれると迷惑よ。
 もう一度雑巾がけしなきゃだもん。
「あはは〜、ごめんね〜?・・・沙羅ちゃ〜ん。パパ、また怖い朔お姉ちゃんに叱られちゃった」
「兄上!!!」
 もぉ〜、景時さんたら。朔に叱られなれちゃって堪えてないし。


「景時さん?着替えたら沙羅ちゃんの抱っこはダメですからね!!!」
「は〜い。あ・・・髪が・・・・・・」
 地面に滴り落ちる水滴。
 着替えても無駄な気もするけど、着替えたら今度は濡らしちゃダメだよ!
 沙羅ちゃんはもう少しこのまま遊ぶだろうから、後でまとめて着替えるからいいとして。
「私はまだ遊びたい!」
「・・・白龍まで髪を濡らしちゃって〜。後で着替えなきゃだね」
 困ったちゃんな二人に、黒龍が手拭を黙って出してくれた。

「・・・ありがと、黒龍」
「いや・・・も苦労をするな」





 それこそ、かなり返事に困ったある夏の日の午後。
 本当はこういうのが楽しくて幸せっていうんだよ?
 言わなくても、わかってくれたかな、黒龍も。
 伝わってるといいな。






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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!

 あとがき:毎日ふざけたりできる余裕があるっていうのがイイ。そんな日常のしあわせの一コマv     (2006.08.27サイト掲載)




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