雨音 ≪望美side≫ 葉に雨が落ちる音。 こんな小さな音が聞えるほど、この世界には雑音が無い。 小さい時は、静かだと怖いな〜とか思っていたけれど。 今ではこの静寂が安心するんだから、不思議だよね〜。 「沙羅ちゃん。今度は・・・どっちかな〜?」 私が作ったお人形で沙羅と遊ぶのが楽しくて。 つい作っちゃった景時さん人形なんだけど。 自分で言うのもなんだけれど、よくできちゃったのよ、これが。 朔も驚きの出来栄え。 『は本当に物好きねぇ・・・・・・』 頬に手を当てて、しっかり溜息吐かれちゃった。 物好きの意味はわからないけれど、凝ってるでしょ? 似てるよね〜、これ。 そして、ここまで作ったら次も作るでしょう。 「今度は・・・どっちかな〜?」 「ぶぶぅ!」 はぁ・・・・・・。 沙羅ちゃんはどうしてもパパが好きなのねぇ。 せっかく沙羅ちゃんの為に私の人形も作ってみたのにぃ。 ポイってされちゃうんだよね。 「ただいま〜」 「あ!景時さんだ。沙羅ちゃん、パパだよ〜」 沙羅を抱えてお出迎えに行けば、景時さんがもう上がっていた。 「おかえりなさい」 「うん。ただいま。沙羅もいい子にしてたかな〜?」 景時さんたら、めろりん顔だわ。 お外でその顔しちゃダメですからね? 「!少しいいかしら」 朔が慌てて私を呼びに来た。なんだろ? 「うん。いいよ。景時さん帰ってきたから・・・沙羅をお願いしますね!」 「任せて〜。沙羅はお部屋で遊ぼうな〜」 抱き方も板についた景時さんに預けて、朔の後を追いかけた。 「・・・白龍。何したの?」 「私は何もしていないよ?」 信じたいけど、コレをみてそのまんま信じるのは無理よ? 「黒龍もいたんでしょ?」 「ああ」 「ああじゃなくて・・・・・・」 どうしたら裏庭に池が出来ちゃうのよ? 水は綺麗なんだけど・・・何気に深そうだわ〜。 この二人がダメならば─── 「朔〜、これ何?」 「そうなのよね。私にも何が何だか・・・・・・黒龍が言うには、神泉苑と 繋がっているらしいの」 「・・・はぁ〜?!なんでそんなトコと・・・・・・」 神泉苑って神泉苑よね? そう近い場所じゃないわよ?掘るっていうレベルじゃないし。 「こんなの誰かに見つかったら・・・それに、落ちたら困るし」 「それが・・・白龍ったら、譲殿に聞いてしたらしいの」 「・・・譲くんが犯人なんだね?」 何を言ったのかしら。 白龍が真に受けちゃうのなんて知ってるでしょー!!! 「その・・・昨年の夏はが暑くて大変だったから・・・ぷうるというものが あれば少しはとか・・・・・・」 頭がクラクラした。 要するに、これは私の為でプールだと言いたいのね? 朔には“プール”がわからなかったんだ〜。そうだよね。 「・・・白龍。ダメだよ、龍神のチカラをこういう事に使っては」 手招きして呼び寄せる。 項垂れているけどこれだけは言い聞かせないと! 「神子・・・喜ぶと思った・・・・・・それに、夏には水が・・・・・・」 「水が?」 確かに水汲みは大変なんだけどね。 それはソレ。 「この辺りに住まう者たちも、これならば楽に水が手に入る・・・・・・」 「ふぅ。そういう事。じゃあ、これは白龍がしたんだね?」 白龍がここに来て頷いた。 これじゃ叱れないなぁ。 「いいよ。ただし!人が溺れないようにしておいてね。夏になったら水遊びしようね」 「ほんとうに?神子、大好き!」 あ〜、もう。 白龍って可愛すぎだよ。 誰かのためにってなると頑張っちゃうんだから〜。 「朔。水はありがたいものだし。ココなら確かに近所の人も入っていいでしょ」 「・・・そうね。そうしましょうか」 子供達が集まるならいいんじゃないかな。うん。 一件落着! 濡れた髪を乾かして、着替えをしてから景時さんと沙羅ちゃんが待つ部屋へ向かった。 「よかった〜、ちゃんが戻ってきてくれて。沙羅がさぁ、拗ねちゃって」 「・・・お人形ありましたよね?」 そう、そう。 いつも喜ぶ景時さん人形と、ポイされちゃう私に似せて作ったお人形が。 「う〜!う〜!」 「はい、はい。どうしたの〜?コレ、私に似てないのかなぁ?」 急いで景時さんから沙羅を受け取ってあやすと、機嫌も直ったみたい。 景時さんが人形を手にとって眺めている。 どうかな? 隣に座って表情を窺ってみた。 「これ・・・似てると思うよ。うん」 「でしょ〜?頑張りましたもん。着せ替えも出来るんだよ?」 着物、ちゃんと取り替えられるんだから! 「でもさ、毎日ずっと一緒が普通だと不要だよね。それこそ、ニセモノの出番無しっていうか」 「あ・・・・・・」 そっか。 沙羅にしたら、ママが二人になっちゃってたのか〜。 どうりで反応薄いなぁって・・・・・・。 「と、いうわけで。これはオレが貰お〜っと。守護邸に持って行こう、うん」 「どうしてそうなるんですか〜?こっちと離したら可哀想ですよ?」 景時さん人形が・・・景時さんだけになっちゃう! 「え?だって、そいつら家にいるんだもん。ホンモノのちゃんといるんだからいいでしょ。 それに、オレが帰ってくればちゃんも景時人形要らないしぃ。ね?」 自分のコト、そいつら扱いしちゃって。もぉ! 「わかりました。私を持っていってもいいですよ。ただし!」 「ただし〜?」 そうよ、必要でしょ?作っちゃうんだから!!! 「明日、沙羅ちゃんも作るから。沙羅ちゃんもだよ?」 「もちろん!嬉しいな〜。皆に自慢できちゃうね」 自慢かどうかはわからないけど。 とっても家族を大切に思ってくれている貴方だから。 いつでも、どこでも見守っていてね? |
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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!
あとがき:沙羅ちゃんは、ママも大好きですよ!普段いるはずのママがいないと拗ねるくらいに。 (2006.08.12サイト掲載)