風薫る  ≪望美side≫





 そうなのよね〜〜〜。
 この木々が緑になって。
 風がすいぃ〜っと爽やかになると、次に来るのが梅雨。
 この時代、恵みの雨だもの。
 それにぃ・・・お家から出なくても十分広くって。
 かくれんぼでも、かけっこでもできちゃうよ?
 子供が小さいうちは、お家の中で何でも間に合っちゃいそう。
 だけど!
 お外は別格なのよ。やっぱり気持ちがイイの。



「沙羅ちゃん。今日は、内緒でパパのトコ行ってみちゃう?」
 ずぅーっと考えてたの。
 最近外出してないぞぉ〜って。
 皆が来てくれるから、会っていないわけじゃないんだけど。

「ぷふぅ・・・・・・」
「行きたいんだ〜。そうだよね。私もなの。行こうか!」
 花嫁修業時代に心配かけちゃったから。
 今度は失敗しないもんね〜。

「先生、来てくれるかな?」
 預かっている鳥を空へと放つ。
 先生との約束の鳥。
 あの鳥が先生に来て欲しい時の合図なの。

「沙羅ちゃんはお出かけの用意しなきゃだね。たくさん荷物あるなぁ」
 お出かけとなれば、沙羅ちゃんの荷物がたくさん。
 どこで何があってもいいようにしなきゃだもの。
 ベビーカーとか、景時さんに作ってもらおうかな〜。
 そうすれば、お散歩も少しは腕が楽かも。
 ・・・ちょっとだけ修行になると思ってるのは沙羅にはヒミツ。
 沙羅ちゃん、最近重いんだよね〜。





。何をしているの?」
「あ、朔。あのね、内緒で景時さんのところへいこうかな〜って」
 いつも朔ってタイミングいいの。
 思えば、内緒で新婚旅行の荷造りしてた時も見つかったよね〜。
〜〜〜」
「朔も行く?先生がもうすぐ来てくれるんだけどね?」
 叱られる前に、大切な事は言っておこ〜っと。
 ちゃんと考えてるもん!
「・・・仕方ないわね。私も行くしかなさそうね?」
「朔だって行きたいでしょ〜?沙羅ちゃんも外は嬉しいと思うの」
 庭も十分広いんだけどね。
 沙羅ちゃんにとっては、世界一周並みの大冒険だよ!きっと。
「もう!に言われると、ついそんな気がしてしまうわ。まだ話せないのに」
 うん。確かに言葉にはなっていないけど。
 それでも、表情とかあるもん。
「わかるよ。沙羅はなんとなくパパが一番好きっポイの。景時さんがお風呂に
いれると、めちゃ嬉しそうにゆらんって大人しいもん」
 水に浮いてる感覚が好きなのか、パパの手が安心なのかわからないけど。
 とにかくふにゃふにゃ〜って楽しそう。
 お風呂嫌いじゃなくて助かっちゃった!
「はい、はい。沙羅ちゃんの為ってことにしておきましょうね」
「あ〜〜。それじゃ私だけが景時さんに会いたいみたいだよぅ・・・・・・」
 ちょっとそうかも。
 景時さんの真剣な顔、見たいんだぁ。
 お家だとすぐにニコッてなっちゃって、見られないんだもん。

「違うの?」
「・・・そ〜です。真剣な景時さんを覗き見したいの」
「覗きの手伝いならば帰るぞ?」
 音もなく先生が立ってた!

「先生!そういう覗きじゃありませんっ。景時さんの・・・そのぅ・・・真剣な
顔が久しぶりに見たい・・・なぁ〜〜〜って」
 リズ先生ったら、今おやおやって顔したわ。間違いない!
 目だけで十分わかっちゃうんだから!

「・・・ならば仕方ない。供をいたそう」
「お願いします!先生が来てくれたら、叱られないです」
 誰に・・・とは言わなかったけど、わかっちゃったみたい。
 景時さんに心配かけない、九郎さんに叱られないにはリズ先生よ。



 先生に沙羅ちゃんの荷物を持ってもらっちゃった。
 沙羅ちゃんを抱いてふらふら〜と守護邸を目指してお散歩。
「お花が咲いてる〜〜〜」
 シロツメクサって・・・あるんだ!驚き〜。
「沙羅ちゃんには・・・まだ早いかな。もう少し大きくなったら花冠作ってあげる」
 一緒に白いお花を見てからお散歩続行。



・・・もう少し真っ直ぐ歩けないかしら」
「え?酔っ払いさんみたい?」
「・・・そういう意味ではないのよ、そういう・・・・・・」
 あらん?朔ったら、どうしちゃったのかなぁ?
 ようやく周囲の視線に気づいちゃった!
 そうだよね。前はあんなに景時さんとお散歩してたのに。
 お家から出たのって・・・・・・何ヶ月単位ぶりになってない?



「こんにちは〜!あのね、沙羅ちゃん生まれたの!!!」
 子供から大人まで、全員にまとめて手を振ってみちゃった。



「わ〜〜〜、神子様見せて〜〜〜」
「おめでとうございます。私たちも・・・・・・」
 うわわっ。囲まれちゃった。
 ま、いっか!仲良しさんだもんね、皆。

「ちっちゃ〜い・・・・・・」
「そうだよ〜。みんな生まれた時はこうだったんだよ?」
「そうなの?」
 さすが女の子は赤ちゃんに関心があるみたい。
 ままごと気分なのかな〜。
 自然に小さいモノを大切にしたいって思うみたいだね。





ちゃん?!朔?」
!朔殿!女人二人で・・・・・・」
 やだぁ・・・まぁ〜たこのパターンなの?
 どうして九郎さんと景時さんが見回りの時に限って・・・・・・。
「馬鹿者っ!沙羅まで連れて・・・何かあってからじゃ・・・先生?!」
 よかったぁ〜。先生登場よ!
 もっと早く姿を見せてくれればいいのにぃ。
「九郎・・・それくらいにしなさい。神子は景時に会いたかったそうだ」
 やだ!そんな事バラされ・・・・・・。

「は?景時・・・・・・景時!お前は家に帰ってないのか!!!」
「ないっ!断じてそんな事は!!!ない、ない、ない、ないぃぃぃぃ!」
 あら?なんだか話の方向が変よ?

ちゃ〜ん。朔ぅぅぅ。何とか言ってよ〜〜〜」
 かっ・・・可愛いぃぃぃっ、景時さんっ。
 九郎さんに必死に言い訳してる〜。
 先生の言葉って短い分、時々足りないのよね。
 でも、おかげでめちゃ可愛い景時さんを見られちゃった!

「・・・兄上は、九郎殿にそう思われるお心当たりが?」
 うぷぷっ。相変わらずいいツッコミよ、朔。
「ないよぉ〜、信じてよ〜〜〜」



「沙羅ちゃん。パパって・・・可愛い人だよね〜」
「う・・・う〜〜〜」
「あ、そっか。沙羅ちゃんに真剣なパパを見てもらいたかったのに、脱線
しちゃったね。ごめんね〜。真剣だとカッコよすぎちゃって困るんだよ?」



 あら?何かしら。この、静かな間は・・・・・・。



・・・そう大きな声で惚気るのは・・・・・・」
 あらら?そんな大きな声でした?
「そうだぞ、。困るほど景時が格好いいというのは・・・・・・」
 なあに?その疑ってるような視線は。
「神子・・・とにかく、人目を引きすぎだ。静かになさい」
 先生まで。実は照れてません?



「そのぅ・・・うん。ちゃん。沙羅、重いでしょ。はい」
「あのぅ・・・そのぅ・・・・・・は、はい」
 とりあえず沙羅を景時さんへ。
 いいのかなぁ〜。世間では軍奉行さんなんだよ?
 このままだと、娘にめろめろりんなパパ姿を披露になっちゃうよ?



「景時。帰ってもいいぞ」
「いやぁ〜。だって、ちゃんたちは散歩中だから。予定通りはどう?」
 景時さんが目で合図してくれた!
 そうなの。実は一緒に行けたらな〜って。

「お母様のおにぎりお弁当持参でお邪魔してもいいですか?お昼に間に合う
ように行こうと思っていたところなの」
 ね〜〜、沙羅ちゃん!
 ここまできたら、行きたいよね。

「そ、そうか。ならば・・・・・・このまま歩きで行くか」
「うん!」
 先生がいると、九郎さんたら稽古をつけて欲しいから素直よね。
 ちゃっかり、しっかり返事をして。
 景時さんと並んで歩くの。




「ぷふぅ〜〜〜」
「お!沙羅ちゃんも気持ちいい〜?いい風だね〜〜〜」
 景時さんの前髪が楽しいんだと思うけどなぁ〜。
 そのうち掴まれちゃうんだから!
「懐かしいですね。皆で歩くのって」
 九郎さんが先頭で。先生がさり気なく最後尾っていうのもそう。
。沙羅ちゃん、かなりご機嫌のようよ?」
 景時さんの肩越しに、朔が沙羅の相手をしてくれていて。

「えへへ〜。やっぱり外は特別だよ。でもね、皆と一緒に歩いているのが
一番の特別なの。いつか沙羅ちゃんも連れて熊野に行きたいね!」
「大きな夢だこと。は元気ね」
 そんなに笑わないでよ〜。
 戦の旅は辛かったよ?だから。
 今度は楽しい旅がしたいんだ〜。
 あれれ?景時さんの真剣な顔見てないぞぅ。
 次の機会でいいや。



 いつか皆で温泉旅行が叶うといいな───






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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!

 あとがき:あの爽やかな日差しと気候はどこへ?!っていうくらい一瞬なのが薫風v     (2006.07.19サイト掲載)




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