桜雨 ≪望美side≫ せっかく桜が咲いたのに。 ど〜して散り際って、雨が降っちゃうんだろう? 春色に雨の雫が不思議な風景。 何となく・・・寂しそうに見えるよね。 「沙羅ちゃん。昨日は楽しかったね?」 昨日はお庭で仲間たちとぷちお花見。 沙羅ちゃんはあまり遠出ができないから、お庭の桜の下で春の宴。 花弁が舞うのを沙羅ちゃんが視線で追いかけて声を出すの。 「う!・・・・・・う〜、う!」 首が少し動くようになったから、あちこちで動くモノが気になるのかな。 「見えてんのか〜?」 将臣くんが沙羅を見て笑う。 見えてますよぉ〜だ! 音だけじゃなくて、動くものにも反応するもん。 「譲!これ・・・とても美味しい!」 どんぶりサイズの蜂蜜プリンに舌鼓を打つのは白龍。 確かにそれだけ食べられたら幸せだわ。 黒龍は控えめに普通サイズのプリン。 そうね〜、朔の隣をキープしているのが可愛いの。小さいのにね? 朔を攫われないように必死。 考えようによっては、皆お年頃だし。 黒龍にとってはライバルなんだろうな〜〜〜。 でも、食べてるのはプリン。アンバランスが可愛いんだ。 少しだけお酒が入ってご機嫌なグループも。 「沙羅ちゃんに覚えてもらえるようにマメに通わないとね?」 ヒノエくんが沙羅に拾い集めた花弁をもう一度降らせて見せてる。 「仕事をしないような男は、沙羅殿も願い下げだろう」 冷静に敦盛くんがいいツッコミ! 「まあ、まあ。甲斐性ナシともなれば、初めから認めてはいただけない でしょうし?有利に運ぶには、そういう助言はしない方が・・・ね?」 こちらもいつも通りに、さりげなく手厳しいんだわ〜。 熊野の三人組って密かに呼んでるんだけど。 いい組み合わせよね。 それに引き替え、先生と九郎さんは黙って時々盃を口元へ運ぶだけ。 渋いんだわ〜。 あれってお酒だからいいけど、お茶で縁側だったらお年寄りじゃない? 別に・・・先生がお年寄りって意味じゃないけど。 「先輩、何か食べたいものありますか?取りますよ」 「ありがと!譲くん。大丈夫だよ」 譲くんって、・・・・・・専業主夫街道まっしぐら! 働き者なんだけど、方向が間違っているような・・・・・・。 確かに、頼りにしちゃってて悪いな〜とか思うんだけど。 将臣くんが養ってるんだが、世話かけてるんだか。 不思議な兄弟関係だよね〜。 一番面白かったの、景時さんだけど。 そんなに意識して言ったわけじゃないのに。 景時さんに抱っこされてるのは私。私が抱っこしているのは沙羅。 何かがヘンな状態だったけど、仕方ないの。 だって、つるりと言っちゃったんだもん。 『沙羅ちゃんの事が大好きだから、みんなで来てくれたんだよ〜』 まさか、景時さんがあんなに過剰反応するなんて・・・ね。 『ええっ?!沙羅はパパが一番だよね?ね?』 う〜ん。どうしてそんなに必死になっちゃうかな〜? 「・・・・・・どうなんだろうね?将臣や譲の世界の父親ってこうなのか?」 その親指で景時さんを指すの止めてよ、ヒノエくん。 「これは違うだろ。こっちの世界じゃねぇの?」 それも失礼よ、将臣くん。違うって、特殊って意味? 「こちらでは・・・ないでしょうね。家にもよるでしょうが」 敦盛さんまで! 「お前たち、失礼だぞ。景時は景時なんだから、いいんだ」 「そうだよね!九郎さん。家はこうなのっ。いいの、優しいパパで嬉しいもん。 沙羅も嬉しいよね〜〜〜」 九郎さんって、時々ズバッといい事言ってまとめるのよね。 ほら、先生も弁慶さんも、成長したな〜って感じで九郎さんを見てるよ。 「う〜〜、う・・・・・・」 ほぉ〜ら!沙羅だって九郎さんに賛成なんだから。 「・・・オレはオレかぁ・・・・・・そっか」 頷きながら沙羅を見つめる景時さんの視線は穏やかで。 楽しいお花見の一日だった。 「さ〜て。今日はパパは遅くなりそうだから。沙羅ちゃんは先にお風呂しようね」 景時さんの帰りが今じゃないって事は、遅くなりそう。 少し肌寒いから、早めに暖かくして寝せないと風邪ひかせちゃうもんね。 昨日は天気よかったのになぁ。 全部を少しだけ早めにした今日。 景時さんの帰りは、いつもよりちょっぴり遅めだった。 「たっ・・・ただいま〜!間に合ったかな〜?」 息を切らせて景時さんが帰ってきた。 「お帰りなさい」 髪がへにょんな景時さんだ。すっかり冷えちゃってる。 「ただいまっ。・・・沙羅は?お風呂まだ?」 ・・・間に合ったって・・・その間に合っただったんだ。 どうしよ。でも、嘘吐けないしぃ。 「あの・・・今日は寒かったから、先に沙羅だけお風呂済んでるの。眠っちゃったから、 今だけ朔に看てもらってて・・・・・・」 「あ・・・そ、そうなんだ。うん・・・少し遅くなっちゃったしね。そっか」 顔色が一瞬だけ青くなってた! 何か隠してるでしょ?わかるのよ。妻の勘ってやつよ。 「景時さん。隠し事はよくないですよ?ココ・・・痛いでしょ」 胸の辺りを軽く叩くと、景時さんたら逃げようとした! 「そ〜んな事ないよ。気のせい、気のせい。お腹空いたな〜」 むむぅ。ムカツキ。 もうね、強行突破する! 「・・・お風呂っ。お風呂に入りましょう!こんなに冷えちゃってるし。私もまだだから 一緒に!はい、お風呂っ」 「ちゃん?!」 冷え切ってる景時さんの手首を掴んで、ぐいぐい引っ張ってお風呂に連行してみた。 有無を言わせず、景時さんの服を脱がせまくる。 「うわぁぁ!ちゃん!ちょっと待った!!!」 「待ちません!はい、お風呂っ。こんなに冷たくなってて、何言ってるんですか」 景時さんの背中を押して、さっさと湯船へご案内。 「いいですか?のんびり百まで数えて下さい。それまで出ちゃダメ!」 「・・・はい」 大人しくなった景時さんをお風呂場へ置いて、急いで朔の部屋へ向かった。 「・・・朔。いいかな?」 「ええ。どうぞ」 お布団でぬくぬくで眠っている沙羅。 その隣に座っている朔の正面にまずは座る。 「あのね、景時さんがヘンなの。だから・・・今日ね・・・じゃなくて。今晩、沙羅を 看てもらってもいいかな?その・・・今ね、無理矢理お風呂に入れてきたの。それで、 え〜っと・・・・・・」 一緒に入るって言い難いなぁ。困っちゃったなぁ。どうしよ〜〜〜。 「うふふ。いいのよ、気にしないで?頼りにならない兄上でごめんなさいね」 「ちっ、違うの!たぶん私が悪くって。だから・・・そのぅ・・・うん。今日だけ。 今日だけお願い!」 眠っている沙羅にも心の中でお願いのポーズをしてからお風呂に戻る。 朔にはいつも迷惑かけっぱなしだよぅ。ごめんねっ。 急いでお風呂に入る支度をした。 「はちじゅ〜にぃ〜〜、はちじゅうさぁ〜ん!あ、ちゃん?もう少し早く数えても いいかなぁ?なんだか茹ってき・・・・・・ええっ?!一緒って、ほんとに?!」 振り返った景時さんが、思いっきり湯船に沈んでた。 私、嘘つかないよ?背中流すだけなんて言ってないもん。 ちゃんと“一緒”って言いました! 「景時さん!大丈夫?」 すっかりお湯に隠れている景時さんを引っ張ってみた。 「・・・その・・・沙羅は?」 「今日は朔に頼んできました。だから、沙羅じゃなくて私が一緒にお風呂です」 景時さんの目の辺りを片手で隠しながら、ちゃっかり湯船にお邪魔しま〜す。 「久しぶり・・・だね?」 抱っこ好きぃ。落ち着く。 「うん。それに、この方が話しやすいかなって。景時さん。ごめんね?沙羅ちゃんの お風呂、楽しみにしてたのに。今日は寒かったから、早めに暖かくしてあげたくて」 景時さんに意地悪したみたいになっちゃったもの。 まずはゴメンなさいしなきゃ。 「あ・・・えっと・・・ちゃんが謝る事なんてないんだ。・・・笑わない?」 話す気になったの?!もしかして。 「笑わないですよ」 「え〜っとね。オレ、いちおう働いてるでしょ?」 一応って・・・・・・。 「しっかり働いてますよ?一応じゃないです」 「ありがと。そう言ってもらえると・・・で、オレだけ家にいない時間が多くて・・・・・・」 読めてきた。もしかして、仲間ハズレな気持ち? 「でさ、沙羅に忘れられたら悲しいな〜とか・・・だから、お風呂はオレの役目っていうか。オレ をちゃんの次でいいから認識して欲しいっていうか・・・・・・」 これは・・・可愛すぎて困るよぅ、景時さん。 沙羅に覚えて欲しいだなんて! 「景時さん。沙羅は景時さんが大好きだし。お風呂だって、必ずとか無理しなくてもいいですよ? お風呂以外だって色々あるし。お布団で隣にいるだけだって・・・ね?それに・・・・・・」 「それに?」 そうなのよね〜。私も悪いなと思ってたの。 「私も働けば、景時さんは今の半分のお仕事でへ〜きですよ、きっと!そうすれば沙羅といる時間も たくさんできるし」 「だ、ダメだよ、ちゃん!そんなのダメ!外になんて出なくていいから!」 はやっ。もうダメ出しされちゃった。 「・・・お裁縫も上手になったし。剣術だって、少しは・・・・・・」 「ダメったら、ダメ!・・・閉じ込めたい訳じゃないけど、心配で死にそうだからダメ!!!」 死にそうって・・・それは私も困るけど。 「ちゃんに何かあったら、それこそ大変だから嫌だっ!」 あの・・・子供になってますよ? 「でも、沙羅とたくさんいられるよ?」 「毎晩子守唄歌って聞かせるし。朝もたくさんぎゅってするし。お風呂は・・・頑張って早く帰って 出来るだけオレが入れるし。とにかく!ちゃんが働くのはダメ!!!」 「じゃ、沙羅の件はいいの?」 ここが景時さんの心配ポイントだと思うの。 私が働けば解決しそうなんだけど。 私が働くのも嫌っていうなら、しない方がよさそうだし。どうしたらいいかな〜? 「・・・・・・母上や朔が先に沙羅に名前を呼ばれたら・・・悔しいっていうか・・・・・・」 あ!私ってば、また勘違いしてた。そういう事だったんだ! 「景時さん。もしかして、この前の事ですか?だったら、あれはいつもじゃないですよ?」 「へ?」 お母様と朔と私で沙羅ちゃんと遊んでいた時の事よね。 あれが毎日かと思っちゃったなら、この心配ぶりもわかる気がする。 「あの日は、お母様はお友達と市へ行くっていっていたのが都合が悪くなったとかで。朔は、白龍と 黒龍が譲くんについて行っちゃったの。だから二人ともお庭で沙羅ちゃんと遊んでくれたの。いつもはね、 私と沙羅ちゃんだけで。パパは今頃何してるだろうね〜って、のんびりしてるんだよ」 そうなの。私は家事もさせてもらえないくらいなんだよ。 二人とも働き者さんで。だから、いっつも沙羅ちゃんとお散歩とかお昼寝とか。 時々お洗濯物をたたんだりとか。とにかく、そんな感じで何もしてな〜いの! 「・・・そうだったんだ。オレ、てっきり皆で毎日沙羅と遊んでるのかと・・・・・・」 「え〜っと。二人とも私のお仕事全部とっちゃうの。だから私は沙羅と毎日遊んでいられるんですよ。 普通いないですよね〜、こんなのんびりしているお母さんって」 我ながら恥ずかしいくらい、毎日遊んでるんだもん。 だからかな〜。余計に景時さんだけ働いてるのが申し訳なくって。 「ちゃん。大変な事な〜い?その・・・こっちはさ、色々不便だろうし」 「なぁ〜んにもないですよ。逆に、こんなに何もしなくていいのかなぁ〜って」 「そんな事ない!沙羅の世話だって大変だろうし・・・その・・・遊ぶって、そればかりじゃないし」 あ〜・・・そういうのは、案外なんとかなっちゃうし、気にならないのになぁ。 「大変はないけど、私の心配きいてくれますか?景時さんがね、心配してるのが心配」 これは本当。 あまりにいつも通りだったから、今日まで景時さんの心配に気づかなかったよ。 「う・・・うん。その・・・いいんだ。よく考えたら、昨日、九郎にも言われたのにね。オレはオレで いいって。どうして間違っちゃうんだろうな〜、情けないね」 「情けなくないですっ!」 思いっきり景時さんの顔にお湯かけてみた。 「うわっ!」 「今日は仲良しの日にしましょうね。その前に景時さんの背中、流してあげるね」 久しぶりに景時さんと仲良しした。 一番がたくさんでもいいよね? だって、景時さんも沙羅も比較できないし。 それに、重大な問題が残っちゃってるもの。次は・・・男の子なんでしょう? まだまだ一番が増える予定ですからね! |
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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!
あとがき:雨は雨でも。桜雨っていい響きですよね!景時くん、念願のお風呂だったかな〜とv (2006.06.17サイト掲載)