春疾風  ≪望美side≫





 沙羅ちゃんは幸せだねっ!
 すっごい優しいパパがいるもんね。
 毎朝、引き剥がすのが大変なくらいだよ?


「沙羅〜!行って来るからね?母上と良い子で待ってるんだぞぉ〜!」


 無理があるよ、景時さん。
 ほとんど寝てるんですケド、沙羅ちゃんは。
 寝ていてもお構いなしで、ぐりぐりに沙羅に頬ずり。
 起きない沙羅もスゴイよね。
 あはは。・・・私に似ちゃったみたい。


ちゃん!アレして。アレ〜〜〜!」


 しっかり忘れないんだよね。
 いってらっしゃいのキスも。う〜ん。デキル。


「今日も元気に帰って来てね!・・・・・・vvv」
「・・・んっ。もちろんっ!今度こそ、行って来るっ!!!」


 ほんとうにぃ〜?今度こそだよ?
 これ、今日三回目だよ?
 油断すると、すぐに戻ってきちゃうんだから。
 ・・・・・・もう戻ってこないみたい。
 

「さぁ〜て!沙羅はママと少しだけ日光浴しようか」
 最近は、仕事らしい仕事もさせてもらえなくて。
 沙羅を抱っこして、家の中でウロウロとか。
 お庭でフラフラとか。
 運動不足な気がするなぁ・・・・・・。



。今日はどうするの?」
 家中が心配性なんだ〜。お母様も、朔もスゴイの。
 なぁ〜んにもしなくても、おしめも洗ってくれるし。
 ご飯も、私が献立考えるだけ。

「あのね、景時さんの着物を・・・・・・」
「いいのよ、そんなの。兄上なんて、何を着ていても同じだし」
 ええっ?!そんなぁ。
 景時さんって、さり気なくおしゃれさんだよ?
 
「えっとね、そのぅ・・・新しい着物を・・・・・・」
「私がするから!いいから、いいから。は簀子でのんびり・・・ね?」
 朔に背中を押されるまま、いつものように簀子に座る。
 


「・・・・・・沙羅。ママね、ちょっと退屈かも」
「・・・ふぁ〜〜〜」
「沙羅は違うのね。・・・だよね〜。大きな欠伸」
 寝てばかりいるのに、欠伸するんだ〜。
 まだまだ寝足りないぞってアピールなのかな?
 口が小さいから、めちゃ可愛い!
 歯って、いつ頃生えるのかな〜?なぁ〜んにも無いよね。



 沙羅をみていると、眠くなっちゃう。
 私も・・・ついつい・・・居眠り───





 ごごごご・・・・・・───



 何?!何か来るっ!!!
「沙羅!」
 慌てて揺り篭の沙羅を抱き上げる。
 だって・・・音がする。



 庭に土埃が舞い上がり、風が吹き抜ける。
 これって、もしかして?



「沙羅、大変!お部屋に戻ろう?」
 お洗濯物も大変だけど、沙羅が飛ばされちゃったら大変。
 春一番だよ〜〜〜。
 今日なら、今日って言ってよ!
 ・・・・・・こっちには天気予報がなかったんだ。
 無理だよね〜。うん。



!大丈夫?」
「うん、大丈夫。朔!お洗濯物!!!」
「あっ!そうね。は中にいてね」
 え〜っと・・・何も出来ないのは心苦しいんだけど。
 仕方ないよね。


「あらら。沙羅の顔が大変」
 ・・・きっと、私の顔もよね。
 軽く濡れた手拭で拭いてあげた。
「ふぁ〜〜〜」
 気持ちいいのかな。よかった、よかった。


「景時さん・・・大丈夫かな・・・・・・」


 お天気が悪い時は大変なんだよね。
 秋も台風で大変だった。
 こういう時に悪い事しようなんて、最低だよね。
 そういう人を真面目な人たちが取り締まりしたりしなきゃだんて。
 しかもね、壊れたお家から人を助けたりとか、他にも大変なのによ?



「沙羅・・・パパ・・・早く帰ってくるといいね」
 返事が無いのはわかってるけど、ついつい話しかけちゃう。
 これって・・・半分独り言だよね?変かな?



 真っ暗になっても景時さんが帰ってこなくて。
 悲しくなって玄関でしゃがんで待っていた。







「たっだいま〜!沙羅のお風呂、まだ?だったらさ〜〜〜」
 ・・・・・・沙羅が先?!そ、そんなぁ。

「・・・・・・お帰りなさい・・・・・・」
「うん!ただいまっ。今日は風が強くてびっくりしたね〜。沙羅、泣かなかった?」
 差し出した手拭で、誇りだらけの顔を拭っている景時さん。
 髪なんてもう、へにょんってなってて。
 大変だったんだろうなあ〜って思うの。思うんだけど!

「・・・沙羅だけ?」
「へ?」
 ようやくこっちを向いてくれた。
 さっきから、沙羅ばっかり・・・ズルイよ。


ちゃん。もしかして・・・・・・」


 なあに?どうしてそんなに嬉しそうな顔になっちゃうの?
 意味わかんないよ、景時さん。
 私はね、怒ってるの!心配して待ってたのにぃぃぃぃぃぃ!!!



「なぁ〜んだ!オレさぁ、いっつもちゃんが沙羅に話しかけてるでしょ?羨ましくて、
羨ましくて。なんか、こう、仲間はずれ〜みたいな。ちゃんも、今、そんな感じ?」


 ・・・図星だぁ。これってヤキモチで、拗ねてるだけで格好悪い。
 私、お母さんなのに。


「困ったな・・・ぎゅ〜ってしたいけど、オレ、埃まみれだし。お風呂が先だね!」
 どんな時でも私を最優先してくれる景時さん。
 それなのに、またやっちゃった!

「私もお風呂まだだから、ぎゅってしましょ!」
 思いっきり飛びついてみる。
 こんなになるまで頑張ってたのに、帰った早々にゴメンね?


「え〜っと・・・それは・・・その・・・一緒にはいる?」
「景時さんのえっち!沙羅ちゃんのお風呂当番、景時さんなんだからっ」
 素早く景時さんの腕から逃げ出して、沙羅が待っている部屋へ駆け込む。
 だって、お風呂上りの沙羅をすぐに着替えさせないといけないもん。
 一緒は無理ですよぉ〜だ。


「沙羅ちゃん。パパ帰ってきたよ?お風呂入ろうね〜」
 きっと景時さんが待ってる。
 早く沙羅ちゃんを抱っこしてもらおう。
 
「ふわぁ・・・・・・」
 また欠伸してるね。
 景時さんにとっては片手サイズの沙羅ちゃん。



「せっかく春なんだから!楽しい事、たくさん考えなきゃだね」
 沙羅が笑う。退屈なんて言ってられないね!





 春一番が駆け抜けて、退屈虫を退治していった───






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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!

 あとがき:春一番。毎日暴風で大変だったなぁ〜って。     (2006.05.28サイト掲載)




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