もれなく  ≪景時side≫





 可愛いよなぁ〜〜〜、沙羅。
 ほとんど寝てるんだけどね。
 眺めてるの、飽きないよ───



「いらっしゃ〜い!なんだけど!!!今は寝てるんだ。少し待っててくれる?」
 気が利くというか、何というか。
 沙羅がすっかり可愛くなった五日目の午後、仲間が集まってくれた。 
 正直、最初の顔は判別不可能ではあったよな。
 そりゃあちゃんとオレの子だし?
 可愛いのには違いないけどさ。
 それは、それ。これは、これ。

「兄上!皆様に失礼ですわ。・・・こちらへどうぞ。すぐに白湯をお持ちいたしますわ」
 はい、はい。しっかり者さんだもんね、我が妹は。
 そうは言っても、沙羅ちゃんが寝てるのに動かしたら起きちゃうでしょ〜。


 『ふぎゃあ!ふぎゃあ!!・・・・・・』


「た、大変だ!泣き出してるよ。ちゃんが起きちゃうし、数えなきゃ!!!」
 いやもう、ちゃんと沙羅が寝ている部屋目掛けて駆け出した。





「・・・・・・が起きるのはわかるけど、数えなきゃ?」
 将臣が首を捻る。
「そうですねぇ・・・少し意味が解りかねますね」
 流石の弁慶にも、景時が残した言葉は理解に苦しむ。
 真相は間も無く景時によって明かされた。





「そぉ〜っと、そぉ〜っとね!」
 沙羅が泣いていても、戸は静かに開けなくてはならない。
 もう泣いていないから、ちゃんが起きちゃってる証拠ではあるんだけどね。
 沙羅が眠りかけていたら起こしちゃうからね!

「・・・ちゃん?」
「大丈夫ですよ?どうぞ」
 許可を貰ったので堂々と入るよ、オレは。
 そろりと部屋へ入れば、沙羅を抱えている人と目が合う。
 オレの大切な人。

「驚かせちゃいました?」
「そんな事ないよ。少しくらいなら元気な証拠だしね」
 ちゃっかりすぐ隣に座る。

「起きた時に静かで驚いちゃったみたい。いつもなら何か音がしてるから」
「そっか。今日はね〜、午後の一番静かな時間にお目覚めしちゃったからね」
 朝なら庭掃除の音とか、鳥の声とか。
 夕方もそれなりにざわめいているんだけどね。
 この午後の皆が一仕事終えた時間帯は静かだよなぁ〜。眠くなる。

「ね、オレが来るまでにした?何回した?」
 オレは常にこの件については譲れない。
 故に、出来るだけ一緒にいようと思うが、手伝いたい気持ちもある。
 よって洗濯をしてみたり、沙羅が喜ぶかな?と花を探してきたり。
 思ったより一緒に居られないのが悔しかったりする。

「何回って・・・そんなの覚えないですよ。二回くらい?」
「二回?じゃ、二回〜〜〜」
 オレはちゃんに頬を差し出す。
「もぉ!・・・パパの面倒はみられません」
 口では面倒はみられないといいながら、優しくオレにキスを二回してくれた。
 そう。オレの最近の最大のヤキモチ。
 ちゃんはやたらと沙羅にキスをする。


 『だって〜。可愛いんですもん。それにね、泣き止んでくれるんですよ?』


 頬を摺り寄せたり、キスしたり、ぎゅってしたり。
 ・・・とにかく!
 オレだってしてもらいたい事を沙羅はしてもらっている。
 そこで条件を出した。


 『オレにも同じ数してくれなきゃ嫌だ』
 『・・・・・・自己申告して下さいね?』
 『いいの?!』


 まさか承諾を得られるとは思わなくて。
 それから必死に数えている。
 時には数を多目に申告して。


「あ・・・皆が来てるんだ。沙羅、大丈夫かな?」
 よぉ〜〜く寝ていれば動かせるけど、眠りそうな時はまずいよな。
「わ!それじゃ行かなきゃ。お披露目だ〜〜。沙羅ちゃん、行こうか?」
 さっきは泣いていたのに、すっかり大人しく抱かれている。
 実に良い子だ!
「行けそう?無理して無い?」
「うん。沙羅ちゃんと一緒に寝てたし、大丈夫ですよ」
 沙羅を抱きかかえているちゃんを皆に見せたくないんだよな〜。
 すっごく幸せそうな顔してるんだ。
 でも沙羅を見せたい〜〜〜!これぞオレの矛盾した気持ち。





「うわ〜、ほんとに産んだんだな」
 いかにもちゃんの幼馴染の彼らしい。
「いらっしゃ〜い!沙羅ちゃんです!!!今はね、半分起きてるし機嫌いいんだよ」
 ちゃんが皆に沙羅を見せている。
 オレは素早くちゃんが座る場所を整えて、その肩に軽く衣をかけた。

「可愛いですね。将来は美人さんになりますよ」
 うわ、でた!弁慶の嫁にはあげないよ〜だ。
「ほ〜んと。沙羅ちゃんか・・・オレが景時と同じくらいになったら丁度いいかもな」
 ええっ?!ヒノエ君にもあげないって!
「先輩!不真面目なヒノエじゃなくて俺の方が!!!」
 うわ〜〜〜、譲君まで?

「ちょ〜っと待った!!!」
 さり気なく八葉の面々の表情を窺う。
 言葉にせずとも、気持ちは一緒ってやつ?!

「・・・あのね、沙羅は生まれたばかりなんだから。年の差考えてよ」
 そうだよ、譲君だって単純計算で年の差が十七歳だよ?
 リズ先生なんて、おもいっきり三十歳以上だし!!!

「景時さん。いいの、そんなの。沙羅ちゃんが決めるんだから。ね〜〜〜!」
 ちゃんが沙羅にキスした!
「あっ!オレも、オレも!!!」
 皆の前なんて関係ないね。オレは主張させていただききマス。


「あ・・・数って・・・・・・」
 察しがいいな〜、将臣君は。
「そ!ちゃんがね〜?沙羅ちゃんにちゅっvて。ズルイでしょ?だから」
 おおっ?!一気に空気が変わったぞ?
 そうか、そうか。
 沙羅ちゃんを嫁に貰うって事は、オレもついてきますよ。
 もれなく!しっかり!付いてきます。
 沙羅ちゃんの父親だからっ!!!

 ちゃんから頬にキスしてもらいながら、仲間の微妙な表情を眺めるの楽しいな〜。
 そう、そう。
 沙羅ちゃんには、ちゃんだけじゃなくて、オレもついてるからね!
 いや〜、自分が虫除けになるとは思わなかったな。
 沙羅!パパが変な虫さんを追い払ってあげるからねv






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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!

 あとがき:パパが!どうしたことか壊れてます。“もれなく”といえば、“ついてくる”ですよ(笑)     (2006.04.24サイト掲載)




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