年神様  ≪景時side≫





 何をって、神様を信じてみようと本気で思えるのはさ。
 この手がオレを引き止めてくれたからなんだ───

 大晦の晩、いつもと変わらない就寝。
 隣では、安らかに眠る妻。


(こんな日が迎えられるなんてね・・・・・・)


 つい、手を伸ばして触れたくなる。
 額にかかる髪を除ける時の顔が好きだったり。
 眠っているはずなのに、君の頬が緩むから。


(本当は起きてたりしない?)


 調子に乗って、頬にも触れてみる。
 まだ大丈夫。君は一度眠ると中々起きないからね。


(いつも・・・夢を見ているのかな?)


 触れただけで微笑んでくれるなんて、不思議だよな。
 オレの手ってわかるのかな?偶然なのかな?
 試してみたいよなぁ。今度、朔に触れてもらってみようかな。
 お昼寝している時にでも。
 でもなぁ。
 朔にも微笑まれたら、とっておきの秘密が無くなったようで。
 それはかなりサビシイ。


「・・・さん・・・ね?」


 ん〜〜?寝言・・・だね。
 でも、わかる。
 ちゃんって、どういうわけか名前を呼んでくれるから。
 きっと、夢の中でオレに話しかけてる。
 たぶん、こんな感じ。


 『景時さん、あのね?・・・・・・』


 オレ限定みたいで嬉しいんだよね〜。
 話の内容ではなくてさ。話したいってコトについて。
 オレに!今から話すんですよって合図が嬉しい。


「ありがとう、ちゃん」
 こっそりお礼を言って目を閉じた。が!



「寒い・・・・・・景時さん、こっち」
 はぁ?!起きちゃった?起こしちゃいましたか?!
 慌てて目を開くと、目を閉じているちゃんの寝顔が映る。

「・・・脅かさないでよ・・・起こしちゃったかと・・・・・・」
「起きてますよ?景時さんが離れると寒いんだもん」
 再び顔を覗き込めば、今度はバッチリ両目を開けている。

「ご、ごめんね〜?その・・・・・・」
 どうにも、こうにも。さっきの呟きは聞かれてたよな〜とか。
 何か言わなければと思うのに、言葉が出ない。

「お月様がね、ない夜は真っ暗なんですよ?だからね、真っ暗だと、
思ってる事が言い易いですよね。いつもより、体温も伝わる気がするの」
 そのまま目を閉じた彼女の呼吸は安らかで。
 オレは、守りたいとそう思った。

(二人分・・・なんだよなぁ・・・・・・)

 衾をしっかりとちゃんへかけなおして。
「おやすみ・・・・・・」
 今度こそ起こさないように、額へ軽く唇を寄せて目を閉じた。
 そろそろ新年だろうな。今年もよろしくね?



 暖かさに引き込まれるように眠りにつく。
 目覚める時には、いつも隣にいて欲しい。
 年神様なら、この願い、聞き届けてくれるかな?
 年を配ってくれるより、お願い聞いてくれる方が嬉しいんだけどな。
 幼い時に聞かされた昔話を思い出しながら、新しい年を迎える。
 明日の朝だけは、特別な挨拶をしなきゃね!






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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!

 あとがき:年神様って、新年に変わる前に人間に『年齢』のお札を配るという昔話がとても印象的でしたので。     (2006.02.02サイト掲載)




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