竜田姫 ≪望美side≫ 紅葉って、どうして色が変わるんだっけ? 赤と黄色の違いは何? 水分を減らすから葉に水分がなくなって・・・だったけかな? 景時さんは温かいし。 馬はゆらゆらだし。 天気はポカポカだし。 声が気持ちよすぎて、寝てるけど起きてるみたいな。 でも・・・寝てたよ。最後の方は話の内容覚えてないし。 目的地に着いたみたいで、起こされて見下ろす京の町は─── 「わぁ・・・・・・・・・・・・」 あんまり綺麗だと、言葉って続かない。 所々まだまだ痛々しいトコもあるんだけど。 お寺の周囲の広い敷地とか。遠くには向こうの山の紅葉も見える。 京って山に囲まれてるんだ〜。 「よかった。気に入った?」 景時さんに馬から降ろしてもらう。 返事出来なくて、首だけコクコクした。 「じゃ、ここからは少し歩きになるんだ。大丈夫?」 見上げれば、石段が。確かにこれは歩くしかないわ。 「平気です!運動しないと太っちゃうし」 軽くお腹を撫でて沙羅ちゃんにも確認。 よし!イケル。行きたいよね。 「太ってはいないだろうけど。のんびり行こうね」 手を繋いで石段をゆっくり上る。 「朔〜、大丈夫?」 九郎さんは平気そうな顔だけど。 「。危ないから振り向かないで。私は大丈夫だから」 ・・・信用ないなぁ。景時さんと一緒だから平気だもん。 見上げればもう白龍と黒龍は駆け上がっていた。 「早いね〜、白龍も黒龍も」 手を振ると、二人も振り返してくれた。 「神子!先に行くね」 「うん。気をつけてね」 元気だなぁ〜。 「ちゃんはゆっくりだからね」 「はい」 もちろんゆっくり行く。もったいないから。 少しでも長く手を繋がないと! 山門にたどり着くと、色づく風景がより一層よく見える。 「わ・・・・・・全部が秋してる」 また皆に笑われた。 「。秋してるって・・・・・・」 朔なんてお腹押さえてるよ。え〜?変? 景時さんを見上げると、にっこりしてくれた。 「ま・・・自然に季節は変わるからね。ちゃんが竜田姫みたいだ」 「竜田姫って?」 竜田だったら竜田揚げよ。竜田揚げチキン。 他に竜田ってありましたっけ?まさか“から揚げ姫”じゃないわよね? 「ど、どうしたの?竜田姫って嫌だった?」 変な顔しちゃったのかな?景時さんが心配そうな顔になっちゃった。 「竜田って片栗粉をつけてお肉とか揚げるお料理の名前だなって」 譲くんに教わったもの。 今日だって作ったんだよ?お弁当に入ってる。 「・・・・・・あはははは!そ、そうなんだ〜〜〜」 景時さんまで笑うなんて! 「食べ物のお姫様って、食いしん坊みたい」 九郎さんまで!膝ついて笑うなんて失礼よ? 「ご、ごめん!怒らないで。五行説では季節を運ぶ女神様がいるって信じられて るんだ。秋を運ぶ女神様が竜田姫ってこと」 女神!女神様って!きゃ〜〜! 「西の山には竜田姫が住んでいて、秋の季節が来ると葉の色を染め上げるってさ」 「そ、そうなんですね。私ってば勘違いしちゃって・・・・・・」 うぅ。またやっちゃった。こっちの常識、知らなさすぎだよぅ。 「勘違いじゃないよ。もしもオレがちゃんの世界へ行ったら逆だろうしね!」 や〜〜ん。パパ優しいよ、沙羅ちゃん。 この笑顔に弱いぃぃぃ。 すっかり笑いを収めていた朔と九郎さんは、はるか前を歩いていた。 「。この辺りはどう?」 大きく頷く。皆で座るにはいい感じぃ。 敷物を敷いてもらって、まずは休憩。 「ふぅ〜〜〜。久しぶりの遠出で嬉しいなぁ〜〜〜」 馬で移動は久しぶりぃ。 「ちゃん、横になる?」 え〜っと。横よりも・・・・・・抱っこがいいけど・・・・・・皆いるしぃ。 「じゃ、こっち。皆は適当にふらふらしてくれば〜?」 景時さんに抱っこしてもらった!嬉しいな〜。 これって背中も温かいんだよね。 「・・・・・・邪魔はしないから安心しろ」 九郎さん、耳が赤いよ〜? これくらいで赤くなってちゃ、益々みんなに遊ばれちゃうよ? 「私はご挨拶してきますわ。ここは・・・龍神の神子だから入れるのですし」 朔が白龍と黒龍を引き連れて、お寺の方へ行っちゃった。 「えっと・・・神子だから?」 「うん。そうなるのかな。ここは一応女人禁制の山だから。ただ、先代の神子様方も 怨霊を封印したり、土地の浄化に訪れていらしたらしいから。昔ほどは厳しくないね」 こんな遠くまで。大変だったろうな〜。 「ちゃんはもっと遠くまで行ったり来たりしてたんだから。いいの、いいの」 あ。言われてみれば。京どころか、壇ノ浦に鎌倉だもんね。 「うふふ。どうしてわかるんですか?私が思った事」 わざと寄りかかって景時さんを見上げる。 「ん〜?いつだって他の人のすごいトコロを見つけるのが上手だから。ちゃんは もっと頑張ってるのに、自分の事だけ忘れちゃうでしょ?」 照れるよぅ。景時さんって、時々普通に照れる発言が来るから。 「・・・のっ、そっ、そんな事なくてですね。えっと・・・・・・紅葉観ましょう!」 紅葉を観る余裕なんてないんだけど、景時さんをみているのは危険なので。 話題チェンジ! 「だね。皆が戻ってくる前に〜っと。親子で紅葉賀なんて贅沢だしね」 お腹撫でてるぅ〜!沙羅ちゃんもご機嫌だね。 「紅葉賀って何ですか?」 「今日は、帝の行幸が中止って言ったでしょ?紅葉賀を嵐山でするはずだったんだけど、 今朝、内裏の庭木が倒れていたとかで占いをしたら日が悪いって中止になったんだ。皆 で紅葉を観ましょうの集いっていうのかな」 そっか。紅葉狩りって事なんだ。 風で時々真っ赤な紅葉が木から落ちてくる。 この世界は、時間がゆったりしていていいな。 静かに目を閉じると、景時さんが何かを被せてくれた。 いいな・・・こういうのって。 紅葉もいいけど、時間を楽しむのがイイなって思った。 |
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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!
あとがき:知らない事は、とかく勘違いになりやすく(笑) (2005.11.22サイト掲載)