竜田山の ≪景時side≫ 母上にピシャリと叱られ。いや、ご意見を頂戴し。 紅葉を観に行くことになった。 九郎もわりとあっさり許してくれて。 「本当に寒くなったら出歩けないからな。誰かつけるか?」 「い、いい!大丈夫。朔も白龍も黒龍もいるし」 慌てて辞退したんだけど、よく考えたら確かに他にひとりくらい欲しい。 九郎も同じ事を考えたらしい。 「弁慶。お前なら何かあった時にもいい。一緒に行ってはどうだ?」 おおっ!それはいいね〜。うん、うん。 「・・・そうですね・・・・・・お邪魔にならなければといったところでしょうか?」 ん〜?遠慮深いなぁ。 「大丈夫だって!ちゃんが張り切っててさ。おにぎり作ってるよ、今頃」 食べ物で釣れるとも思えないけど、ちゃんが張り切っているのは事実だしね。 「神護寺辺りに行こうかなと思ってるんだけど・・・・・・厄払いも出来るし」 どう、どう、どう?いいんじゃないかな〜と思うんだけど。 「そうですね。竜田姫方をお連れするにはいい時期かもしれません」 「え〜っと?それは竜田山の話だよね?」 「ええ。景時は白虎で西。竜田姫も西ですし、神護寺は京の西ですから方角もいい」 そんな事は考えてなかったけど。言われてみればそうだね〜。 「まあ、奈良の西じゃないけど。西は西だしね。じゃ、いいよね?」 「・・・九郎。僕が行ってもいいんですか?」 あ、そういう事。九郎はいつも仕事してばかりだもんね。 「そうだよ。西の方の様子も見られるし。留守を弁慶に任せればさ」 しぶ〜い顔してる。でもね、内心行きたいでしょ。 「・・・・・・俺では万が一の時に役に立たないだろう」 「万が一がないように役立ってよ。大丈夫だって。お腹は安定してるみたいだし」 転ばぬ先のなんだって。騒動を未然に防ぐくらいの気持ちで頼むよ。 「・・・では、そうさせてもらう。弁慶、後を頼む」 「ええ。いってらっしゃい」 弁慶に笑顔で送り出されてしまった。安心って事だね、こりゃ。 「ちゃ〜ん!たっだいま〜〜〜。九郎も仕事のついでに行ってくれるってさ」 さくっとの予定が、少しばかり長引いたので台所へ直接向かう。 「おかえりなさ〜い。あのね、すぺしゃるおにぎり作ってるから後少しなの。たくさん 用意したから、九郎さんもお腹いっぱい食べてね!」 黄色いモノを並べている。それは何?米ではない。卵? 「兄上。どちらの紅葉を観に行く予定ですの?」 朔に厳しく睨まれた。オレだって考えてるって! 「神護寺がいいかなって。ほら、厄除けのかわらけ投げとかしたり・・・・・・」 「遠くありませんか?」 「うん。だから馬にしようかなって思って。九郎が来てくれた事だし」 そうだった。九郎を立たせたままだった。 「あ、ごめんね〜。九郎をこんなところで待たせるつもりじゃなかったんだけど」 存在を忘れていたんじゃないよ?ただ、報告の順番ってものがあって。 ちゃんが一番なんだよね、オレの中じゃ。 源氏の西国の大将が我が家の台所にいるってのも笑えるからいいけど。 これが頼朝様なら絶対に出来ないね。 「ああ。しかし、白龍と黒龍はどうするつもりだ?」 ん?あ、二人いたね。 「白龍は大きくなれるし大丈夫。黒龍と馬に乗ってもらう。九郎は朔をよろしくね〜」 後は聞くまでもないでしょ!オレはちゃんとに決まってる。 「お待たせしました!用意出来たよ」 風呂敷包みのお弁当。さっきのモノが気になるけど、楽しみはとっておこう! 「じゃ、行こうか〜。程よく日も昇ったから暖かいしね」 「ピクニックみたい!敷物も持たなきゃ」 う〜ん。ちゃんてば本当に張り切ってる。 「そんな事はオレがするから、ちゃんはじっとしてて」 君には何も持たせないからね。 「白龍。今日は大きい方で頼むね〜」 白龍が大きいと、たくさん食べそうで怖いが仕方ない。 ここはちゃんの為だぞ! オレが彼女の笑顔をみたいから、オレのためでもある。 ・・・これは白龍には関係ないな。 澄んだ青空の下、のんびりと神護寺へ向かう。 ちゃんが寝てしまいそうだ。 「眠い?」 「・・・うん。あったかいし、揺れ具合が・・・・・・」 首が揺れていて可愛いな〜。しっかり支えてるから大丈夫だよ! 「着くまで眠っていてもいいよ?」 「うん・・・・・・でも、景時さんの声聞きたい・・・・・・」 ふむ。声・・・ね。 「じゃあ、勝手にしゃべってるから。聞いてて」 「・・・はい」 夢現の君を腕に抱きながら、ひとり日々の出来事を話す。 ちゃんはどんな夢を見てるのかな? 『もっとちゃんといたいんだけど、仕事があるからね?』 「景時。つまり、それは仕事をしたくないという事か?」 「いや、いや、いや。もっとたくさんちゃんといたいってだけでしょ」 九郎からツッコミが来るとは思わなかったな。 「九郎殿。大声ではが起きてしまいます」 さすが!いいぞ、朔。そうでなくてはいけない、妹よ。 「兄上も。声を小さくして何か話していないと、が起きてしまうわ」 「へ?」 これにはオレも思わず朔を見た。 「兄上の声がとても心地よいのですって。煩くない程度に話しましょう」 照れる!ちゃんとそんな話してるの? うわ〜〜〜。オレ、紅葉より顔が赤いよ。たぶん。 ちゃんには、敵わないなぁ。 景色を見つつ、世間話をながら山を登る。 ここから見下ろす京は箱庭のよう。 そろそろ君を起こさないといけないな。 竜田姫様。 竜田姫様に染められて葉は秋色に変わるんだよ? オレもちゃん色にして欲しいな。 |
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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!
あとがき:竜田姫って竜の姫ってお名前なので、神子たちにピッタリかなと。 (2005.11.21サイト掲載)