星月夜 ≪望美side≫ 「たっだぃま〜!」 あ!景時さんが帰ってきた。今日も元気な感じ。 すっごく “ほっ” とする瞬間。 無事でよかったなぁ〜っていうのと。 一緒の時間が嬉しい。 「お帰りなさいっ」 夏はね、井戸で汲んだ冷たい水で絞った手拭だったけど。 最近はお湯なの。 温かいのが離れた時さっぱりするでしょ? 表でぱぱぱって顔を一通り拭いて。 後ろにして目のトコにじわわんってしてあげるの。 「ふぅ〜。落ち着いた。夕餉、なあに?」 おっかしいんだ〜。毎日同じ会話繰り返してるの。 だけどね、景時さんだと可愛いからOK! 「今日はお初なの。見てからのお楽しみです!」 そ〜なの。初なの。京にないものだもん。 そりゃもう、景時さんだってビックリだよ。 「じゃんっ!シチューなのでした。 こうするとお野菜もたくさん食べられるでしょ?」 自信アリだったのに・・・・・・。 そんなにお椀を見つめなくたっていいのにぃ。 「・・・・・・汁物・・・だね?」 「そうだけど・・・・・・。ホラ!おかずもちゃんとありますよ」 茄子だよ、茄子。焼き茄子。これは、これなのよ。 それとおひたし。お野菜たくさん、カラダにいいのよ〜〜〜。 「いただきますっ!」 気持ちいいくらいに“ぱんっ!”と手を合わせて言ってくれるの。 見た目は変だけど、美味しいんだからねっ。 大丈夫。粕漬けじゃないから。勘違いしてないよね? 「あ・・・・・・確かに初めて・・・これ・・・・・・」 「甘いのは玉葱のおかげなの。美味しいでしょ〜?」 そっかぁ・・・・・・汁物というには“飲む”には相応しくなかったかも。 「あの・・・・・・お茶あるから。これは異国風の煮物っていうか・・・・・・」 説明に困る。けど、みそ汁とイコールではないのよね。 「うん。美味しぃ〜よ。これは癖になるかもね」 そ?ほんとに、そう思った?これはね〜、冬のお楽しみなんだ。 「冬に皆で食べるといい感じでしょ〜。寒くなったら、皆で食べようね」 まだ練習だもん、これは。できるかな〜って。 もう少し寒くなったら、皆を招待するんだ。 その方がきっと楽しいよ。 お風呂上りに、簀子で景時さんに手招きされた。 「そんなところにいたら、風邪ひいちゃいますよ?」 少し寒いよ、一枚羽織っていたって。 「う〜んと。少しだけ!少しだけ・・・・・・ここに。ね?」 景時さんの指差す“ここ”は、景時さんの足の間。 それは、もしや・・・・・・背中抱っこだ。 嬉しくなって、近づいたらいきなり衣で包まれちゃった。 「まきまきぃ〜?」 「そ!まきまき。仕上げはこう!」 衣二枚でまきまきされて。足にもう一枚かけられて。 景時さんの手が伸びてきた。 「ね〜!こうすれば、二人で温かいよ。秋はさ、空が綺麗なんだ。星見ない?」 言われて首を上げれば、満天の星。 「・・・・・・すごい」 キラキラしてる。何等星まで見えるのかな? 本物のプラネタリウム。 「お月見もいいけど・・・さ。星も綺麗でしょ。で・・・・・・」 景時さんって、ほんといいパパになれるよ。 そぉ〜っと私のお腹を撫でてるし。 沙羅ちゃんにも話してるんだよね、きっと。 「たくさん、たくさん皆で見られたらいいですねっ」 先に言っちゃった。きっと・・・そう言いたかったのかなって。 「うん・・・・・・・・・・・・」 こつんって。景時さんの頭が肩にのった。 心臓の音、聞こえちゃうかな? そうそう。あれも元に戻さないと。 そういう意味もあるのかなって思うんだぁ。 「景時さん」 「ん〜?」 星見てないでしょ。きっと目を閉じてる。 「あのね・・・・・・またひとつに戻そう?」 夏は暑くって。 二人でくっついて寝るなんて不可能だったもん。 褥を二つ並べてたんだよね〜。 隣だけど、春までの距離とは倍近く遠い。腕枕ナシだもん。 伝わったかな? 「うん・・・・・・・・・・・・」 伝わったみたい。 ごめんね?寂しかったのかな? いつも手は繋いでたんだけど。 なんとなく習慣になっちゃって、戻せなかったんだよね。 「寒い方がさ・・・・・・二人でいると温かくて・・・・・・いいな・・・・・・」 「うん。ぬくぬくしよ?」 星を見ていたはずなんだけど。 星よりも、ぬくぬくがしたかったのかなぁ? 体温を感じられる、この季節が。 何だかとても嬉しいなって思えた。 満天の星空の下、星たちの笑い声が聞こえた─── |
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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!
あとがき:ひとつに戻したかったと。そういう訳でして(笑) 秋って星が綺麗ですよね。 (2005.9.27サイト掲載)