重なる鼓動  ≪景時side≫





 確かに・・・少し寂しかったけどさ・・・・・・。



 雨が毎日じめじめと降るようになった頃かな。
 最初はね、「今日は離れて!」とかで。
 そんな感じだったかな。
 それがいつだったか。

「景時さん。お話があります」
 真顔で褥に正座されてちゃ、オレも正座しないとね。
 ちゃんの向かいに正座した。

「・・・・・・暑いの」
 うん。知ってる。離れてって時々言われてたしさ。
 黙って頷く。

「褥・・・別にしませんか?ひとつっていうのが無理だと思うの」
 オレは嫌だったけど。
 ちゃんの気持ちとか体調とか考えると、首を縦に振るしかなかった。

 せめてもの抵抗で、ぴったりと隣に並べて敷いてもらったけど。
 手もね、ちゃんから繋ごうっていわれたけど。
 一番最初の日は、ふたつ並べられた褥を見て寂しかったり。
 あれだね・・・・・・ガッカリ?
 少し違うな。
 とにかく。心の何処かが変な感じだった。



 離れて寝るようになると、体調の所為もあるのかとにかく寝返りして苦しそうで。
 夜中に団扇でこっそり扇いだりして。
 
 可愛いのは、動く前にオレの手を離すんだよね。
 それなのに、姿勢が落ち着くとオレの手を探す動きを見せる。

 パタ・・・パタ・・・・・・

 褥を叩きながらオレの手を探されてると気づいた時は、嬉しくて大変だった。
 オレに背中を向けた姿勢でも探すもんだから、腕が抜けないか心配でさ。
 でも、どんな状態でも真っ先に伸ばされる手に喜んだのは言うまでもないわけで。
 褥を別にしても、オレは一番ちゃん寄りで寝てたし。
 これは、これなのかなって。
 
 まさかちゃんから褥をひとつに戻そうって言ってもらえるなんてね。
 もう、子供が生まれるまでこのままかな〜とか考えてたし。
 星を見てたんだけど、冷えないうちに部屋へ入った。



「あっ・・・・・・もう二つ敷かれちゃってますね・・・・・・」
 そりゃそうだ。ちゃんがお風呂に入ってる時に使用人が敷いていくし。
 悪いな〜とか思っちゃってるんだろうな。
 ちゃんは、ほんと優しいよね。

「使わなくてもいいんじゃないかな?ほら、一応二つ用意してもらって、その日の気分でさ」
 ひとつだけだと、今度はひとりになりたい時に気を遣うかな〜って思って。
 そんな事を言ってみたオレの口は嘘つきだ。
 オレの気持ちを言うならば、断然一緒がいい。
 ・・・・・・寝るだけでも。

「えっと・・・これから寒くなるし。・・・・・・明日からはひとつでって後でお願いしておきますね」
 はぁ〜〜〜〜。ちゃんのこういうところに弱い。
 口が緩むが気づかれてはマズイ。
 真っ赤になってて可愛いけれど、一箇所訂正。
 明日は間違いだよ?

「明日じゃ、明後日からになっちゃわない?」
「あっ!」
 ちゃんが使用人に言えるのは明日なんだよね。
 つまり、明日に「明日から〜」は明後日だ。
 つい、つい意地悪をしたくなる。

「もぉ!景時さんは。言葉の綾っていうんですぅ〜」
 あらら。先に寝られちゃったよ。参ったな〜。
 急いでちゃんの隣に体を滑らせると、振り向いてくれた。

「えっと・・・その・・・お腹・・・大丈夫?」
 夏は本当に苦しそうだったしさ。
「へ〜きですよ。だから・・・・・・腕・・・貸して下さい」
 何でもきいちゃう。
 腕を伸ばすと、ちゃんが頭をのせてくれた。ほら、ぴったりだ!

「そぉ〜っと、ぎゅ〜ってして下さい」
「・・・そぉ〜っと?そっか、そうだね」
 お腹が苦しいのはよくないよな〜と、ぎゅぎゅっとしながらもふんわり包む。
「景時さんは?景時さんは私にして欲しいことないですか?私ばっかり言ってるし」
 無い。ちゃんと同じだもん。
 どっちが先に言うか、言われるかの違いしかないんだと思うんだよね〜。
「ぬくぬくで満足だよ、オレ」
「嘘ばぁ〜っかり。言わないと知らないフリしちゃうんだから」
 ちゃんの手がオレの頬を撫でてくれる。
 君は知らないフリなんて出来ないのに、口ではそういうんだよね〜。
 ちゃんの方が嘘つきだね!



 久しぶりに鼓動が重なる眠りを迎える。
 いつの間にか同調する鼓動は安心の証。
 オレの心の何処かの“変”は、知らないうちに無くなっていた。
 たぶん、ちゃんがオレの手を探してくれていた時に・・・かな・・・・・・・・・。
 ぬくぬくな夜を過ごした。






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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!

 あとがき:景時くんは、捕まえて欲しかったようですね!心を見つけて欲しかった。     (2005.10.1サイト掲載)




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