鳳仙花  ≪景時side≫





 もともとちゃんは細かった。
 何って・・・・・・腰周りとか、脚とか・・・・・・ま、色々。
 ようやく最近お腹が目立ってきたんだよね。
 あの中に・・・いるんだ、オレたちのややこが。

 どうも力加減がわからなくて。
 そろりとちゃんを抱きしめる。
「ただ〜いまっ!」
「おかえりなさ〜い。今日は少し涼しくなりましたよねっ」
 
 離れたくないけど、離れればいつものあれをしてもらえる!
 ちゃんに顔を拭いてもらうのは気持ちがいい。
 今日も汗かいたしさ。

 ・・・・・・ん?

 なんとなく違和感。
 だけど、オレは気持ちよさに負けて目を閉じる。

「ご飯まで時間があるから、ゴロンする?それとも、おしゃべり?」
 そうだなぁ〜〜〜、どっちもしたい!
「・・・・・・一緒にゴロンしておしゃべり・・・とか?」
「う〜んと。それだと寝ちゃう・・・・・・・・・・・・」
 気にしなくていいのに。
「その時は、寝ちゃおう!大丈夫、朔もいるんだしさ」
 そう、そう。ちゃんに関してだけは朔と意見がバッチリあう。
「えっと・・・じゃ、朔にお願いしてくるから。お部屋で待ってて下さいね」
 へ〜き、へ〜き。否とは言われないよ。
「じゃ、着替えて待ってるからね〜〜〜」
 一目散に部屋を目指す。
 何故ならば、着替えが終わっていれば無駄な時間がないから!



「景時さん、入るよ?」
 ちゃんが飲み物を持って部屋へ来た。
 歩き方を注意しているのが、なんとも可愛い。
「オレが持つから!」
 重さよりも、何よりも。転んだら大変だって。
「えへへ。大丈夫ですよ、これくらい」
「いいんだよ、オレがしたいんだから」
 お茶を飲んで一息いれてから、衣を片手に簀子へ出て広げて転がる。

「ここ!ちゃんはここね!」
 笑いながら隣にゴロンってなってくれる。
「風鈴の音がね、段々寂しげですよね。ほら、夏って涼しいなぁって思うけど。
風が涼しくなってきたから・・・・・・」
 確かに。秋になったら外さないと、嵐の時になくなったりしたら残念がるよね?
「もう少しだけ夏の名残を楽しんだら、外そうか」
 なんとなくだけど、それがいいかなと思って。
「うん。また来年つけてくださいね?」
「もちろん!来年はさ、早めにつけるから」
 音で涼しいって言ってくれたし。これは・・・・・・また何か発明に使えそうか?

「景時さん、今日もする?」
「するっ!」
 ちゃんのお腹にそっと触れながらのおしゃべり。
 これがね〜、ドキドキする。胎教とやらにいいらしい。
「今日は一日何をしたのかな〜〜〜」
「えっとね、景時さんの着物縫っただけ・・・かな?後は・・・お庭を眺めて・・・・・・」
 まただ。また違和感。

 ん〜〜〜?

ちゃん、手。ちょっといい?」
 手を取って、よ〜く眺める。

「爪が・・・紅い・・・・・・」
「あっ・・・・・・そ、そうなの。可愛いかなって。朔に教わったの」
 爪に負けないくらい頬を赤く染めちゃって。可愛いな〜〜〜。
「鳳仙花だっけ・・・・・・爪紅っていうだけの事はあるね。へ〜、ほんとに紅いんだ」
 可愛い指先に口づける。
「・・・朔がしたの見たことないんですか?」
 そりゃそうだ。その疑問は当然だね。
「朔は・・・見せないっていうか。見せてくれなかったっていうか・・・・・・」
 黒龍がまだ青年だった頃はさ、してるの知ってたけど。
 出家してからは、そういうのしなくなっていたし。
 笑うようになったのも、君がこちらの世界へ来てくれてからなんだよ?
「・・・景時さんもする?まだ花弁残ってるし」
「オレ?!オレがしたって可愛くもなんともないし。ちゃんの指にこうする方が
嬉しいなぁ〜〜〜。似合ってるよ」
 また口づける。だってさ、ほんのり紅くて可愛い。
「えっと・・・気づいてもらえると思わなくて・・・・・・嬉しいかも。白龍にもしちゃった」
 て、ことは。黒龍もしてるんだろうな〜。
「それは・・・子供の姿の時はいいけど、怖いな」
 時々白龍は大きくなる。なんといっても、陽の気は安定しているからね。
「そうなの。大きくなった時のこと考えないでしちゃって・・・・・・これ、なかなか落ちない
の知らなかったの」
「そう?そのうち落ちるからいいんじゃない?黒龍は文句いいそうだけど、朔が言えば
大丈夫だったでしょ?」
 アイツはそういう奴だ。意外と裏表なんだよね。
「えっとね、しばらく大きくならないからいいって。黒龍って、白龍と変わらないのに大人
発言なんだよね〜。時々びっくりしちゃうんだ」
 だ〜よね〜。あいつ、子供なのは見た目だけなんじゃないかとオレは疑ってる。
 白龍は、見た目大人で中身が子供だから。違う意味でびっくりする事があるし。
 黒龍にあわせて小さくなってるだけだからね。
 陰陽道的に考えれば、対は逆なんだから。可能性の高い推測だと思うんだけど。
「四人でしたの?」
「そうなの。楽しかったよ〜」
 そっか。君が楽しかったならそれでいいんだ。
「女の子だったら・・・一緒に出来るね」
 そっとちゃんのお腹を撫でる。
「出来たらいいなぁ・・・・・・男の子でもしちゃお!」
「う〜ん。オレに似てる場合は止めてあげてね」
 無理があるよ、きっと。不気味は可哀想だ・・・・・・。
「しちゃうもん!でも、パパだけはしないであげる。見せたい人がいるからするんだよ、
こういうのって」
 見せたい人・・・・・・。オレってことだよね。
 じぃ〜んとくるものがある。
 オレのためのオシャレってわけで。
「オレ以外には見せなくていいからね」



 オレだけにって言ってくれる人がいるのって、くすぐったいけど嬉しいね。
 





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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!

 あとがき:オシャレの理由は・・・・・・。景時くんに気づいて欲しいからかなとv     (2005.9.9サイト掲載)




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