涼しくする  ≪望美side≫





 最近は前ほどイライラしなくなった。
 景時さんにお祭りで色々買ってもらったから、退屈してないし。
 何より、音で涼しくなるなんて知らなかった。

 可愛い風鈴を、南の軒下へ下げてもらっちゃった。
 風が吹くと、チリチリと音がする。
 どうしてこんなに涼しい気がするのかな〜。

「魔除けにもなるからいいね!もっと早く気づけばよかったよ〜」

 そんな事ないよ?
 景時さんがしてくれることは、ぜ〜んぶ嬉しいんだ。
 よく雑貨屋さんとかで見かけたけど、ご近所迷惑だからって。
 ママがそんなのどうするのって言うから、買えなかったんだよね〜。


 また、イライラしちゃいそうになったら。
 この音を聴こう。
 景時さんに八つ当たりしちゃうの嫌だもん。


 折り紙で薬玉用の花をまたひとつ折る。
 全部折り終わったら、糸で繋ぐの。
 まあるい薬玉になるんだ〜。




「へ〜、薬玉ね。すごいね。・・・・・・来年はさ、都の貴族みたいに薬玉を
贈るからね。あれも魔除けになるらしいよ」

 薬玉って、魔除けなんだぁ。
 普通はさ、優勝した時とかにパカッて割れるアレを言うよね。
 お祖母ちゃんに教わった時に、変だな〜って思ったの思い出した。
 きっと、もともとの薬玉がこっちなんだね。

「楽しみに待ってますね」
「う、うん。端午の節句に贈るから・・・いや。重陽が先だね」

 あれ?端午の節句は鯉のぼりだよね?
 男の子のお祭りじゃないんだっけ?
 どうして景時さんが赤くなるの?

「景時さん。端午の節句って、男の子のお祭りですよね?」
「へ?何それ・・・・・・邪気払いの日だよ?鎌倉では菖蒲の節句って言うけどね」

 おやや?何かが違う。端午の節句で赤くなったんじゃないんだ。
 しかも、どうも違う行事みたい。でも、菖蒲は一緒なんだ。

「薬玉って、どういうものなんですか?」
 行事が違うのなら、こっちよね。質問を変えてみる。どかな?

「え〜っと。たくさんの花をつけて、香なんかも中に入れて、長寿の願掛けで、
そのぅ・・・そんな感じの」
 
 うん。照れてる。でもちょっと外した。薬玉じゃないみたい。それなら!

「じゃ、それって皆にもあげた方がいいですよね!」
 そうだよ。縁起物なら。皆にもあげようよ〜。私が作ってもいいよ。

「だ、だめっ!ちゃんにはオレが贈るから。ちゃんも気にしなくていいよ、
ほんと。朔にもオレが贈るし」
「景時さん、それって・・・・・・女の人が貰うって事?」

 景時さんの顔が青くなった。うん、これだ〜。
 親しい間柄の女の人に男の人が贈るとみた!

「えっとね、私も景時さんにコレ作ったらあげるね」
「う、うん!そうしよっ。そうだね、それが一番!」



 景時さんが早く帰ってこないかな〜って。
 またひとつ花を折る。
 時々、白龍に小箱や蝉の折り方を教えながら。
 沙羅ちゃんが生まれたら、こんな感じなのかな〜って想像しながら。
 またひとつ花を折る───






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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!

 あとがき:36個折って作るんだったかな?薬玉って。折り紙、忘れちゃいましたね〜。     (2005.8.13サイト掲載)




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