夏祭り ≪景時side≫ 近所で毎年夏祭りがあるのは知っていた。 ま!人が集まって。飲んで、騒いで、踊ってってだけなんだけど。 大人だけじゃなくて、子供相手の商いもくるからね。 目先が変わって楽しいかな〜って。 足早に我が家へ帰ると、ちゃんはもう支度を済ませて待っていた。 「ただ〜いまっ!待たせちゃったかな〜」 「お帰りなさ〜い。楽しみで早く支度しちゃっただけなんですよ?一度お家で 休む?帰ってきたばっかりだし・・・・・・」 いいや!オレは休まなくても大丈夫!問題ない、ない! そんなに可愛い支度して待っていてくれたんだしぃ〜〜〜。 ・・・オレの鼻の下は、いつもより五割り増しに長くなっていたかもしれない。 「景時さ〜ん?やっぱり暑かったんでしょ」 ボケ〜っとしていたら、せっせと濡らした手拭で顔を拭かれてる。 あ〜、いいなぁ。生き返る・・・・・・。 いつからかなぁ、梅雨くらいから?だったかな。 帰宅したオレを気遣って、ちゃんが手拭を差し出してくれたのは。 “拭いて”って待っていたら、拭いてくれるようになった。 口調は軽めで言ったけど、そうなったらいいなぁ〜と思っていたわけで。 ちゃんの優しさは心地好い。 「景時さん、やっぱりお家で少しゴロンしてからに・・・・・・」 いかん、いかん。すっかり回想に入ってしまった! 「大丈夫だって!ちゃんの手だなぁ〜ってついね。行こうか」 あ、真っ赤になってる。可愛いよね〜〜〜。 オレね、ちゃんに触れられるの好きなんだ。いつか言ってみよう。 ちゃんの手を取って、近所の広場へ向かう。 お寺の裏にある、単なる空き地なんだけどね。 手を繋いで夕方の道をのんびり、のんびり歩く。 そんなに目立たないけど、大切な身体なんだよちゃんは! 細心の注意を払いながら目的地へたどり着いた。 「わ〜、すごい人出ですね」 確かに。どこから来たんだ、こんな人数。 「玩具がある〜!景時さん、アレ見たい!」 うおっ?!今度は手を引かれてしまった。 子供たちが集まる輪の中にちゃんが混ざる。 何かあったらどうしてくれる!!! だけど、相手は子供だ。 何も出来ずに様子を見守るしかなかった。 「景時さん、これ欲しいなぁ〜」 ちゃんが手にしているのは、紙風船と折り紙。 「・・・それだけ?」 「だけって・・・これ可愛いよ?折り紙はね、練習するんだ〜」 とりあえずお代を払って、また広場を二人で歩く。 「練習って・・・そんなに折り方あるの?」 ちゃんがびっくり眼になった。 「景時さんたら朔が居るのに知らないの〜?たくさん色んなモノ作れるのに」 紙風船と、折り紙を持たされる。 「ちょっと待っててね。これは簡単だから、すぐ出来るんだ」 オレの背中を使って何やら折り始めた。 「じゃんっ!紙飛行機ですよ。これ、飛ぶの!」 空へ向けて、紙の飛行機がちゃんの手から放れた。 すぅーーーっと、大気を滑る様に飛ぶ折り紙は、夕暮れの空にとけて。 子供たちがそれを追いかけ出す。 そして。ちゃんは他の子供たちに囲まれてしまった。 「景時さん、折り紙下さい」 折り紙を手渡すと、子供たちに配り始める。 そうして、折り方を丁寧に教えるんだ─── ちゃんの愛情は平等なんだよね。 ちょっとサビシイな〜。 「はいっ!おしまい。大切にするんだよ?」 「は〜〜い!ありがとう、神子様」 子供たちがいなくなると、ちゃんが戻ってきた。 「折り紙、なくなっちゃった。ごめんね?」 「え?」 「だって・・・せっかく買ってもらったのに」 ちゃんがオレの腕を取る。 「え〜っと・・・まだ売ってたら買おうか」 「また今度でいいの。練習だから・・・・・・女の子だったら、一緒に折り紙とかして 遊ぼうって思っただけなの。折り方、思い出さなきゃって」 オレはもったいないけどちゃんの手をオレの腕から離させる。 「待ってて!」 ちゃんの愛情は平等だけど。 特別はオレのもの。いや、オレと子供たちのものって事にしよう。 さっきの折り紙の束を二つ急いで買うと、ちゃんのところへ大急ぎで戻る。 「こ、これ!これで練習しよ?」 「しよって・・・景時さんもするの?」 わわ!ちゃんが笑ってる!!!するっ。するから! 声が出なくて、首を思いっきり縦に振る。 「こんなに汗かいちゃって。飛行機、景時さんにも教えてあげるね」 ちゃんが手拭でオレの汗を拭いてくれる。 うぅ〜、幸せ・・・・・・。 「あ・・・大変!朔と黒龍と白龍と譲くん!」 「置いて来ちゃった・・・ね?帰ったら大変だな〜、こりゃ」 二人で可笑しくなって笑う。皆でって言ってたのに。 朔に叱られても平気。黒龍はまだ朔か白龍としか話さないし。 白龍が拗ねたら遊んで。譲君は・・・・・・ま、大丈夫かな。 皆で来たとしても、オレはちゃんと二人で歩きたかったしね。 「何かお土産買わないと・・・・・・」 「いいよ。何にしようか〜〜〜」 「お土産は必要ないですわよ?兄上」 振り向けば黒龍と白龍と手を繋ぎ、朔が立っていた。その後ろには将臣君と譲君。 「あ゛・・・・・・」 オレの背中に伝う、冷たい汗。 「朔ぅ〜、黒龍、白龍、ごめんね!すっごい早く来たくて」 「いいのよ、」 ちゃんの手は、朔と白龍に奪われた。 神子様にはそれぞれ龍神様。あらら、オレの負けだね。 オレの右肩を叩く将臣君の手。 「残念だったな、景時。忘れ物はよくねえよな?」 うっ。そんなに楽しそうに笑わなくても。 それに、将臣くんとは約束してなかったよ〜? 続いて、オレの左肩には譲君の手。 「景時さん。いちおう俺も楽しみにしてたって知ってます?」 ええっ!?譲君って、こういうの好きそうに見えなかったよ。 そう言われると、途端に訪れる罪悪感。 「ご、ごめんね〜〜〜」 まずは二人に謝らねばと。それなのに。 「ばぁ〜か!んな顔するなよ。結果オーライだ。後で九郎たちも来るぜ?敦盛を 呼びに行かせたから」 今度は右の頬を将臣君につつかれた。 「景時さん、九郎さんたちに言わないで帰ってきましたね?」 うおっ?!譲君、何その知ってるぞって顔。 ・・・夏なのに。涼しい夏祭りになった。 ちゃ〜ん。オレ、ちゃんの特別だよね? |
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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!
あとがき:景時、今からヤキモチ(笑)将来は、沙羅ちゃんと望美を奪い合う?! (2005.8.13サイト掲載)(2005.8.17一部修正加筆)