雷神来る  ≪景時side≫





 その日は、とてもよく晴れていた。
 いつも通りに仕事をして。
 書簡も書き上げ、九郎の部屋へ報告に行った。


「よし。じゃ、それは送ってくれ」
「御意〜」
 ここでの上司は九郎だからさ。
 めったに駄目だしされないんだけどね。
 見てもらってから送るんだ。
 ま、イロイロ書いてある文を。

 で、九郎が次の文を検めている時にそれはキタ。


 ゴロゴロゴロ・・・・・・


 地響きとともに遠くでしたその音は。

「九郎、雷だよ!帰らなきゃ」
「・・・はぁ?」
 九郎がわからんという顔をした。
「だ〜か〜ら〜!家に帰らないと!ちゃんが・・・・・・」

 “泣いてる”とまでは言わないけど。
 怖いんじゃないかな〜って。

「バカモノ!町に落雷があったら、暴動を止めるのも仕事だ!!!」

 あ〜、そうですか。お怒りですね。困ったな〜〜〜。
 まあ、確かに。火事場泥棒とはよく言ったもので。
 そういう時に、荒くれ者たちが悪さしてくれるからさ。
 取り締まる手伝いも仕事なんだけど。

 家に帰れないのなら、やる気なんててんでなく。
 ぼんやりと外を眺めていた。


 風が出てきな───


 木々が揺れるのを横目に、九郎が読み終わるのを待つ。
 実際にコレを届けに行くのは俺の役目じゃないけどさ。
 これを頼むの、頼みづらいよな。
 どう考えても雷神様だ。
 どしゃぶりのゴロゴロになることはわかっている。



「風が出てきましたね。被害が無ければいいのですが・・・・・・」
 弁慶が戻ってきた。
 そうだよなぁ、確かに。被害はない方がいいんだよなぁ。
「九郎。班を編成して、見回りをしましょう。そうですね・・・四班ほどで、
東西南北と、町中を区切りましょうか」
 素早く九郎の前に地図を広げる弁慶。
 ほぉ〜んと。打つ手が早いよ、弁慶は。

「そうだな・・・・・・俺と弁慶はここで待機するが・・・・・・」
 
 そうね〜、オレは出た方がいいよね〜。
 あ〜、びしょ濡れ決定。
 文遣いの者の心配どころか、オレがずぶ濡れだよ。

「景時。お前はここを担当しろ。それと、他に三名を隊長に指名して警護に
当たらせろ」
「御意〜〜〜」
 もう出るつもりでいたから、オレも返事だけは早い・・・・・・?!
 そ、そこはっ!

「く、九郎!いいの?オレがそこで・・・・・・」
 九郎がプイと横を向いた。
「少しくらいなら寄り道も許可してやる。さっさと行くんだな」
「ありがと〜〜〜」
 
 もうね、どうやって隊長を指名したか、隊を分けたかも記憶に無いけど。
 寄り道は、いつ寄っても寄り道なんだから。
 真っ先に寄り道させてもらう!

 

 ちゃん、泣いてないといいなぁ。






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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!

 あとがき:時代によって、怖いものの順番は違うのでしたv     (2005.8.13サイト掲載)




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