我慢できない  ≪景時side≫





 オレだってこの天気は堪える。
 今日なんてとくにヒドイ。
 富士から氷でも取り寄せられればいいんだけどね。
 そんなに度々は無理なわけで。

「九郎!心配だから、帰りたいんだけど!!!」
 筆を投げつけられたよ・・・・・・。
「どこへ帰りたいんだ?この山を前にして“帰りたい”だと?」
 まあ・・・あるね。少なくはないけどさ・・・・・・。
「で、でもさぁ。この天気でしょ〜、ちゃんが心配で、心配で・・・・・・」
 そう、君の名を出させてもらう。
 だって、オレが帰りたい理由はちゃんなんだから。
 こんな天気じゃ病気になっちゃうよ!
「・・・・・・去年だって夏を越しただろう?」
 去年はさぁ〜、ほんとの夏は涼しい熊野に居たんだよ?
 京のこの盆地特有のまったり息苦しい季節は知らないって!
 ついでに、去年と違うカラダなんだしさぁ〜。
「そうは言っても、とっても大切な身体なんだよ?どうするのさ〜、倒れてたら」
 ほぉ〜ら!九郎だって思うはずだよ。
 いつもきっちり着物を着ている九郎ですら、前をすこぅしゆるく寛げてるもんね?
 
 ちょうど良い所へ弁慶が戻ってきた。
「・・・・・・どうしたんですか?二人とも。妙な静けさで」
 そうでしょ〜?九郎がね、返事してくれないからこうなったんだよ。
「オレね、家に帰りたいなぁ〜って・・・・・・」
「ああ・・・・・・」
 最後まで言わなくても分ってくれるのが弁慶だよ!
「そうですね、後は九郎が頑張るでしょうから。さんは大切な時期ですしね」
 オレは心の中で小躍りした。九郎の手前、表面上は冷静さを保ちながら。
「ありがと〜〜〜。じゃ、お先っ!」
 軽く右手を上げて、職場である京都守護邸を後にした。



 我が家に着けば、ちゃんは庭だという。
 まあ、退屈だろうしね。木陰でお昼寝もいいかなぁ〜と庭へ回って目にしたものは・・・・・・
 
 ちゃんの白い脚だよ、脚!!!

 オレは、天上にいるという伝説の馬よりも早くちゃんの許へと走った。
 我ながら駿足とは、こういうことだと思う。

ちゃんっ!何してるの!!!」

 叫びながらオレはせっせとちゃんの脚を隠す。
 これはオレのだ。誰も見てないだろうな〜?許さないよ。

「おかえりなさぁ〜い。暑かったからね、水遊びv」
 そんな可愛い顔でお帰りなさいを言ってくれてもダメだからね。
 オレは少しばかり怒ってるんだよ?



 なんとなく言い合いのような会話になってしまい。
 ちゃんがプイっとオレの膝に寝転んだ。
 そうだった。
 ちょっと最近不安定なんだったよね。だから急いで帰ってきたのに。
 ダメダメだよ、オレ。

「うん、いいんだよ。横になってて。そうだなぁ、少しだけ覚えたんだ。聴いてくれる?」

 将臣くんに教わった、とっておきの歌。
 あってるかどうかは自信ないけどさ。
 “花火”とかね・・・・・・わりと気に入ってる。
 オレの心情をよく言い表してる言葉が並ぶこの歌を。
 君に聴いてもらおう───
 





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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!

 あとがき:氷輪が景時くんっポイなぁ〜って思ってる歌があるんですよ。実は。それは・・・     (2005.7.19サイト掲載)




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