どこまでセーフ?  ≪望美side≫





 その日は、あ〜んまりにも暑かったから。
 階のところで、盥に水を入れて足を浸してた。
 時々動かすと、水がキラキラして楽しいし。
 つまりは、着物の裾をね、すこぅし上げないとそんなコト出来ないわけで。

 何か忘れ物があったのか、景時さんがフラリと帰宅。
 それが・・・・・・庭を物凄い勢いで走ってきた。
 もうね、世界陸上をテレビで見てるみたい。
 オリンピックレコードものなくらい早かった。

ちゃんっ!何してるの!!!」
 私の前にしゃがんで、せっせと私の着物の裾を下ろして。
 手拭で濡れている脚を拭いてくれた。
 シンデレラの靴を履くポーズみたい。
「おかえりなさぁ〜い。暑かったからね、水遊びv」
 うん。そ〜なの、子供みたいだけど。
「こんなに脚見せちゃダメだよ〜〜〜!」
 いきなり抱き締められた。く、苦しいぃ。
「えっと・・・膝までだし。スカートより短くないですよ?」
 そ〜なの。膝までだもん。そんなに出してる部類じゃないよね。
「だめーーーーーーーっ!オレのなのっ。庭から見えちゃうよ」
 景時さん、“オレの”って意味不明だよ?それに。
「脚くらい見えてもへ〜きですよ?」
「ダメったら、ダメ!あ〜、帰ってきてよかったぁ〜」
 さっさと私を抱き上げて、簀子に上がられちゃった。
 暑いんだってば〜。今日はあんまり風ないし。

「今日は風がなくて、ぬるぅ〜いから水浴びしてたのにぃ」
 景時さんの膝に横になった。
 意地悪しちゃうんだから!今日は膝枕してあげな〜い。
 私がしてもらうよぉ〜だ。
「それでも!ちゃんは大切な身体なんだから。何かあったら大変だよ」
 せっせと私の髪を纏めてくれてる。あ!
「景時さんの手のひら、冷たい〜〜」
 おでこにペタリと景時さんの手を取ってあててみる。いい感じかも。
「オレの手でよければ幾らでも使って!だから・・・脚はダメだからね」
「脚じゃなければいいのぉ〜?」
 屁理屈だってわかってるけど。なんだか八つ当たりしたくなった。
「・・・・・・身体を冷やしちゃダメだよ・・・その・・・肌も見せないで欲しいし・・・・・・」
 景時さんが困った顔で私の顔を見てる。
 ありゃ、りゃ。意地悪しすぎちゃったかな?

「脚を冷やすと涼しいんですよ?」
 そうなの。実際手っ取り早いのよ。
「〜〜〜じゃあ、ここまでね!それと、オレがいる時だけ」
 景時さんの意地悪ぅ。足首まで?そんなんじゃちっとも涼しくないよぅ。
「じゃ、今日みたいな日には居てくださいね?」
 これ以上引けないよ?暑いし、だるだるだもん。
「うん。いるよ。だから帰ってきたんだよ?今日は空気も重たい感じだし、どうしてるかなって」

 ごめんなさい、景時さん。
 こんなに大切にしてもらってるのに。八つ当たりまでしちゃって。
 暑くて積もりに積もってたイライラ熱がすぅーっとひいた。

「あ、あのね・・・・・・」
 起き上がろうとしたら、額を優しく撫でられて制された。
「うん、いいんだよ。横になってて。そうだなぁ、少しだけ覚えたんだ。聴いてくれる?」

 私の大好きだったバンドの曲。
 いつ練習してたんだろ?

 そう・・・夏になったら。花火をまた見せてね?

 まだ梅雨の重い雲に包まれた空を眺めながら、景時さんの歌声を聴いた日。
 パパは優しくて、強い人だよ?パパの声、聞こえたかな───






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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!

 あとがき:暑いと、それだけでイライラしがちですよね〜。そんな時にどうぞ!     (2005.7.17サイト掲載)




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