足跡  ≪景時side≫





 目覚めたちゃんは、そりゃもう可愛くて。
 きょと〜んとしてた。
 早速、オレがみた夢の話を切り出してみる。

 よかった、驚かせちゃったけど。嫌ではないみたいだ。
 不安そうだったしね。
 どうしたものかと思ってたんだ。
 それなのに。

「え〜、女の子も、男の子も欲しいなぁ〜」
 あんなに不安がっていたのに。いいのかな?でもさ。

「跡取なんだよね・・・うん。オレさ、自分で大変だったし・・・・・・」
 そう、男はね。武家の跡取となれば大変だ。オレ自身、落ちこぼれだったから。
 ちゃんとオレの子でもさ。そこは半分オレなわけだし。
 可哀相な事になってもなぁ。
 悩ましいよなんて考えていたら。

「大丈夫!景時さんと私がお父さんとお母さんだもん。もしもの時は、梶原家、
あきらめちゃいましょう!」

 ちゃん、最高!だよね〜、無理しなくていいんだ。
 よかったなぁ、子供たち。
 まだ生まれていないけど、君たちのお母さんは大きくて温かくてしっかり者だ。
 相当格好いいから、安心していいよ。



 そうそう、紫陽花はどこだ?
 朔に頼んだままの紫陽花の存在を思い出す。
 静かに周囲を見回すと、簀子にその存在を見つける。
「忘れてた!ちゃんにお土産あったんだよ?紫陽花とね・・・・・・」
 ちゃんが振り向いた。
「あ、ほんとだ。綺麗ですね〜〜〜」
 あぁ、オレの腕をすり抜けて行っちゃった。オレより紫陽花?
 仕方がないので、立ち上がって簀子へ行く。
「うん。九郎のところにあったんだ。帰りに目に付いて・・・あれ?蝸牛が・・・・・・」
「カタツムリですか?」
 ちゃんが花の辺りを探すが、いないらしい。
 オレ、朔に手渡した時までは居たと思うんだけど。

 例えて言うなら、面白いモノを見つけた子供のような顔で振り返るちゃん。
「景時さん、みて、コレ」
 その指先を目で追えば、簀子に残る銀の足跡。
「あ・・・・・・逃げちゃったのか」
 ちぇ〜、せっかく葉にのせたまま持ってきたのに。
「違いますよ!きっとね、この子が景時さんの夢のお使いしてくれたんですよ」
 オレの夢〜?ややこの声とか?ちゃんと洗濯物眺めてたアレを?
「そうだよ。お仕事終わったから、帰ったんですよ。もう、あ〜っちの方まであるもん」
 ずっと目でその銀の足跡を追う。階からしっかり地面へ移動したようだ。
 もう探せないね。
「銀色、きらきらで綺麗ですよね。紫陽花もね、雨の雫があたるのを見てるのもいい感じ」

 お手上げです。オレは君には敵わない。
 ちゃんは、楽しい事を見つけるのが上手だ。





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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!

 あとがき:蝸牛は、こういうわけなのでした♪実際は、葉を食べちゃうから嫌われ者だったり(汗)     (2005.7.5サイト掲載)




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