願い事 ≪景時side≫ あ〜、もう! いいかげん、内裏ってどうして行事が多いんだろう? まあさ、それなりに神様に捧げるみたいなものが多いから。 蔑ろにも出来ないんだけどさ。 とりあえず今日は乞巧奠の当日だし。 祭壇に供物を並べているのを、眺めていた。 「よ!景時。溜め息なんか吐いて」 吐きたくもなるって。ちゃんとあんまり話してないし。 話そうかな〜と思ってると、ちゃん寝ちゃうし。 「・・・今日で終わってくれて助かったな〜なんてね」 「まあ、そうかもな。管弦の宴は出ないんだろう?」 出ないよ、そんなの。 手伝うことを条件に免除してもらったくらいなのに。 「出ないよ〜、別に楽器が上手いわけでもないし。ちゃんが 家にいるかと思うと、早く帰りたいんだよね」 正直に心情を吐露した。 なんだかなぁ〜、将臣君ってさ。 年下のはずなんだけど、愚痴言っても平気な感じがするんだよね。 「ねえ?笹でも採って七夕すれば」 「な、何?“たなばた”って」 こうしてオレは、ちゃんの世界の行事を知ることになる。 いや、逆だ。ちゃんの世界の行事は外したくない。 ちゃんの驚き顔が見られる数少ない機会だし。 根性で山の方まで馬で駆けた。 手頃な大きさの竹を伐ると、また大急ぎで家を目指す。 あんまり暗くなっちゃつまんないしね。 それに。ちゃんなら、「皆でしましょう」って言うだろうし。 早くしないと、皆で出来なくなっちゃうからね。 そんなこんなで、家に着けば。 予想通り驚いてくれた。 ちゃんの目が、ものすごぉ〜く大きく見開かれて。 これまた可愛いんだよね。もうね、全身で驚いてくれるから。 そして、こっそりオレの願いを書いて先に笹の先端に結ぶ。 よぉ〜く見てくれよ?彦星。 オレは、ちゃんとずっと暮らしたいんだ。 他はいらないから。頼むよ。 『ちゃんが、ずっとオレといてくれますように。 景時』 ちゃんにも言えない願い事。 だってさ、信用していないみたいじゃない? オレを置いて向こうの世界へ帰っちゃうとか、そんな事は思ってないよ。 たださ、ここへ突然来たあの日のように。 逆らえない力もあるもんなんだよね〜。 オレは、その力にさえ逆らいたいって事。 だってさ、オレ・・・父親になるし。 うわ〜、いいのかな。オレで。 ちゃんを呼べば、どうやら書けたみたいだった。 何をお願いしたのかな? オレに出来る事なら、なんだって叶えたいよ。 どれどれ・・・・・・嬉しくなって、オレの短冊の隣に結ぶ。 “家族”って、なんて嬉しいんだろう。 ちゃんと家族なんだよね。 そして。家族は増えるんだ。 歌は・・・もう少し待っててね。 何でも叶えたいという決心と、オレの実力は中々足並みが揃っていない。 将臣君にまた聞いてみよう。 君が聞きたいのは、向こうの世界の歌だよね。 練習するから。 君の好きな歌を。 練習して、君と新しい家族に聞いてもらえるよう頑張るからね〜。 たださ、歌は母上や朔にも聞かれちゃうよなぁ。 それも・・・なんだか照れくさい。 子守唄も母上に教わっておかないと。 色々な歌を。 たくさんの言葉を。 贈りたいから。 想いを伝えたいからね─── |
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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→京で二人の子供が?!
あとがき:声も楽器だなぁ〜と思うのです。声がイイのはそれだけでポイント高いv (2005.7.7サイト掲載)