想いのままに ≪景時side≫ 昨日の今日で週末だからなぁ。 有川家で過ごせるのは、楽といえば楽。 ただ、本当のところはちゃんを独り占めしたかったかな。 「景時さん。支度できました?」 スリッパの音も軽やかに、オレの部屋へ呼びにきた。 支度は出来てるんだよね。 「う〜ん。出来てる・・・かな〜?」 わざと曖昧な返事をしてみる。 きっと心配して近くに来てくれるハズ。 「ええっ?!特別な用意はいらないですよ?だって、今夜だけで・・・・・・」 よかった。君も今夜だけと思っていてくれたんだ。 あと一歩こちらへ来たら─── 「捕まえた!」 「ひゃっ!・・・もう!嘘だったんですね?」 君の頬が膨れようともおかまいナシ。 だって、思いっきり抱きしめたかったんだから。 「嘘じゃないよ。心の準備がまだだったから」 「どんな準備なんですか〜、もう!そろそろ行きましょう」 ふわふわと気持ちが軽くなったオレの様子を知ってか、知らずか。 君に促がされるまま有川家へと向かった。 「こんばんは」 お決まりの挨拶を済ませると、すぐに夕食で。 豪華なメニューに舌鼓を打って満腹でご機嫌! デザートを食べる君の顔が好きだなぁと、ついつい眺めて。 「景時。鼻の下伸びすぎ」 「ええっ?!そんなトコ伸びないって!」 将臣君にからかわれ。 紫子さんに笑われ。 考えてみれば、紫子さんもちゃん大好き人間だけど、鼻の下は伸びない。 そこは男女の違いかな。 食事を減らしてでもデザートをたくさん食べている君を、誰もが優しい瞳で 見守っていて。 「これ〜!すっごく美味しい。何のクリームなんだろう?」 そんなに嬉しそうだと、作る方もやりがいあるだろうね〜。 オレのあてにならない発明より、何倍も確実に笑顔が見られていいなぁ。 今から料理人へ転職か?! 「やれ、やれ。を待っていては、いつまでも食事が終らないね。先に失礼するよ」 「本当にそうね。ほどほどになさい」 さすがご両親はあっさりしてる。 「はぁ〜い。おやすみなさい、パパ」 あとひとつ食べるんだろうな、ケーキ。 譲君は悔しそうに見ているし。 ・・・さり気なく研究してるけど。 プロの料理人と張り合おうっていうのは無理じゃないかなぁ。 とはいえ、セミプロぐらいの腕前の持ち主。 まるっきり無理というものでもない。 オレより確実に料理人向きだ。 「景時君。少しいいかい?」 「は、はい」 行成さんに呼ばれ、将臣君と二人で書斎へ行くと、しっかりお父さんがいるし! 「譲君はケーキを研究したそうだったからね」 「すぐに来ますよ。あれでちゃんと役目をわかってる。母さんとおばさんがいれば、 お茶会の始まりって事で」 将臣君の言う通りに、すぐに書斎をノックする音がして。 しっかり全員揃ってしまった。 さすがとしか言いようが無い。 「今回の事、のためにありがとう。少しばかりに灸を据える意味もあったんだ けれど、結果がすべてだからね」 うわわ!お父さんが頭を下げた。意外でもあるし、納得でもある。 「・・・何か考えあるんですか?、春休みには京都へ行くだろうし。俺たちだって 行くつもりでいる」 「勘がいいね。私は行かないが・・・景時君とは行くんだろう?今回の事は、晴純殿 の先走った行動とだけ言っておこうかな。純頼君とを娶わせたいとのお考えは、昨年 末に伺っていたし。残念ながら、今時は親の言いつけで結婚するような時代じゃない。案 外、純頼君はが好きだったのかもしれないね」 将臣君の質問に、さらりと返事をしていらっしゃいますが。 ・・・オレにとって大変嬉しくない内容のような。 「ん〜、かもしれない。小さい時のアレって、好きな子いじめだったろうし」 「さあ?相手にわかってもらえなければ、意味のない幼すぎる行動だね」 ふふんと鼻を鳴らしているお父さんがオレを見てるし。 オレは・・・どちらかというと、意識しすぎちゃって、普段通りにしようとして、逆に ドジばかりって感じで。意味すら見出せなさそうですが。ははっ。 「ま、安心して皆で京都へ行くといいよ。・・・翡翠が友雅とも繋ぎをつけてくれてね。 今度はちゃんと話す時間があると思うよ?景時君が知りたい事とか・・・ね」 「ありがとうございます!実は、行く前にご相談しようと思っていて・・・翡翠さんが せっかく教えてくれた大切な事だったんで」 あの護符の製作者である稀代の陰陽師を知る人ならば、何らかの情報を持っているかも しれない。 藁にもすがるとはよくいったもので、糸を手繰り寄せるような作業だ。 「雅幸さんは行かないんですか?それは・・・・・・」 「行ってもいいけれど、向こうが警戒するし、何かご準備して下さるだろう?そういうの は面倒だねぇ。それとも、アレ、何とかしてくれるのかい?残念ながら私はやり返せない 立場でね。しかも、会長に見つかった日には、つまらない長話しにつき合わされそうで、 心の病になってしまう。あまりにも憐れだと思わないかい?」 ここでちゃんなら全然ちっとも思わないとか言いそうだ。 つい想像して口元が緩んでしまう。 行成さんとしては、蛇に睨まれた何とか。 やり返せないなんて、珍しい事もあるといえばあるもんだな。 あ!年末のアレだ。お母さんに注意されてたっけ。 「景時君にすべてお任せするよ。必要なモノは何でも言ってくれれば用意するし、伝手も ある。翡翠なら大体の事はできると思うけれど。友雅にも気に入られれば、あの町で藤原 を恐れる理由はないよ。・・・君がしようとしているのは、今の事じゃない。もっと源流 に遡り、正そうとしているのだろう?必要なのは、友雅や翡翠たちの様に、過去を知り、 今を知り、智慧を持つ者たちだ」 「知ろうとした人もですよ。ね?お父さん。オレは偶然ではないと思ってます。頂いた書 物は、整理しながら大きなところは読みました。細かなところまでは時間が足りません。 オレ、何でもアリで行くと思うので」 オレの出来る事、誰かが出来る事。 何でも使う。 今まで見ないフリしていた結果の大切さを知ったから。 たったひとつの守りたいモノのために、守りきったという結果をださなければいけない。 「・・・うちの息子は、親を扱き使うつもりらしいよ?」 「いえいえ、家のです。親代わりのつもりですから。それに、雅幸さんはサボリ癖がある。 偶にはよいでしょう」 お父さんと行成さんの関係も不思議だよな〜。 「親父。いつも息子を扱き使って、どの口が言ってんだよ。雅幸おじさんも。景時をからか い過ぎると、の仕返しがこっちに来るんだぜ?」 「そうだよ、父さん。全部俺たちに言わないで、色々進めておいて。こっちにだって都合が あるんだからな!」 将臣君も譲君もしっかりしてる。 ちゃんと行成さんに意見を言えるんだから。 「の仕返し・・・ねぇ?怖いような、今となってはどうでもいいような」 「あまり無理なさらない方がいいですよ。ちゃんが毎日夕ご飯を作りに来ますよ?」 親孝行のふりをして、ご飯だけ山盛りに出されるというプレッシャーが。 彼女が一度言ったことだ。 お父さんの態度によっては実行されるに違いない。 「一日せっせと働いて、帰宅して食べる夕食が米の山でもねぇ。気が滅入りそうだ」 「そ〜です。ここは協力をお願いします。とにかく・・・あの謎は解かないといけないし、 解いた後についても考えないと。晴明神社の禰宜さんクラスの人は、気脈の変化に気づくと 思うんです。けれど、一般の人には影響は無い。基本的には方違えでどうにかできないかと 考えています。今ある建物を壊したり、移動させるのは難しいだろうし・・・・・・」 片っ端から気脈を塞ぐ何かを正せばいいんだろうけど。 どれぐらいの数か、規模かまで、何もわかっていない。 「いいよ。言ってくれれば。借りてもいいし、買ってもいい。藤原所有地ならば、藤原の会 長の方に直接頼めばいい。案外、すべてそうかもしれないね」 「ありがとうございます。春休みになったら・・・行って来ます」 その他にも色々と長話をして。来月には行くだろう京都へ思いを馳せる。 君が桜色のあの地に立つ姿を想像しながら─── |
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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→現代へ
あとがき:時期的には近くなってる! (2009.01.26サイト掲載)