待ちに待つ  ≪景時side≫





 ちゃんのテストが終った。
 オレはかなりこの日を待っていたんだ。
 だって、約束したからね?
 それなのに───


ちゃん!帰ろうか〜。今日は買い物してから・・・・・・」
 テストが終ったであろう教室のドアを開ける。
 振り返る君の姿を見た途端───


「梶原先生!!!先生はテストの採点やら仕事がまだまだあるんです!」
 学年主任の佐藤先生に叱られた。
 ・・・採点なんて誰がしてもいいんじゃないかなぁ。


「・・・梶原先生?私なら大丈夫ですから」
「え〜〜〜〜っ」
 あっさり君に見放され。

「え〜・・・なんて、子供みたいな言葉は使わない!」
「ははは、はいっ!」
 どこか朔を思わせる厳しい佐藤先生は、少しばかり年齢を重ねている
ご婦人だったりする。
 あれだね。オレの母上の年齢に近いかもしれない。


「先生。さようなら」
 礼儀正しくお辞儀をして教室を出て行ってしまう。
「待って〜〜〜!」
「梶原先生!ふざけていないで仕事です」
 オレの手は虚しく宙を切り。
 佐藤先生に腕を掴まれ、引きずられるように職員室へと連れられた。







 ようやく仕事が終わって帰宅すると、本日の夕飯のニオイが鼻をくすぐる。
「ただいま〜!」
「お帰りなさい、景時さん。お疲れ様でした」
「うん。悲しかった」
 嘘じゃない。
 だから、玄関まで出迎えてくれたちゃんを心ゆくまで抱きしめた。

「景時さん?」
「うん。・・・将臣君が意地悪するんだよ〜?ちゃんを実家へなら送ってやる
とかさ。家に居てくれてよかった〜」
 景時が一緒に帰れないとなれば、は一人になってしまう。
 心配で将臣に頼んだのに、返された返事は冷たいものだった。


 『家に帰るついでっていうなら。の実家なら俺は家に帰れるし?』


 確かにお隣だしさ。ちゃんを迎えに行けばいいのはわかってるけど。
 帰宅して“お帰りなさい”は誰も言ってくれないんだよ、それじゃ。


「もぉ〜。私だって実家に行ってもお家のことが何も出来なくて困るんです。
私のお家はココなんですから。今日は景時さんの好きなおばんざいシリーズだよ?
早く帰れたから頑張ったんですからね!」
 どこか得意げにオレに報告してくれる君の笑顔が嬉しくて。
「やった〜!それは楽しみ。その前に・・・・・・」
 再び君を抱きしめて、その耳元へ囁く。


 『週末、食べ歩きデートしようよ』


 別にこそこそ言うものでもないんだけれど。
 なんとなく、そうしたかった。
 そうすれば、きっとイイことが訪れるから。


「えへへ。私もね、いつ言おうかな〜って思っていたんですよ?ドライブつき?」
 オレを見上げる君の嬉しそうなこの表情がとても好きだったりする。
 こう・・・オレに抱きつきながら見上げる時は、何かを確認したそうで可愛い。
 確認したいのは、オレにとってそれが無理をしての事ではないかどうかなんだろうケド。
 こちらの世界に馴染みが薄いオレを心配してくれてるんだよね。

「もちろん。運転の練習をしないといけないし。買い物したら手荷物が増えるしね」
「そんなにたくさん買わないですよ?」
 う〜ん。しっかりさんだ。
 家計簿なるものをつけているは知っている。

「いや、いや、いや。荷物を持つのはいいんだけど。君と手を繋げないのは嫌だから」
「・・・あはは。景時さん、意味不明〜〜〜。すぐに夕飯の支度しますからね」
 するりとオレの腕から逃げてく。


「参ったな・・・・・・本気で言ったのに」
 照れると時々逃げてしまう。
 耳が赤いからバレバレではあるんだけれど。

「オレの耳も熱いかな・・・・・・着替えますか」
 軽く自分の耳に触れ、その熱を確認した。



「また将臣君に嫌がられそ〜。惚気るなって」
 惚気られるのは幸せなことだ。
 君といるというシルシでもある。



「週末・・・何を食べようかな・・・・・・」
 甘いものは嫌いではないけれど。
 女の子たちが食べるようには食べはしない。



「朔がきたら・・・大変だろうなぁ・・・・・・塩気のお菓子を探そ〜」
 この世界にはいない妹を思い浮かべる。
 永遠の別れではない。
 いつか会える別れは別れではないと自分に言い聞かせた。
 






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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→現代へ

 あとがき:食べ歩きデート!美味しそうな話題だわ〜v     (2007.08.03サイト掲載)




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