誓い  ≪望美side≫





 約束って、本当の約束となんとなくの約束があって。
 私的にはいつも真剣なんだけど、相手は違うんだなって思うこともあって。
 だから、今日届けられたお菓子には感激した。

「どうしよ〜。こっちは雪っポイですよね?」
 チョコレート菓子にかけられたシュガーパウダー。
 雪の結晶の透かしが入った可愛い箱の中の小さなお菓子たち。
 見ているだけで楽しいし、もったいないけど、お菓子は食べてこそなのよ!
「うん。工夫してあるよね〜。こっちはさ、菜の花畑みたい」
 春色の箱には春色のお菓子。
 女の子の気持ちがわかってるって感じよ。



 菊池さんと知り合ったのは京都で。
 何だかカフェをしたいって言っていて、なんとなくお菓子の試食をする
約束をした。
 お料理がとても美味しいお店のお家の人だったから。
 お菓子やデザートも美味しいモノが期待できそうでしょ?
 ただ、ああいう約束って話の流れでしちゃって、実現するとは限らないって。
 子供の頃とは少しだけ違ってしまった私には、どこかで忘れられてしまうかなと
いう思いもあったのに。

 そういうなんとなくの約束と違っていたのは、景時さんの友達という事。
 だから、この約束は必ず守られると思っていた。
 偶然にレストランで出されたデザートプレートの可愛さに写真を送ろうって。
 それだけしかしてなかったのに、こんなに嬉しい贈り物になって返ってきた。



「景時さんはどれがいい?」
「オレ?オレはその緑色のが気になるかな〜。抹茶味なんでしょ?」
 景時さんが指差したのは、春色の箱にあった抹茶のチョコ。
「じゃあ、私はこっちの・・・ビスケットにします」
 選べないけど選ばなきゃ。
 どれもこれも可愛くて齧ったら可哀想かなぁ?

「う〜ん。苦い・・・甘い・・・渋い・・・なんだ?」
 景時さんが考え込んでる。
 景時さんって、不思議なことに遭遇するとしばらく無言なんだよね〜。
 頭の中でぐるんぐるんに考えてるんだと思う。
 こういう時はそっとしておいて。
 私は淹れたてコーヒーとお菓子を楽しむ。
 これって食べてからビックリだよね。
 優しい味なんだけど美味しい。
 甘すぎず・・・だけど、これって。

「ゴマが入ってるのかも・・・・・・」
 最初は木の実かと思ったけど違う。
 もしかして、今時の健康ブームも意識してとか?
「ゴマ!ゴマね〜。そうか〜。こっちは黒豆なのかな。うん」
「あ〜〜!お茶に黒豆っていえば、朔が・・・・・・」
 思い出した。朔がよく作ってくれていたおやつ。
「だね。これは抹茶だけど、そっちのは蓬とかね。な〜るほど。つまり、いわゆる
西洋菓子風で違うってやつか。考えたね」
 すごぉ〜い。可愛いのに昔っポイ。
 それに美味しいし。
「箱がね、ちょうどハガキサイズだな〜って思っていたの。これって箱に思い出を
つめてねって意味かな?」
 写真を入れてもいいし。小物だっていい。
 私が何気に言った和紙を使った箱とかって覚えていてくれたんだ。
「あはは。君らしいなぁ。そんな事考えてたんだ。洋二だからどうだろうね?」
「きっとそうですよ!だって、ここの一マスだけお菓子じゃないもん」
 小さく仕切られている一箇所には、とても小さなガラスのマスコット。
「これ、携帯につけてもいいし。置いてもいいし。それに、季節で違うのかも」
 手毬に扇。京都を思い出させるものたち。
 急いでカメラに画像をおさめる。
 小さいモノはアップで撮るの。
 可愛い、可愛い。これでハガキ作ろうかな?

「カフェはどうするつもりなんだろうね〜。湯のみでコーヒーとか?」
 景時さんが笑ってる。
 そういうのもいいのかもしれないけど、焼き物の方にこだわるのもアリかな。
「清水焼があったじゃないですか。あれでカフェオレボールみたいなのとかは?」
「ああ!それならコーヒーもいいかもね」

 次はどのお菓子を食べようかな?

ちゃんは・・・この後テスト勉強だからね?」
「あ゛・・・・・・忘れてた」
「う〜ん。早く思い出せてよかったね?」
「ひどぉーい!そんなに長く忘れません!」


 楽しい時間はあっという間。
 憂鬱なテスト期間だけど、なんとか頑張れそう。
 明日のお菓子もあることだし。
 ふぁいとっ!






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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→現代へ

 あとがき:テストの緊張感は好きですよ。最近ないけど(笑)     (2007.06.16サイト掲載)




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