甘いものは  ≪景時side≫





 すっかりくたびれた表情の君が教室でオレを待っていてくれた。
 嬉しいんだけど、どうにもこうにも。
 たぶん・・・テストの出来栄えがよろしくなかったと。
 そんな感じなのかな?


「お待たせっ!早く帰って勉強しよう!」
「え〜〜〜。苦手な科目はそんなに頑張らないからいいです」
「そうなの?」
 ちゃんの頑張るという基準はかなり高い位置に設定されていると思う。
 無理しちゃうんだろうな。

「じゃあさ、お昼は食べて帰ろう?」
「ダメ!外食は時々だからいいんです。私、ちゃんとできますよ?」
 そういう意味で言ったって、わかっちゃったか。
 何にでも一生懸命すぎるからねぇ・・・・・・。

「それでは間を取って。買って帰ろう。オレはね〜、今の気分は・・・おでん。
間違いない。出来れば肉まんも欲しい」
「コンビニグルメちっくですよ?でも・・・私も食べたくなっちゃった」
 成功、成功。
 この季節、温かいものがついつい欲しくなる。
 ちゃんも食べたくなってなら問題ナシ!
 これなら気にしないでしょ。

「え〜っとね。お菓子も買っちゃおうかな?」
「ん〜?昨夜チョコレートたくさん食べちゃったんじゃなかったっけ?」
 本日はデザートが到着予定だからね。
 あまりたくさん購入されては困る事情があったりもする。
「・・・だって、ひとつ食べたらとまらなくって」
「あはは!たくさん買い置きしなければいいんじゃないかな」
 そうこうするうちに電車がきて。
 自宅近くのコンビニに寄り道をして。
 たのしく二人で少し遅めのお昼を食べて別行動。
 


「さてと。オレは・・・・・・この本を先に読もうかな」
 京都の件以来、ちゃんのお風呂での修行は続けてもらっている。
 二人で入る時は必ず。
 別の時も練習してくれているらしい。
 実のところ、水は扱いにくいんだよね。
 それでもいきなり小さな球体とはいえ出来ちゃったんだよな〜。
 さすが龍神の神子。と、いうか。ちゃんの資質なんだろうね。
 素直さが自然の力をも取り込むっていうか。
 ちゃんだから神子に選ばれたのだと、そう思える。

「次は・・・風かな・・・・・・オレも風はいけるし」
 人は五行の性質が生まれながらに決まっている。
 オレにしてみれば水は得意だったわけで。
 火はちょっと問題ありなので最後にするとして、風。
 これは正直苦手な部類。力加減がね〜、少々難しい。
 近所迷惑にならないように、週末にドライブしながらどこか広い場所でがいいね。
 さすがにこのマンションを吹き飛ばしては叱られる程度では済まない。
 見上げれば時計の針が程よい時間を示していた。

「さぁ〜て。コーヒーを淹れて待つとちょうどイイかな?」
 人間の集中力には限りがある。
 一般に大人で九十分が限界らしい。
 ちゃんが部屋に篭ってそれくらい。そして、洋二と約束した夕方もそろそろ。
 コーヒーは得意になってきたからね。
 豆選びは楽しいしね〜。
 ついつい鼻歌も出るというものだよね〜。



「景時さん?あのぅ・・・明日は理科はないんだけど・・・こっちがね?」
「何?オレでよければ喜んで〜〜〜って、漢文だね」
 この世界では文字はとても発達していて。
 意思の伝達だけでなく、気持ちの伝達としての記号まである。
 そういった意味ではこの漢字だけという文章はカタイ。
 今では、かなり凝縮して見たくないという気すら起きる。

「あれだよね。こう文字がぎゅうぎゅうしていると見た目で面倒だよね〜」
「ですよね〜〜〜。今はこんなの使わないのにぃ・・・・・・」
 不満顔が可愛いなぁ。
 ちょっと疲れ気味だけど、もう少し待っててね?
 君の笑顔が見られるモノが届くから。
 そんな時に玄関のチャイムが鳴った。出来るな、洋二のヤツ。


「誰かな?将臣くんとか・・・・・・」
「いいよ、オレがでるから。少し休憩してからにしよ〜。コーヒーお願いするね」
 後はカップに注ぐだけとなったコーヒーを任せて、玄関へ急ぐ。
 予想通り荷物が届いた。



「景時さん?」
「うん。お客さんじゃなくてね、荷物だった。洋二からみたいだね〜」
 手際よくテーブルで開けてみせると、すぐに君の瞳が輝きだす。
 もう中の箱は開けなくても、わかっちゃってるみたいだね。

「すごぉ〜い!箱まで可愛い〜〜〜」
 二種類の箱が季節の移り変わりを示している。
 ひとつは雪の模様が入った白い和紙の箱。二月までは使えそうだ。
 もうひとつは柔らかな萌黄色の春先に似合いそうな小花が入った和紙の箱。
 中の菓子もそれぞれ季節を表現しており、の視線は釘付けだ。
 さらに大きな箱もある。


「え〜っと・・・休憩にする?」
「しますっ!!!」
 返事はやっ!しかも、どこへ行くのかと思ったら。
 手にデジカメを持って戻ってきた。


「どうするの?」
「これは食べちゃったらなくなっちゃうもん。皆にも感想聞いたら、洋二さんも
嬉しいかな〜って。これ、お試しにしては無理がありますよ?」
 確かに箱ひとつとっても凝った作りだ。
「だよね〜。かなりの自信作で、入れ物はこれって決めたんだろうね」
「ですよね。この箱丈夫だし、食べた後に何か小物入れに使えそう。このサイズって、
たぶんこの大きさ・・・・・・」
 が取り出したのはハガキだ。
 大きな箱には小さな箱がちょうど二つ入るようになっていた。

「うわ〜〜〜。お土産より自分で欲しいかも・・・・・・食べるのは小さい方にして、
大きいのはこっそり皆で食べよ〜〜」
「こっそりじゃなくてもいいんじゃ・・・・・・」
 何故にこっそり?!

「だって、テスト期間中ですもん。遊んでると思われたら困るけど、皆で食べたら
楽しいし感想も聞けるし。ね?」
 両手でマグカップを持って微笑まれると弱いんだよな〜。
「だね。明日、テスト終わったら軽くこれを食べながら教室で待ってて」
「うん。一応勉強している風に教科書広げて待ってますね」



 本当に嬉しそうな君を見ていると、オレも嬉しくなる。
 甘いものは別腹って、女の子限定で真実だなと再認識した。






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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→現代へ

 あとがき:最近チョコが止まらない。アイスまで追加中。危険な別腹ぶりの氷輪。     (2007.05.20サイト掲載)




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