裏技 ≪望美side≫ 今更だから、パパたちがどんな裏技を使ったんだろうって。 そこを詮索するつもりはなくって。 ただ、景時さんが先生っていうのは似合う気がする。 だって、何でも本当に親切で。 相手がどう理解したか考えながら、次の言葉を探してくれる人。 そんな景時さんだから、先生っていう仕事は向いてると思った。 「オレのだよね!」 「そうですよ」 お弁当の蓋は料理が冷めてから。 ・・・温度で食べ物が傷むからなんだけど。 二つのお弁当箱をテーブルに並べていたら、景時さんが眺めていた。 「オレのこっちだよね〜。今日も一緒に食べられたらいいな〜」 「景時さんはお昼の心配より、朝ご飯の方!早く、早く!」 放っておくと、いつまでもお弁当を眺めていそうで。 慌てて手招きをして、食卓に着いてもらう。 「あれ〜?朝ご飯、わざわざ別のおかずにしたの?一緒でいいのに」 「だって・・・・・・」 手抜き主婦って思われたら嫌だもん。 昨夜に少しだけズルしてお弁当のおかずを作り置きしたけど。 「だから昨夜たくさん夕飯作ってたのか〜〜〜。いいんだよ?」 「だって・・・・・・」 あ〜あ。またあっさり見つかっちゃった。 景時さんは人の気持ちを見抜くのが特技なのかな? 異世界で眠れなくて。 簀子で星を眺めていた時も見つかっちゃったし。 あの時も─── 『どうしたの〜?ああ!星を見てるのか。星はいいね』 隣に座って一緒に夜空を見つめてくれた。 確かにひとりは寂しかったんだけど泣くのは嫌で。 泣きたくてひとりになったのに、泣いたら何かが変わってしまいそうで。 誰かがいたら、こんなにしんみりとしちゃいけないしとか。 そんなぐちゃぐちゃな時に、黙って隣に座っていてくれた。 『あの・・・・・・』 『ほら、ほら。黙ってよぉ〜く見てないと、星が動くのを見逃しちゃうよ?』 それこそ、何か話さなくてはと話題を考えなきゃって。 話さなくていいように、先に気を遣ってくれて。 「流れ星、また探しましょうね?」 「ん〜?・・・・・・もう少し暖かくなったらね」 ご飯を食べていた景時さんが、ちょっと照れて次のおかずへ箸を移した。 やっぱり覚えてるんだ。あの日のこと。 「来週テストだから、それが終わったら!あ・・・食べ歩きが先ですからね?」 「そっか〜。そういえばそんな事言われてたよ。テストの試験官」 考えてみればそう。 景時さんは先生だもの。 「・・・景時さんはテスト問題作らないの?」 「うん。今回は作ってあるから、それを配ってさせるだけなんだって」 そ、そうよね。 景時さんがこっちの世界に来て、まだ一ヶ月たってないのに。 「ちゃん」 とつぜん景時さんに両手をとられた。 「君はオレのとっても大切で可愛い奥さんですが、次回のテスト問題は秘密だからね。 オレが試験問題を作るようになっても、学校で問題を作って、家には持ち込まないように するし。君が周囲から誤解を受けないように最善を尽くすから安心して?」 うわ〜、真面目。 真面目だよ、景時さん! 「大丈夫ですよ?私、理科苦手だから」 「そうだったのか〜。・・・・・・そんなぁ〜〜〜〜〜」 すっかり眉毛がハの字になっちゃった景時さん。 だって、物理や化学が好きな女の子は、かなり少数派だと思いますよぅ? ややこしいし・・・・・・。 「ちゃんが好きな科目の担当の先生が羨ましいなぁ・・・・・・」 そんなわざとらしく呟かなくたっていいのにぃ。 「きっと、とっても熱心に授業を聞いちゃったり、質問に行っちゃったり・・・・・・」 何を考えてるの?景時さん。 「ここを教えて下さ〜いとか、楽しいんだろうな・・・・・・」 わかってなくて質問しているのに、楽しい訳ないじゃないですか。 朔じゃないけど、ツッコミしたい衝動が。 こういう時にあの見事なツッコミをして欲しいな。 う〜ん。アレは朔にしかできないかも。 「景時さん。ご飯、手が止まってます。遅刻は嫌でしょう?」 私にツッコミはちょっと無理。 言葉が思いつかないんだもの。 だけど、これでいいの。 「は〜い。他は全部オレが一緒だから諦めるよ」 何をどう諦めたのかわかんないけど。 「そうですよ。お昼も一緒なんでしょう?お教室で食べてても違和感ないですよ、きっと」 「ほんとに!?みんないい子ばかりだったしね〜。うん、うん」 そうなのよね。 景時さんが年上って誰もが忘れてると思うの。 将臣くんが原因だと思うのよね。 しかも、景時さんがいわゆる“タメ口”というものをまったく気にしてないから。 「景時さん。お弁当より授業の心配して下さい」 「あ、そうか。いいの、いいの。教科書っていうのを読んだら、だいたいわかったから」 侮れない人が私の旦那様。 教科書を読んだだけでわかっちゃってるって、どうなんだろう・・・・・・。 やっぱり景時さんは何でもできちゃう人だと思った。 |
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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→現代へ
あとがき:どこにそんなコネクションが・・・というのは深く考えないで下さいね!ってことで。 (2007.02.18サイト掲載)