月曜日は朝礼





 ついに月曜日の朝。
 そしらぬふりで景時は顔を洗い、朝食の席に着く。
 まったくもっていつも通り。
 そうこうして家をでる時間になる。
 いつもと違う箇所については、が電車を降りる時に判明した。

「景時さん?!」
「ん?」
 の隣には景時が立っている。
「どうして降りちゃったの?!景時さん、遅刻しちゃう!次の電車乗って?」
「いや、いや、いや。今日からはココの駅だからいいの。帰りに定期の買い方、
教えてもらえるかな?」
 と手を繋ぐと、改札へ向かう景時。
「景時さん!そんなに心配しなくても、私、頑張れるから!大丈夫ですよ?」
「それは知ってる。ちゃんはカッコイイからね〜」
 軽く笑っての言葉は流されてしまう。
 景時流の気遣いであるのはわかりきっているのだが───


(心配しなくても、頑張れるのに・・・・・・)


「どうしたの〜?そんな顔して。月に一回、月曜日は朝礼っていうのがあるんでしょ?」
「ええっ?!そんなのまで知ってるの?将臣くん情報?譲くん情報?」
 週末は景時とだけで過ごしたのだ。
 将臣と譲に連絡をとった気配はなかったが、メールという事もある。
「さ〜?どうだろうね〜〜。オレが一緒だと恥ずかしい?」
「そんなことないけど、景時さんが遅刻しちゃう・・・・・・」
 これから毎朝を送るのだろうかと思う。
 それよりも迎えにまで来るとなると、景時に迷惑をかけてしまう。
 純頼と戦うとまではいかないが、少なくとも負けるつもりはない。
 景時に守られずとも、なんとか切り抜けられると自負していたのだ。


(あと一年で卒業だもん・・・へーき。頑張れるよ・・・・・・)


「遅刻じゃないよ。うん。それは安心してね。着いちゃった!」
 校門で立ち止まる景時。つられての足も止まる。
「いってらっしゃい!」
 繋いでいた手が離されては、は昇降口へ向かうしかなさそうだ。
「・・・いってきます・・・・・・帰りは?」
「もちろん!ここでって言いたいけど。ここは寒いからね。メールするよ」
 予想通り景時はを迎えに来るつもりらしい。

(心配性だよ・・・景時さん・・・・・・)
 大切にされるのも度が過ぎると相手に悪いと思ってしまう。
 としては頑張れるところをみせたいのだ。

(まずは行動で示せばいいよねっ!)
 元気に帰れば景時にが学校生活で困っていないとアピールできる。
 そう考え直し、笑って手を振りながら教室へ向かった。



「さ〜てと!オレの行き先は・・・・・・」
 の後姿が見えなくなってから景時も歩き出す。
 景時は先週訪れた校長室を目指して、職員用の玄関から校内へ足を踏み入れた。





「おはよう!」
「おはよう、。まあ〜た送ってもらってたでしょ。今朝は彼氏に」
 どうやら見られていたらしい。
 誤魔化すのも変なので素直に頷く。
「そ〜なの。いいでしょ?」
「自慢ですか。はい、はい、はい。学校までは先生に見つかって何か言われないかな〜?」
 確かに恋愛は自由といっても、まだまだ成人していない高校という学び舎の前。
 何かと神経を尖らせている教師たちの目に留まっては、良くて注意、悪くて謹慎もありえる。
「うん。大丈夫なの。それは言ってあるから」
「はい〜?誰に?」
 くるみの質問に答える前に、将臣が教室へと入ってきた。

〜!お前さ、コレ親父さんに預かってきたぞ〜。忘れもん」
 教室の入り口へと首を向ければ、人の悪い笑みで将臣が小さなトートバッグを掲げている。
「まっ、将臣くん!そんな・・・忘れ物だなんて・・・・・・」
 忘れ物などあり得ないのに、忘れ物と言われるといかにもがしっかりしていないと周囲に
とられてしまう。
「あはは!のドジ〜〜〜。朝から惚気てるからだよ」
「くるみちゃんまで!違うの。違うんだからっ!」
 将臣の手から奪うようにトートバックを受け取る。
 ふと、一枚のメモが入っている事に気づく。

「・・・何だろ。メモよりメールでいいのに」
 雅幸の意味不明な行動の意味が判明するだろうかとメモを開く。


「・・・・・・・・・・・・え?」
 メモを読み終えたが将臣へと顔を向ける。
「ま、そういうことだ。俺が遅刻しないで朝礼のために来たんだぜ〜?行くぞ」
 確かに将臣がこの早朝にいるのがおかしい。
の忘れ物のお陰で遅刻しなかったとか?ラッキーじゃない」
 くるみは腕時計で現在時刻を確認する。
 まだまだ早い時間であり、教室内の生徒もまばらだ。
「まあな〜。隣から忘れ物を届けて欲しいって来られちゃなぁ〜。叩き起こされたぜ。
まだ寝たりない・・・ふぁ・・・・・・・・・」
 特大の欠伸をこぼしつつ、将臣は首を回して眠気を覚ます。
「・・・・・・将臣くんって、よくわかんないうちにパパと仲良しだよね?」
 以外の人たちの連携の輪があるらしい。
 そういったモノの存在をひしひしと感じる。
「いや〜?仲良しっつうか・・・家の親父がな」
 缶コーヒーのプルを開け、もうひとつ欠伸をしてから飲み干す。
 教室の入り口には朝の練習を終えたのであろう純頼が立っていた。


「おはよう。・・・将臣。遅刻常習犯と噂の君が早いなんてね?」
 の机に寄りかかり立っている将臣の前へ歩み寄る。
「いや?今日だけな」
「おはよう、藤原君。の忘れ物お届け係だっただけだよ。郵便やさんみたいにね」
 くるみが理由を説明する。
「そうなんだ。おはよう、ちゃん」
「おはよう」
 挨拶は最低のルールだと思うので、もそれは無視せずに返す。
ちゃんが忘れ物しちゃったの?おかしいな・・・忘れ物なんてないのにね?」
 両親と暮らしていないのだから、忘れ物を将臣が届ける理由がないのだ。
 どうとでもとれる言葉でを攻め立てる。軽い脅しをこめて───

「これは、ママが気を利かせてくれただけで忘れ物じゃないもの。パパは家を出るついでに
将臣くんに頼みに行っただけだよ」
 臆することなく堂々と純頼へ言い切る。

「・・・ついでかよ。ついでに起こされる俺の立場ってもんが・・・・・・」
 再び欠伸をしながら将臣が目を擦る。
「起きて学校来てるのが普通だから。いいかげん有川兄は弟見習いなよ。評判だよ〜、譲君」
 くるみが真面目で可愛いと大人気の譲を引き合いに出す。
「んあ?アイツは特別・・・・・・いてっ!海人!」


 教室の入り口でイタズラの成功に手を叩く海人。
 海人も弓道部員だ。
「お兄ちゃんがグウタラだから弟がしっかりさ〜んなんだよな?俺の朝飯返せ」
 おにぎりを将臣目掛けて投げたのだ。
 将臣が軽く放って返す。
「ある意味、俺のおかげじゃん?」
「言ってろ。しっかし譲は腕上げたよな〜。ぜんっぜん勝負になんねぇ」
 おにぎりの包みを開け終え、一口かじりつく。

「な?藤原。お前も今朝は押されてたよな〜。連続十本、全部ど真ん中。大会であれなら優勝」
 他意はないのだろうが、純頼にとっては有り難くなく、将臣たちにとっては有り難い情報だ。

「アイツがそんなに真剣にやるとは・・・・・・普段マジメだから壊れると怖いよな〜」
 別荘の勝負を仄めかす将臣。
 最初から無いものが手に入るかどうかだけの話なので、有川家側にすれば痛くもない。
 見栄っ張りの晴純に仕掛けたのは紫子なのだ。

(・・・自分の親だけどよ。案外くえないぜ〜?)
 紫子がを好きなのは真実だ。
 別荘を買い取るという方法があるにもかかわらず、兄の性格を利用して手に入れようとしている。
 も無料のモノは遠慮しないだろうという計算があるのだろう。
 
(母さんも実家はどうでもいいみたいだしなぁ・・・・・・)
 の温室の一件があって以来、節目にしか挨拶に行かなくなった。

「僕は練習不足だからね。しばらく秘密特訓しようかな」
 純頼はそれ以上言い返すことなく席についた。





 月に一度の朝礼。
 冬場は体育館で行われる。
 どうということではないが、校長先生の話が長い。
 誰もがこの行事を流しているのが実情だが、今日だけはざわめきが起こる。
 普通は年度の切り替えでされるはずの教師の交代の挨拶があるという話になったからだ。
 新任の教師として壇上に立っているのは景時だった。

「理科総合を担当していた鈴木先生が、大学院の研究に呼ばれて急遽大学へ戻ることになりました。
代行の特別講師として、学年の途中になりますが新任の先生から挨拶があります」
 紹介を受けた景時が、壇上のマイクの前に進み出る。

「え〜っと・・・梶原景時です。理科総合から物理に化学、生物まで担当する事になりました。
それと・・・場合によっては古典と日本史もという事なので、これからよろしくお願いします」
 照れているようでツラツラと挨拶を済ませる景時。
 昨年末にを迎えに来た景時の顔を見知っている生徒たちがざわめきだす。
「あっ!肝心な事を忘れてました。オレ、婚約者に会いたくて帰ってきたらこの学校で教師をする
事になっちゃいまして・・・その・・・婚約者がいる学校の先生になっちゃったのも何かの
縁かな〜って思うんですよ。はい。今度こそオワリです」
 頭を下げるとそそくさと壇上から降りて教師たちが並ぶ壁際へ立つ。
 へ視線が集まるが、順番としては昨年景時がを迎えに来ていたのは事実だ。

「・・・。ちょ〜有名人決定」
 小声でくるみがに話しかける。
「だって、知らなかったんだもん。景時さんが先生するなんてぇ・・・・・・」
 雅幸からのメモを見るまで知らなかったのだ。
 メモで知ったのは、景時が特別講師として後任者が正式に見つかるまで教師として仕事をする事。
 そして、本日の昼食がないから花奈が作ったお弁当を渡すようにというのが忘れ物の内容だった。
 との仲を婚約者として言うとまでは知らされていない。

(パパのおバカ〜!将臣くんもだよ。知ってたに違いないのにぃ・・・・・・)
 景時がいる方を向くことも出来ず、朝礼が終わるまでの我慢と俯いていた。



〜、機嫌直せよ。お〜〜〜い!」
 将臣が呼びかけようとも一度も振り返らずに教室を目指す
のお父さんもお母さんも面白いよね〜。有川君は梶原先生を知ってるの?」
 くるみが将臣と並んでの数歩後ろを着いて行く。
「ああ。アイツ、家の居候だったんだよ。親戚っての?うっかり景時って呼びそうだよなぁ」
 
「景時さんは優しいから呼び捨てでも文句を言わないだけなんだからっ!学校では先生だよ!」
 聞きつけたが振り返り、将臣を指差して注意する。
「へ〜〜〜い。梶原センセイ・・・・・・ぶわはははははは!!!」
 腹を抱えて笑い出す。
「何がおかしいのよ。失礼なんだから」
 さっさとは自分の席に着く。
 ぞろぞろと教室に生徒が戻ると、担任と景時が教室へ入ってきた。


「早く座れ〜。鈴木先生が副担任だったからな。先ほど紹介があったと思うが、今日から梶原先生が
このクラスの副担任になるから。それと・・・有川。親戚なんだって?」
 担任に名指しで呼ばれ、将臣が頷きながら返す。
「そ〜で〜す。留学していてが結婚出来る年齢になったのを思い出して、慌てて戻ってきた人を
知ってま〜す!な?」
 視線は担任をすり抜け、景時に移されている。
「・・・余計な事まで付け加えなくてよろしい。まあ、事情は説明しようと思っていたけどな。
の婚約者でもある梶原先生に自己紹介をしてもらいましょう」
 担任が教壇の前を景時に譲る。
 景時は軽く頭を下げると一歩前に出た。

「えっと・・・たはは〜。知り合いがいると挨拶し難いな〜。臨時の教員ということで総合理科を
中心に担当させていただくことになりました梶原景時です。その・・・ちゃんとはお隣さんで、
小さい時に結婚の約束をしていたもので・・・日本では十六歳だって知って慌てすぎてしまいまして。
何かと失敗してばかりですが、よろしくお願いします」
 教室が突如として記者会見場のようにどよめく。
 指笛あり、質問有りと収集がつかない。

 そんな中でが机を叩いて立ち上がると、途端に静かになる。
「・・・景時さん。お弁当忘れ物です」
 今朝ほど将臣に渡された小さなトートバッグを景時に手渡す。
「ありがとう!そうだよね〜、お腹空くよね〜」
 嬉しそうに両手で受け取る景時の様子に、純頼以外の誰もが納得して教室内は落ち着きを取り戻した。

「あの・・・ついでにもうひとついいですか?」
 景時がクラス担任の顔色を窺う。
「はい。何か?」
「実は・・・慌てすぎて婚姻届まで出してしまったっていうオチがありまして。隠すのも何ですから、
自分が担当するクラスの生徒には知っていて欲しいな〜・・・なんちゃって!」
 朝のホームルームの時間が大幅に延長し、ようやく一時間目の授業になった。



!新妻してるなんて知らなかったよ〜」
 休み時間になると、綾乃とはるかがの席の前に立つ。
「ごめんね?年明けなの、籍を入れたの。気づいたら話が進んでいて・・・そのぅ・・・・・・」
「そうなんだ〜。すご〜い!漫画みたいだね」
 同級生に既婚者がいるというのはかなり珍しい部類だろう。
「いっ・・・いいの!私も・・・ずっと景時さんが好きだったから。その・・・嬉しいし」
の幼馴染って有川兄弟だけじゃなかったんだね〜」
 今まで景時の名前が話に出たことはないのだ。
 聞きたがられても仕方がない。
「ちょっと遠くに行っちゃってたから・・・その・・・こっちに戻って来てくれたの」
が可愛くなったから心配で戻ってきたって?この〜〜〜」
 気のいいクラスメイトにからかわれまくり、大変な休み時間になった。





 昼休みになり、何故か景時が弁当片手に教室へやってくる。
「失礼しま〜す!」
「うわっ。先生だ!!!」
 生徒たちが声を上げる。
「ごめんね〜?初日で緊張しちゃってさ。ちゃんとお昼を食べたいな〜って」
「なさけね〜、梶原先生!!!!旦那と食べてやれよ」
 海人が景時の背を押しながらたちが食べている席に案内する。
「・・・その・・・邪魔かな?」
「どうぞ、どうぞ!ぜひ二人の馴れ初めとか聞きたいよね〜。ね!みんな」
 はるかが声を張り上げたため、教室中の注目を浴びる。
「なっ・・・だって・・・その・・・・・・はるかのおバカ〜!」
 真っ赤になってが俯いた。

「ん〜〜〜。馴れ初めらしい馴れ初めないんだよね。まだ小さい時にさ、いわばオレの一目惚れで
将来の予約しちゃったわけで。ちゃんの運命は有川さん家と隣の時点で決まってたとか?」
 ちゃっかり座って弁当箱の蓋を開けながら景時が語りだす。

「そんなに昔から〜?梶原先生って一途だ〜」
 感心したように何度も頷きながら、くるみがタコさんウインナーを頬ばる。
「砂吐くっての。アホな質問するなよ。聞かされるほうは耳タコ」
 少し離れた場所で将臣が言い捨てた。

「有川君は知ってるからだよ〜。副担任の先生がカッコイイって期待してたら売約済みなんだから。
これくらいの質問に答えてもらっても罰はあたらないしぃ〜」
 綾乃がのお弁当箱から玉子焼きを奪う。
「これ、作だよね。上手くなったよね?前なんて食べ物とは思えなかったもん」
「・・・それ、ヒドイよ。景時さんの前で」
 が景時を見ると、
ちゃんのご飯は美味しいよ?毎日食べてるし」
 口を動かしつつもの名誉挽回をする。
 小さいながらも黄色い悲鳴が上がった。

「梶原先生、大胆発言ですよ?毎日って・・・毎日の家に行ってるの?」
「違うよ。オレさ、こっちに戻ってきたものの住む場所がなかったんだよね〜。でさ、一人暮らしを
しようと思ったんだけど、料理まるっきりダメ。掃除もダメ。得意は洗濯のみって有様で」
 気持ちがいいくらい景時がクラスメイトを話術で惹きこんでいる。

ちゃんが花嫁修業がてら一緒に暮らしてくれてるんだ〜。だから、ご飯が美味しいのはオレの
保証付き。オレも少しずつ家事を覚えようかなって頑張ってるトコ」

「きゃ〜!いい旦那様。羨ましい〜」
「・・・掃除とかしてんの?先生が?ありえねぇ〜」
「あれだよね、今時の男は何でも出来ないと」
「でもさ〜、あんまり旦那様にされちゃうと鬼嫁っていわれるよ?気をつけなよ〜」

 いいたい放題の生徒たち。面白くない顔をしているのは純頼だけだ。
 他は景時のどこか抜けていながら愛嬌のあるボケぶりに好感を持ち始め、昼食を食べる輪が大きく
なりつつあった。



 ようやく放課後になり、は景時を教室で待つ。
 クラブがある生徒はいつまでも教室にいないし、クラブがない生徒はバイトなどがあり、帰るのは
とかく早いものだ。
 ぼんやりと窓の外を眺めていると景時の足音がした。
「お待たせ〜〜〜。帰ろう?」
「・・・梶原先生は。特定の生徒と帰っちゃいけない気がする」
 のためにここまでするのかと、とてもじゃないが手放しでは喜べない。
「ええっ?!特定って?ちゃんは・・・生徒の前に奥さんだし別だよ、別。言わなかったこと、
怒っちゃった?」
 溜息を吐きながらが首を横に振る。
「じゃ、どうしたの?やっぱり・・・・・・」
「景時さんを縛ってるみたい」
 景時が微笑みながら手を差し伸べた。

「それはね、逆なんだよ。オレが・・・誰にもちゃんを奪われたくなくて近くにいたいんだ。
だからこの仕事を選んだ。ちゃんに迷惑をかけるかもしれないと思ったけど、偶には自分の
気持ちを優先してもいいのかなって・・・・・・」
 こちらの世界で歓迎されていない事はわかっている。
 向こうへ帰れなくもないが、それではがいない世界に帰る事になる。

(オレは・・・君がいないとダメな奴なんだよ?)
 これ以上口を開くと、に取り縋ってしまいそうだ。

「・・・景時さんって、やっぱりモテモテなんだと思う。口が上手くって」
「どうかな?案外正直に言っちゃった方が面倒が少ないかなって思っただけだよ。夕飯の買い物に
行こうよ。今日はね、何が食べたいかなぁ」
 景時がの手を取って歩き出す。
「今日は梅干しだけ」
「ええっ?!梅干しかぁ・・・・・・顔がこぉ〜んなになっちゃいそう」
 すっぱいモノを食べた時の顔をして見せる景時。
 なんなとく気持ちがもやもやとしていたも、うっかり笑ってしまう。
「もぉ!景時さんたら・・・・・・明日からはお弁当、私が作るからね?ひとつも二つも変わらないし」
 は自分の分の弁当しか作っていなかったのだ。
 景時は会社だと思っていたから、荷物になるし、同僚と食べるだろうと景時の分は作らなかった。
 だが、学校となれば話は別。
 購買部でパン類を買ってもいいが、栄養バランスはいいとはいえない。
「ほんとに?嬉しいな〜。お昼もちゃんのご飯が食べられるんだ。ただ、毎日一緒は無理かなぁ」
 昼食時、教室という場所に先生がいるという事はないらしいと知ったのだ。
「景時さんが職員室で何か言われちゃわない?無理して一緒にってしなくていいんですよ」
 で景時を気遣う。
「ああ。職員室は楽しいよ?色々教えてもらえるし、逆に質問される〜。ほら、オレって本当は会社員
だからさ。臨時でお客様扱いっていうのかなぁ?」
 珍しいというのは浮くものだ。
 その浮き方を上手く利用すれば、そう摩擦は起きない。
 景時なりの処世術がここで役に立ち、敵視されることはなかった。
「一年間・・・毎日一緒?ずぅーっと・・・・・・」
「そうだよ。もともと学校は一年って約束だし。詳しくは家で話すよ」
 ご機嫌で歩いていた景時が、駅で足を止めた。

「・・・定期、買わなきゃね〜。教えてくれる?」
「そうだ〜。明日から二人ともこの駅なんですね」



 龍神の神子、まずは軽く星の一族をあしらって新年の第一歩。






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≪景時×神子に30のお題≫の続編風の続編風→現代へ

 あとがき:ありがち展開ですが、これぞ王道かとv 景時くんが先生☆     (2007.01.27サイト掲載)




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