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title win or defeated page No. 002
「おはよう、」
眠っているの頬へ軽くキスをする。
は程なく目覚め、小さな欠伸を零した。
「おはようございます・・・あっ!今日こそ」
ニクスが微笑んでいる理由はわかっている。
昨日はいよいよ花壇の土が盛り上がっていたのだ。
そろそろ芽が顔を出すだろう。
「早く、早く!」
起きるのが遅かったのはの方なのだが、
ベッドから飛び起きると、いつもの如くニクスの髪を整え、
すぐに自らの支度に取り掛かっている。
(芽で花の種類がわかりますからね・・・・・・)
お互いが同じ種類の種を購入していないと判明したのが昨日。
花壇の土が期待を持たせるほどに盛り上がっていたのも昨日。
いよいよ勝負がつくやもしれない朝。
ニクスも手早く着替えると、の支度が終わる
のを待っていた。
「急がなきゃ!」
早かろうが遅かろうが、芽の種類が変化することはない。
に手を引かれるままに庭へと降り立つと、
花壇には僅かながら土とは違う色が見て取れる。
「あっ!芽が出てますよ」
嬉しそうにしゃがみ込んで発芽した芽を観察している。
そのうちにの顔が蒼ざめた。
「何か・・・・・・」
背後に立っていたニクスだが、振り返ったその顔色の悪さに
言葉を失う。
「・・・負けちゃいました」
悔しそうに下唇を噛みだす仕種をするを見て、
内心では胸を撫で下ろすニクス。
「そう・・・ですか。それでは、私の勝ちということでよろしい
ですか?」
「でも、まだ咲いてないです。もしかしたら、白い花の種が
混ざっていたかもしれないですよ」
何やら諦めきれないらしい。
今回の勝負とは関係なく願いを叶えるべく、の
願い事を聞き出すのもいいかと思ったが、思い直すニクス。
「・・・貴女らしくないですよ?潔く負けを認めて下さい。私は
願い事を考えてあるのですから」
大人気ないかもしれないが、最優先したい願いがある。
この機会を逃すわけにはいかない事情があった。
「・・・ごめんなさい。私が先に提案したのに。ニクスさんの
願い事は何ですか?」
ニクスの正面に立ち、ニクスを見上げて待っている。
「実は・・・ここでは言えないお願いなのです。ぜひ・・・
そうですね、午前中のお茶の時間にしましょう」
「・・・わかりました」
お茶の時間といえば、仲間がそろう時だ。
願い事は仲間もいる時ということは───
「あの・・・私ひとりでは出来ない事ですか?」
不安げに瞳が揺れている。
ニクスが優しく微笑みかけた。
「その質問は、イエスであり、ノーであり・・・返事に困りますね」
「ええっ?!どちらでもないって・・・・・・」
の鼻先を指でつつく。
「すぐにわかりますよ。まずは朝食にするとしましょう。早く
しないと、ジェイドが呼びに来ますよ?」
今では陽だまり邸の名コックになっているジェイド。
オーブハンターの仲間は、誰もが料理上手である。
問題があるとすれば、朝が苦手なレイン、朝から教団に呼び出し
されることもあるヒュウガ、眠っているに腕を
貸していて動けないニクス。
朝食を用意できる環境にあるのはジェイドだけとなり、自然に
毎朝の担当になっていた。
「そうでした!昨日、私がリクエストしたのに」
「おや?何をですか?」
一番の料理好きのジェイドは、リクエストがある方が楽らしい。
「フルーツサンドが食べたかったんです」
「それは、それは。かなり期待できそうですね」
ニクスの予言通り、かなり張り切ったらしいフルーツサンド。
が笑顔で頬張る姿に、誰もが爽やかな朝のひと時を
過ごすことができた。
「そろそろお茶の時間にしましょうか。ヒュウガ。申し訳ないですが
レインを・・・・・・」
「ああ。レインなら庭で寝ているだろう」
立ち上がるとテラスから庭へと歩いて行くヒュウガ。
論文を書き終えたレインの生活は、とにかくどこでも寝る。
あきれるほど、どこでも構わずに寝るのだ。
今回も今までと変わらず、昨日から庭でも階段でもサルーンでも、
姿を見かけると眠っている。
「レイン・・・眼が溶けちゃわないのかしら?」
「何が溶けるって?クッキーを焼いてみたんだけど、今日のお茶に
合うかな?」
ジェイドがクッキーを焼いたらしい。
「わぁ!美味しそう」
ニクスと共にお茶の用意をしていたの手が止まる。
「。カップを」
カップを手に持ったままのからカップを受け取り、
人数分の紅茶を注ぎ始める。
「クッキーにピッタリですね!」
本日の紅茶はダージリンにしたので、ストレートで飲むのがいい。
「そうだね。まるで俺が何を作っているのか知っていたみたいだ」
紅茶をテーブルに並べて、席に着いて二人の戻りを待った。
「ふぁ〜〜〜あ。・・・いいものがあるな〜」
ひょいとクッキーを一枚つまむレイン。
「レイン!待ってたのに、お行儀が悪いわ」
次のクッキーに手を伸ばしたレインの手を叩く。
「・・・オレにだけ厳しくないか?」
手を引っ込めて自分の席に座る。
「さて、皆がそろったことですし。はこちらへ」
を立たせると、その前に跪くニクス。
「ニクスさん?あの・・・・・・」
「何でしょう?」
まるでお姫様に誓いを立てる騎士のごとく、胸元に手を当て、
を見上げる姿勢のニクス。
は真っ赤になって立ち尽くしていた。
「そういう事か・・・・・・」
「なるほどね。オレたちは証人ってことか」
「今夜はお祝いをしないといけないね」
少なくとも、以外はニクスの行動の意味を
理解しているらしい。
ようやくニクスは用意したものをへ差し出す。
「愛しています。真実、私に貴女のすべてをいただけますか?」
輝く指輪の意味がわからないほど鈍くはない。
おずおずと手を差し出すと、その左手の指に指輪をはめられる。
「式は・・・リースの教会でするとしましょう。天使の庭と呼ばれる
街こそが女王陛下に相応しい・・・・・・」
手の甲へキスをすると、をもとの席へと案内する。
「プロポーズ・・・されちゃった」
が両手で頬を押さえて呟く。
「されちゃったって・・・今更だよな?戻ってきた時に盛大にニクス
に告白してたんだし」
レインが首の辺りを掻きながら欠伸をする。
「酷いわ!それとこれとは・・・・・・」
俯くと銀色の指輪が目に入る。
「レイン君」
ニクスの鋭い視線に肩を震わせるレイン。
「そう怒るなよ。お茶にしようぜ〜。結婚式、来週だしな」
最早レインの言葉は耳に入っていないらしい。
今ならもしも悪口を言ったとしても聞えはしないだろう。
「招待客が多くて大変だな」
ニクスは篤志家としての顔も持っている。
招待客のリストを見せられたヒュウガとしては、ルネの厚意で
銀樹騎士の数人を借り受けることが出来て一安心だ。
人が集まる場所にはトラブルがおきやすい。
警備を買って出たのだ。
「そうだよね。確かに多いけれど、こちらへご招待する人数は少ない
から大丈夫さ!とびきり美味しい料理を用意させてもらうよ」
ジェイドは式の後のパーティー料理の担当だ。
「まあな。案内役のオレも頑張らせていただくさ」
レインは陽だまり邸を訪れた招待客のホスト役を務めなくては
ならない。
ニクスとが主役なのだから、ニクスの代理をしなく
てはならない。
一週間後が楽しみですね。私の女王陛下───
2006.11.23
とっても女王様扱いしてみて欲しかっただけとも(笑)
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