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title surprise page No. 002
「・・・もう一度伺っても?」
「はいっ!だから、レディアスさんもアルカディアへ行きましょう!」
どの辺りが“だから”なのかと、レディアスはこめかみを軽く手で
押さえた。
「貴女は宇宙の女王なのですよ?」
「そうですね!」
笑顔で答えられてしまった。
「御身はひとりのものではございません」
「私は私です」
またも元気に返事がくる。
「私が言いたいのは・・・・・・」
「まあ、まあ。とにかく、会うだけ会って話を聞いてみるのは?」
このままでは永遠に平行線だ。
ジェイドがすかさず二人の間に割って入った。
何とかレディアスの説得ができ、堂々と週末に陽だまり邸へ
帰れる。
ご機嫌でキッチンにジェイドと立ってお菓子作りをしている。
「うふふ。クッキーは日持ちするからいいですよね」
「そうだね。こんなにたくさんどうするんだい?」
「みんなに配るの!火事で焼けてしまった村の人たちへ」
の祈りが通じ雨が降ったおかげで被害は最小限に
止められたものの、焼けてしまった麦畑もある。
その後が心配なのだが、子供たちが元気に遊びまわっていたのが
目に焼きついている。
「大丈夫。すぐに元通りになります。皆に何かあげたかったんです」
言われてみればは子供たちと一緒になって遊んで
いたが、どこか遠くを見ていた。
「じゃあ・・・もっとたくさん頑張らないとね?」
「はい!」
生地を捏ねるのは大変だ。
にはさり気なく型抜きの仕事をしてもらえるよう、
先に次のクッキーの準備を始めた。
待ちに待った金曜日の夕刻。
「・・・では、行きますよ」
「はい!」
ジェイドと手を繋いでレディアスの後から時空の回廊を通る。
いつもはこそこそと通る回廊をのんびり歩けるのはいいものだ。
「せっかくのクッキーが粉々じゃ悲しいもの」
ジェイドが持っている荷物へ視線を移す。
「慌てなければ崩れないよ?お転婆さん」
ジェイドがの額へキスをした。
「もう!ジェイドさんの意地悪。木登りは・・・・・・」
慌てて両手で口元を隠したが遅かった。
「陛下。庭の木は登るためにあるのではございませんよ?」
振り返らないままではあるが、しっかりレディアスに釘を刺され、
の頬が朱に染まる。
「・・・だって・・・私の勘は外れないですよ?いつも皆がそろって
いて、楽しかったもの・・・・・・」
行き先は決まっている。
仲間たちはいつが戻ってもいいよう待っているの
だろう。
勘など関係ないのだが、そう信じているに対し
否定の言葉を紡ぐほど非道ではない。
「・・・いいのですよ?楽しかった事については。問題は、黙って
姿が消えている事の方なのですから」
出口の扉を開けるレディアス。
鮮やかな夕方のオレンジ色の日差しと共に仲間たちの出迎えにあう。
「ようこそ陽だまり邸へ。主のニクスと申します。レディアスさん?」
笑顔で手を差し出すニクスにレディアスが応える。
「いつも陛下がお世話になっております。行き先はわかっているので
いいのですが、執務時間に抜け出されるものですから」
しっかりニクスに告げ口されてしまい、がジェイドの
背中に隠れた。
「それは、それは。私共もそうとは知らず申し訳ないことをしました。
そうですね・・・陛下におかれましては、こちらで出来る事が多くある
とのお考えと推察いたします。こちらへお出での方法については多少
問題がお有りのようですが、いらしていただくことに差し障りはないかと」
どちらにも角が立たないニクスの受け答え振りに、レディアスの目が
僅かに見開かれた。
「そう・・・ですね。その件についてはまた改めて。まずは陛下が
寛げるようにお願いいたします」
「ええ。そのつもりですよ」
「お茶がいいです!お茶の時間にしましょう?」
今まで隠れていたが飛び出してきた。
「ニクスさんのお紅茶はとっても美味しいんですよ?お菓子は作ってきた
パウンドケーキがありますし。ね?」
ジェイドの袖を引いて応援を頼む仕種をする。
「そう、そう。俺とで今日のために作ったんだよ?ぜひ食べて
欲しいな」
手に持っていた荷物を軽く持ち上げてアピールする。
「のパウンドケーキ!マーブルが美味いんだよな〜」
レインが指を鳴らして喜びの声を上げる。
「いずれにしても、ここで立ち話もなんだ。邸へ案内してはどうか?」
ヒュウガらしくまとめに入る。
「そうですね。夕日が沈むのを眺めながらティータイムというのは
いかがでしょうか?・・・月の姿を眺めるのも一興かと。ちなみに、
本日のディナー担当はヒュウガですよ」
「ヒュウガさんなんですか?じゃあ!じゃあ!海老の・・・・・・」
が飛び跳ねると、
「もちろん。そのつもりだ」
既に準備済みだったのだろうヒュウガが頷く。
「海老シューマイ・・・美味しいんですよ?レディアスさん」
嬉しそうに料理について語りだす。
その足取りは軽く、スキップをしている。
普段とは違うその姿こそ本当のなのだと、レディアスは
小さな溜息をこっそり吐いた。
「そろそろ支度ができたようですね。お茶会はまた食後に」
ヒュウガの料理がテーブルに並べ始められる。
そのオリエンタルな料理特有の香りが辺りに漂いだす。
「・・・エビチリ!エビですよ、エビ」
は海老の食感が好きらしく、海老を使った料理がお気に
入りだ。
気付いていないだろうが、誰もが必ずどれか一品に海老を取り入れて
いる。
揚げ物でも炒め物でもどれかに必ずだ。
「陛下は海老がお気に入りでしたか・・・・・・」
さっさとテーブルについて料理を待っているの姿を見つめ
ながらレディアスが呟く。
「ええ。はじめは私たちも何が好きなのかわからなかったのですが。
夕食会を開くようになってから、段々と好みがわかってきましてね。
彼女はそう自分を出す方ではないので・・・・・・」
ニクスがレディアスをサルーンからダイニングへ案内しながら返事をする。
「聖地でも陛下は楽しそうになさっていますよ。ただ、楽しそうと楽しいは
別ですね」
レディアスの言葉にニクスの口元が緩む。
「にはジェイドかついていますから心配は要りません。ただ、
故郷という意味での自分の居場所は、誰にとっても特別なのでは?」
「敵いませんね。あなた方は本当に陛下を大切に思っていらっしゃる。私は
役目を重んじ、無理強いしていたのかも知れません」
宇宙の女王であるべきの執務を補佐するのが仕事だった。
その名誉ある仕事に着いた気負いを押し付けていなかっただろうかと、
今までの己を振り返る。
「貴方も仲間ですよ。そう・・・こちらでは陛下ではなく名前で呼んで差し
上げるのはどうですか?」
「・・・陛下の御名を・・・・・・それは・・・・・・」
レディアスの戸惑いが手に取るようにわかる。
他の聖地から派遣されてきたレディアスの実際の年齢はわからないが、
ニクスほどではないだろう。
(彼の心が解けるのを待つのもいいですね・・・私のように)
によって呪縛を解く放たれたのはニクスだけではない。
レインにしても兄や財団との確執があった。
ヒュウガも仲間との辛い過去があり、ジェイドにいたっては人では
なかった。
それでも今までと変わらずに暮らしていけるのは、たったひとりの
存在のおかげである。
「レディアスさん!早く、早く」
「。お客様を放ってしまったのは君の方じゃないかな?」
「きゃっ!ごめんなさい、レディアスさん。私ったら・・・・・・」
慌てて席を立ち、レディアスを席へ案内する。
「いいのですよ、陛下。美味しそうなお料理が並んでいますね」
「美味しそうじゃなくて、美味しいんです。早く食べたいですよね!」
再び席に着くと、ニクスの挨拶を待つ。
主の挨拶なしでは食事は始まらないからだ。
「・・・今宵は新たな仲間をお迎えしての食事会です。堅苦しいのは無しに
いたしましょう。レディアスさんも、そのようにお願いいたします」
かなり短めな挨拶で始まったディナー。
が嬉しそうに料理と会話を楽しんでいる。
レディアスが視線を感じて顔を向けると、が首を傾げる。
「その・・・・・・」
いかにも様子を窺っているのが可笑しく、いよいよニクスに言われた事を
実践してみる。
「どれも大変美味しいですよ、」
緊張したが、初めてその名を口にする。
「・・・・・・すごい!レディアスさんが普通になってます!エビって
すごいかも〜〜〜」
決して料理によってに砕けた態度をとった訳ではない。
けれど、この勘違いはそのままにと誰もがこっそり頷きあう。
今宵は再びお茶会を開催予定───
2007.03.12
ジェイドの出番が少なっ!お茶会の時にって事でv
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